ニーナ、隠密行動をする
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ティムの報告にアリオン伯爵は、眼を丸くしてニーナ達を見た。
「ティアの言った通りです。王宮の方は動きません。伯爵領は長男のジルタン殿が継ぎました。実はジルタン・エマ・ゴールマン伯爵が、辺境伯への嫌がらせの元凶なのです。辺境伯の御息女に振られた腹いせに始まった事なのです。それがエスカレートして今の状況になりました。」
「引き際の悪い男は駄目ね。」
「うむ、潔さが大切なのじゃ。」
ララとニーナ言葉が和ませたのか、全員の口元に笑みが浮かんだ。
その時、ドアが開いて数人の男女が入って来た。
「お嬢ちゃんの言う通りだぜ。」
「俺の護衛騎士団だ。君達を見に来たらしい。」
「ノックをしなさいと言ったはずです。」
「そう固いことは言わないの。」
眼帯の男に執事が文句を言うと、女剣士が間に入って止めた。
「スターライト騎士団、オリハルコンクラスのパーティーだ。君達が現れるまで王国トップの座にいたのだよ。」
「それでアリオン、どうだったのよ。実力は?」
女剣士がアリオン伯爵を呼び捨てにしたのに、ギルス達は驚いたように口を開けて見た。
「手も足も出なかった。木剣でパーフェクト・プロテクションを割っていたよ。キキ殿が守ってくれなければ俺は死んでいたよ。」
「実際、ゼンは殺す気だったもの。」
「木剣でって。そもそも、パーフェクト・プロテクションを割るなんて人に出来るの。」
「三枚の障壁を出すことも私には出来ません。」
「うむ、ミリアンも二枚しか出せんのじゃ。」
ニーナの何気ない一言に騎士団の面々はギョッとした表情をミリアンに向けた。
そして、アリオン伯爵は思い出したように水晶玉に目を向けた。
「ティム、ここから先が重要だろう。続けてくれ。」
「はい、結論から言いますとさらに悪化しました。伯爵の敵討ちを画策しています。気を付けてください。」
「問題ない。」
短く応えたゼンを見てニーナ達は、同時に大きな溜息を吐いた。
「あれは殺す気満々なのじゃ。ゼンよ、あまり簡単に人を殺すのはどうかと思うのじゃ。」
「のじゃ姫、蚊を見つけたらどうするの?」
「叩き潰すのじゃ。」
「刺してもいないのに殺すの?」
「うにゅ?」
「刺そうとしているなら殺して当然でしょ。」
「うにゅにゅ。」
「挑んで来るならば尚更でしょ。」
「うにゅにゅにゅ。」
キキの言葉に黙ったニーナがゼンを見ると、壁際で不気味な笑みを浮かべていた。
話が一段落するとクロス伯爵はニーナ達を夕食に招待した。
厨房にゼンが消えて、アリオン伯爵の料理人と二人で作った料理が並んだ。二人のメイドがニーナ達が食べ終えると、次の料理を運んで来た。
「本日は当家で用意いたしまた食材に加え、ゼン様から頂いた食材と調理法で作りました。」
「うにゅ、いつものより上品な料理なのじゃ。」
「いつも野営で食べているのは、味と量が主体になっているけど、こんなことも出来るのよ。」
「見た目も美しいのじゃ。赤いソースはケチャップじゃな。」
「ニーナ様、この緑はパセリの味がします。」
「マヨも細くなっている、です。」
美しく盛られた料理をニーナ達はいつもより静かに楽しんだ。
「もう食べきったのじゃ。」
「おいらももっと食べたい。です。」
「問題ない。」
大皿に乗った唐揚げや、巨大蟹の料理が運ばれてきた。今度はテーブルが料理で埋め尽くされた。
年少組は満面の笑顔になって、ナイフとフォークを構えた。
「俺もこっちの方が好きなのだ。」
「さすがゼンは判っているのじゃ。」
