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そして、お嬢様は旅に出る。~ニーナの大冒険~  作者: 沢山空蔵
南部辺境区編
122/461

天竜人化

予告なく修正することがあります。

 数日の間、ゼンは妖精達を起動して周囲の警戒にあたらせた。

 三人の竜はゲイルを呼び出して、何やら企んでいる様に隠れて話をしていた。


「あ奴等は何をしておるのじゃ?」

「ホムンクルスから何かを思いついたみたいね。」


 三人と一体の竜はキキを認めて、不気味な笑みを浮かべて手招きをした。


「キキ、少しお知恵を拝借したい。この魔法陣で間違いないと思うのだが、発動しても大丈夫だろうか。まっ、ゲイルが一番にやるのだがな。」

「何故、儂が最初なのだ。自分たちでやればいいだろう。」

「我等は天竜種だぞ。この世界に必要な存在だ。対してゲイルは単に歳を経た竜だ。居なくなっても問題はあるまい。」

「理不尽なのじゃ。」


 新魔法の実験台になるゲイルが文句を言うと、三人の天竜に睨まれて項垂れた。

 キキは描かれた魔法陣を見ながら、少し考えて一部を書き換えた。見ていたゼンが首を傾げると、キキはウィンクをして笑みを浮かべた。


「ゲイル、良かったわね。この魔法陣、身体の一部が触れていれば効果が有るの。でも、分解は良いけど再構築の間に、馬鹿げた質量を人型にするとき失うだけになっているわ。貴方、木端微塵になるところだったわね。」

「恐ろしい。実験は自分自身でやって欲しいものだ。」


 キキは鼻歌を歌いながら、更に魔法陣を書き換えた。そして、出来上がったのか三人と一体を見てニコリと笑った。


「その大きな身体を人型にするのよ。錬成魔法と魂魄魔法を、術式に組み込む必要が有るの。膨大な質量を魔力に変換して体内に保存して、竜化するときには魔力を質量に戻す必要が有るのよ。魂魄魔法で霊体を保護しながら、身体を造り変えるのよ。激痛を伴うはずだから、苦痛軽減を組み込んで、変化するときは脆弱になるから防御術式も必要ね。これでいいわ。ゲイル、魔法陣に触れて。」


 主従契約が有るため逆らえず、ゲイルは魔法陣に触れた。魔法陣が発動した証に光り出し、ゲイルの身体を包み込んだ。光が収まると二メートルを超える、中年の男が立っていた。男は自分の身体を眺め触って、目を見開いてキキを見た。


