とある少女の事情
とりあえず、プロローグを投稿。色々と設定があるのですな。
何度も追加、削除を繰り返したかな。今後も予告なく改稿数ることがあります。
Apr-10-2022 サブタイトルを変更。
隣国との国境を定めるかのように広がる森。
国境の森近くの辺境に、村よりは大きいという程度の町があった。
住人の顔は疲れがあるものの、行き交う者同士、笑顔で挨拶を交わしていた。
治安を預かる近衛騎士が、大きな荷物を持つ老婆を手伝って運んでいた。大きな猪を持っているのは狩人だろう。畑で休憩している男の横には金属の鎧が置かれていた。
数台の馬車の後ろを子ども達が追掛けていた。商人のキャラバンだろう。
そんな、町の北側によく目にする家より、大きな家が建っていた。
その家の一室に緑の髪を窓からの風になびかせる、若い女性が執務机に肘をついて手に顔を載せていた。
少し釣り気味の目がきつい印象を受けるが、二十代の美しい女性だった。溜息がドアをノックする短い音に消された。
「入れ。」
女性は短く返事すると、一人のメイドが入ってきて、両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げ、腰を曲げて頭を深々と下げた。
「御領主様、お手紙です。」
「代行中じゃ。まあよい、手紙は王宮からか?」
「いえ、バイマン男爵からです。」
「あのやり逃げ男爵か、娘の葬儀に端金だけ送ってきよって。」
領主は手紙を読んで、溜息を吐く。
「結婚させるから男爵領によこせじゃと。しかも、嫁ぎ先すら書いておらぬ。うぬぬ。しかし、結婚相手を見つけたことは褒めてやるのじゃ。あの子が出て行くと、ここは騎士爵に領主をしてもらうのも手じゃな。」
ぶつぶつと呟きながら、部屋を歩き回り思考を巡らせているように見える。
「ミリアン、今なら魔法の練習か。ニーナを呼ぶのじゃ。」
部屋にいた十歳ぐらいのメイドに命じた。利発そうな将来は知的な美人を約束されたメイドは、短く返事をして部屋から出て行った。暫くして、ノックが響く。
「お婆様、ニーナなのじゃ。」
返事を待たずに入ってきた少女は、目は母親に似たと思わせる、祖母と同じ釣り気味だかきれいな目をしている。こちらも将来は美人確定の整った顔立ちだ。
「ニーナ、ノックの後は許可を待つのじゃ。」
「忘れておったのじゃ。やり直しじゃな。」
「よい。それよりも話があるのじゃ。お前の父親であるバイマン男爵からお前の結婚相手見つかったと手紙が来た。男爵領まで来いとのことじゃ。」
「妾はまだ結婚などいやじゃ。それに相手もわからぬのじゃ。不細工だったなら、なお嫌じゃ。」
それから、領主は一時間以上ニーナの説得し成功した。
「相手は調べさせておる。何をするにしても父親である男爵には会わねばなるまい。」
「お婆様はどうするのじゃ?」
「ニーナがいなくなれば、ここにおる必要もない。騎士団長に任せて、我が氏族の森へ帰るのじゃ。」
それから一か月が過ぎたころ、開け放たれている窓に一羽の梟のような鳥が舞い降りた。
「あの屑男爵、ニーナをそんな伯爵に売ったのか。これでニーナも別れ易くなったであろう。」
梟を暫く見ていた領主が驚きと、どこか怒りを感じさせる呟きを漏らした。
「供にはギルス、エレンと他に上級が二人もいればよいかの。」
「私もご一緒いたします。」
「そなたがおれば何も心配はないのう。行ってくれるか、ミリアン。」
「勿論でございます。」
それから数日を準備にあて、僅かに飾りのある箱馬車に乗り、ニーナ達は男爵領に向けて旅立った。
頑張って続けますのでよろしくお願いします。