ゼンは厨房に行って大量の肉を焼いては皿に盛って行った。アリオン伯爵の料理人も忙しくサラダやスープを作っていた、
「ゼン様、このヒラヒラしたものは何ですか。」
「ワイバーンの削り節。」
「とても良い出汁が取れますな。作り方を教えてく欲しいものです。」
「売っている。」
「そうですか。旦那様にお願いして手に入れて貰いましょう。」
料理を楽しんだニーナ達は伯爵に礼を述べ宿に戻った。
翌日、朝の練習をしていると伯爵が一人でやって来た。
「ダンジョンは近いのか?」
「ほう、興味が有るかね。馬で一時間ほどだ。」
ゼンは伯爵にダンジョンの場所を詳しく聞いて、キキと何やら話をして馬小屋に向かった。伯爵が慌てて後を追いかけた。その後ろを、小さな影がこっそりと追い駆けた。
「俺も行くぞ。案内しよう。」
「供は?」
「アダマンタイトクラス、エルノワールの漆黒の狩人がいるのだ。心配はないだろう。」
ゼンは無言で馬に鞍を付け、出かける準備にかかった。
「すぐに行くのか?準備はしないのか?ダンジョンの入り口は洞窟だが、中は壁自体が光を発していて視界は問題ない。魔物はオーガやリザードマン、シャドウアサシンもいる。後は一角兎や洞窟ウルフだな。魔法を使うものもいるぞ。」
「問題ない。」
二人は馬を並べて、町を出て行った。
暫くして、ニーナが馬に乗ってゼン達の足跡を追いかけ、更に後ろをミリアンがララとロロを連れて馬で追い駆けた。
ギルスとエレンが姿の見えないニーナ達を探していた。
「エレン、お嬢がいないぞ。」
「ミリアンもいないな。二人で何処かへ出かけたのだろうか。」
「俺達に言わずにか。まさかな。」
「ララとロロを見なかった?」
ギルスとエレンは不安げに顔を突き合わせた。其処へキキがやって来て、二人から事情を聞いた。
「ゼンなら竜が眠ると言うダンジョンに行ったと思うわ。まさか、のじゃ姫は追い駆けたのかしら。ちょっと待ってね。」
キキは左の人差し指を耳の下に当て目を閉じた。
「ダンジョンの入り口でのじゃ姫達と合流できたみたいよ。そのまま、アタックするって。」
「やっぱり、行ったのか。それより、キキさん、今のは魔法なのか?」
「そうよ、ゼンとだけ離れていても会話が出来るの。時々、様子を聞いてあげる。大丈夫よ、そんな顔しないで。ゼンがその気になれば、のじゃ姫を守りながら魔王城を攻略するわ。」
不思議そうに見るエレンに応えると、キキは外に出て空を見上げた。キキの金色の瞳が妖しく光ると、小さな魔法陣が浮かんで消えた。そして、キキは小さく頷いて宿に戻った。
「ギルス、ダンジョンが判ったわ。希少級と英雄級の間くらいの難易度ね。実際に見ていないから詳細は不明だけど、オーガやリザードマンが主体の魔物で、厄介なのはシャドウアサシンだけ。これは問題ないわ。ゼンに気取らずに近づくことは不可能よ。時々、確認しておくから二人はデートでもしてきたら。」
ギルスとエレンは顔を見合わせて赤くなった。昼になって出かけていたギルスとエレンが戻って来て、三人で食事を摂った。
「順調みたいよ。伯爵の話では六階層でダンジョンマスターもいないそうよ。」
食後のお茶を飲みながらキキは時折、指を耳の下に当てて頷いたり微笑んだりを繰り返した。
「ふっふっふ、今日は逃がさんのじゃ。」
空♂:毎日投稿が難しくなってきたな。
キ♀:また、忙しくなったの?
空♂:それもあるが、他にもやらないといけない事が増えた。
キ♀:仕事とプライベートはきちっと分けた方がいいわよ。
空♂:それは判っているが、時間は限られているからね。
キ♀:仕方ないわね。やや毎日更新になるのね。
空♂:^^;そうなります。