「何とも図体だけ大きな冴えない男が出て来たのじゃ。」

「凄い。魔力があふれているのが判りますぞ。」

「調子に乗って魔力を使わない事ね。竜体に戻った時に、小さくなるわよ。すぐに戻るけどね。」

「おお、成功したのだ。ゲイルよ。すぐに我等の所を回るのだ。」


 ノトスはゲイルを捕まえて、四人は空へと消えた。


「高機動飛行術式。大した物ね。竜体と変わらない速さで飛ぶのね。あれが魔法で無くてスキルなのだから、羨ましいものね。」

「キキは凄いのじゃ。魔法陣の知識は勉強が難しいのじゃ。」

「あら、ミリアンは結構、進んだのよ。」

「うにゅにゅにゅ。妾は苦手なのじゃ。でも、空を飛んでみたいものじゃ。」


 ニーナはミリアンに連れていかれ、勉強が如何に重要かを説かれた。居眠りしたニーナはロロに突かれて、素っ頓狂な声を上げてミリアンに睨まれた。


 夕方、見知らぬ四人の男女が辺境伯の食堂に座っていた。

 ライ辺境伯を始め、全員が剣に手をかけて身構えた。ゼンだけは大きな溜息を吐いた。


「そんな警戒するな。私がボレアース。こっちがノトス。こっちがゼピュロスよ。そして、この大きいのがゲイルよ。」

「どうしてそうなった!」


 全員が盛大に突っ込んだ。ゼンは眉間を押さえて俯いた。

 ボレアースを名乗った女性は、少し太めの中年で、頭の薄くなった小太りの六十代ぐらいの男がノトスと名乗った。不機嫌な顔をした痩せぎすの小男がゼピュロスを名乗った。


「どうしてこの見た目なのだ。」

「種族年齢を人族の年齢に置き換えた結果よ。ゼンのホムンクルスの方が見た目は良かったわね。」

「何とかならんものか?」

「出来ないことも無いけど、色々と面倒なのよ。必要な魔力量や発動時間とか、効果の持続時間とかね。竜体に戻った時に、何日も動けなくなるのは避けたいでしょ。」


 キキに言われて三人の竜は難しい顔をして押し黙った。そんな三人の天竜を見るゼンの眼には、憐みが見て取れた。


「うにゅ、ゼン。どうしてそんな目で見ているのじゃ?」

「ゴホン、問題ない。」


 ニーナの言葉にゼンが視線を逸らして、無言で厨房へと消えた。

 ゲイルは見た目が気に入ったのか、大人しく席に座り料理を待っていた。

 料理が運ばれ四人の竜は凄い勢いで平らげた。


 翌日、朝の練習をしているときに、妖精ナナが現れた。


「バリアントより十キロ海上に船団を確認。その数、十七隻。内容はキャラック船、十四隻。キャラベル船三隻。キャラック船、全隻に武装集団を確認。推定人数、四千。」

「おい、倍の数だぞ。ティム、どうなっている。」

「判りません。そんな数が動いたとは情報は無かったはずです。」


 ライ辺境伯がティムに詰め寄った。其処へ一人の男が駆け寄って、ライ辺境伯へ耳打ちした。


「俺の影も確認していない数だ。これにゴールマン伯爵が集めた、千人が合流する。」

「エアからの情報を確認。ゴールマン伯爵領バリアントに三千の戦士の集合を確認。エアからの近接確認の許可が来ています。許可しますか?」

「許可するわ。」


 ライ辺境伯もギルスも動かなかった。レオンがライ辺境伯に近づいて、沈痛な面持ちで話し始めた。


「お館様、王国に救援を求めましょう。七千は王国軍が必要な規模です。」

「救援が来るまでに焼野原だ。住人の避難を急がせよう。」


 ライ辺境伯は諦めたように二人の護衛騎士に指示を出した。ギルスとエレンも眉間に皺を寄せて、敵の戦力を噛み締めていた。ニーナとロロは首を傾げて、沈痛な面持ちのライ辺境伯達を眺めていた。


「エアより近接確認報告。三千は戦闘士を中心に、山賊、蛮族を確認。魔法師は約二百人。三人の従魔師を確認。使役獣はサイクロプス、サラマンダー、二体。ヒュドラ。エア、帰還要請。受諾。」


 ナナが告げる規模を聞きながら、ライ辺境伯は溜息を吐いて座り込んだ。住人を非難させようと歩き出した護衛騎士も、ライ辺境伯に向き直って立ち尽くした。


「ナナ、海からのお客の到着は何時ごろ?そして、合流時間は?」

「船団の到着予想時間、二十七時間後。伯爵軍との合流、三十六時間後。」

「バリアントの出発は早くても二日後ね。ここまで十日程だけど、途中の自由都市を手に掛けるわよね。ゼン、手を貸しましょうか?」

「必要ない。ナナ、場所を探せ。」


 キキは妖精の報告を聞きながら、ゼンに問いを投げかけた。断るゼンを見ながらニーナ達は装備の確認を始めた。


「バリアントの南、九十六キロ地点。草原、南北、約四キロ。東西、約六キロ。」

「大量のハンターウルフを狩った草原だな。って、ゼンさん。まさか迎撃するのか?」

「ギルス。さすがのゼンでも七千の軍勢は無理だろう。」


 ナナの告げた場所を聞いてギルスが眼を剥いてゼンを見た。ライ辺境伯もゼンを見た。眼には期待が宿っていたのだろうか。


「のう、ギルス。その七千の軍で、ゲイルを討伐出来るのじゃ?」

空♂:遂に動き出します。

キ♀:タイトルは人になる天竜でしょ。

空♂:人化したでしょ。ちょっと冴えない姿だけど。魔女の悪戯かも。

キ♀:ちょっとした悪戯よ。こんな演出も必要よ。在り来たりの設定なのだから。

空♂:「ありふれた」です。しかし、うぬも悪よのう。越後屋。

キ♀:(-"-#) メテオストライク!(ノ・_-)☆*+*+:*+:*…━☆((≪ゴッゴッゴ!!!≫))

空♂:お約束はどうしたぁぁ。ε=ε=ε=(ノ^∇^)ノ

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