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最終決戦開戦


「待てよ·····」


 眼前に並び立ち、今にもクロクルに立ち向かう寸前の所、カエデが止める。

 アマサたちを向かわせまいと手繰り寄せるように右手を伸ばす。それを見たアマサは一瞬悲しそうな顔する。


「御主人様、お待ちください。今すぐにでも」

「ダメだ! 敵う相手じゃない。とりあえず、菜乃花も──〈魔法(マジック・)支配(コントロール)〉」


 クロクルの魔法を支配し、菜乃花を救う。そのまま〈絶対(アブソルート・)支配(コントロール)〉で菜乃花を支配してダッシュでクロクルの追撃から逃げる。その最中、同時発動(ダブルキャスト)でクロクルに牽制。


「小癪な──!」


 なんちゃって同時発動(ダブルキャスト)で連発しつつ、会話を続ける。


「いいか、これでも倒せないんだ。見てみろよ」


 カエデが促した先には、魔族のオールでさえ手も足も出なかった千発以上の魔法を魔法をもって弾き返し、その洞察力で見極め、最小限の動きで避ける。


「そんな化け物に適うはすが──ッ!」

「すみません。御主人様」


 丁寧に注意喚起を促していたカエデをアマサが〈束縛(バインド)〉する。

 本来であれば意味をなさないアマサの魔法も、クロクルとの戦いで瀕死となったカエデには身動きも取れない。


 同時に、魔法が止む。煙が立ち込める中、無傷で現れたクロクルに、やはり全員がカエデを背にして立つ。


「御主人様、貴方は変わってしまいましたね。貴方がまだそんな調子だと、私たちが追い越しますよ?」

「いつでも不敵な笑みを浮かべて、敵に立ち向かうカエデはかっこよかったすけど、今のカエデはかっこ悪いっす。そんなんじゃあ、いつまでも経っても弱いまんまっすよ?」


 アマサとクレアが。


「こんな小娘たちにいいように言われて、束縛(バインド)で束縛されてる貴方なんて雑魚ね。いいから黙ってそこで見てなさい」


 クルムが胸を張りながら。


「カエデ様のお気持ちは嬉しいですが、ここは戦場。負けた人は黙って戦いを眺めていてください。次は私たちのターンです」


 姫と呼ばれていただけあって、堂々とした姿勢でサナが言う。


「主様は尊敬に値しますが、今のままでは私の方が上ですね。貴方が消えてから磨き上げた私の力、見せてあげます」

「オール様の言う通りだよ。雑魚は黙ってて」


 オールは以前とは違う顔つきで、カミュを従い前へ出る。


「ん、カエデは待ってて。終わらせてくる」


 ユウキは剣を構えながらに言う。


「今の主にぶたれても興奮しないかな。あちきが望むのは貴方じゃない。だから、あちきの望む貴方が来るまで、あちきは戦い続ける」

「主様が瀕死なのに黙っているボクじゃないよ」


 ララとネロがカエデを一瞥しつつ、一歩前へ進みでる。


「楓、見てて。私たちの成長の成果を。そして、気づいて。貴方は魔王じゃない。楓だってことに──ッ!」


 瞬間、全員が駆け出す。


「まーちゃん!」

「了解」


 右眼が開眼し、金色に輝く魔眼がまーちゃんの人格を呼び出す。


「ゆ──いや、まーちゃん。私も行くわ」

「おっけ〜。じゃあ、せいのっ!」


 まーちゃんが先行し、妖刀・政宗を突き出す。神速の太刀は刹那の間に、クロクルの喉元を捉える。


「〈刹那〉」

「アシストするわ。──〈崩滅〉」


 クロクルの視界が変わり、破滅が始まる。世界の崩壊は、クロクルの精神を──


「消え失せなさい」

「──ッ!」


 一言、たった一言で〈崩滅〉は崩れ去る。それは魔法発動解除(マジックキャンセラー)であり、クルムの未熟さがある証である。


「ごめんなさい。行けるかしら?」

「任せて! せいや!」


 崩れ去った魔法陣から、まーちゃんが飛び込み〈刹那〉を放つ。かつて、カエデの心臓を貫いた技は、しかしクロクルに通用しない。


「〈時の狭間〉」

「やっぱ、無理か」


 微動だにしない体を一瞥して、まーちゃんは笑う。それは最初から、この先制が決まらないと予想していたように。


「行くっすよ!」

「もちろん、最初から全力だよ!」


 歩幅、呼吸、足運び、全てがシンクロし、剣と主が完全に共鳴を起こす。

 それはとてつもない力を呼び起こし、悪を滅する。


「「〈聖と邪の共鳴(レゾナンス)〉!」」


 だが、特に焦る様子もないクロクル。


「〈七つの大罪(セブンス・ギルティ)〉が通用しない我に、そのような幼稚な技が効くはずがなかろう──〈闇ノ侵略〉」


 クロクルの右手より出現する巨大な闇は二つの斬撃を呑み込み、侵略し、支配下に置いた。


「放たれよ──〈闇と悪の共鳴(レゾナンス)〉」


 先程の倍までに肥大した魔力は真っ直ぐ、クレアと菜乃花の元へ飛来する。


「そんなことやらせる訳ないじゃん」


 既の所でまーちゃんが立ち塞がった。


「アマサ、サナ、ゆーちゃん。行くよ!」


 この一言で全員の思考が一致する。即ち──カウンター。


「エンチャントします! ──〈天使と悪魔の囁き〉」


 ユウキにバフを、クロクルにデバフをエンチャントする。


「我が白龍の一撃を、ユウキに──〈白龍ノ咆哮〉」


 それは強大なブレス。龍の始祖たる強大な力は〈闇と悪の共鳴(レゾナンス)〉と衝突するが、押され気味だ。だが、これでいい。


「じゃあ行くよ!」

「ん。──〈神槍(グングニル)〉!!」


 周囲の魔力を巻き込み、それは比べ物にならぬぐらいにまで巨大化する。まるで神の一撃が如く、天を貫く一つの槍は〈白龍ノ咆哮〉や〈闇と悪の共鳴(レゾナンス)〉をも巻き込み、やがて集約する。

 それは真っ直ぐとクロクルへと向かい、さすがのクロクルも直撃した。


「今だ、叩き込め!」


 間髪入れずにオールが叫ぶ。そう、これで終わったのでない。まだ魔力が残っている。


「オール様、見てて! ──〈怨殺〉」


 纒わり付く怨霊はクロクルの動きを止める。


「別世界への片道切符を──〈死ノ神(グリム・リーパー)〉」


 カミュが動きを止めた所に、オールの呪系統である〈死ノ神(グリム・リーパー)〉を放つ。ポカンと空間に穴が空いたように出現したそれは、クロクルを吸い込むはずだった。が、しかし。


「舐めるなよ。〈時の狭間〉」


 〈時の狭間〉は相手の行動を奪う魔法でなく、時間を思うがままに操る魔法である。だが、如何に冥級魔法であろうとも、永久に時間を操ることは不可能。もって十秒ぐらいであるが、クロクルにとって〈死ノ神(グリム・リーパー)〉を脱出するのに十秒も要らない。


 よって、オールが気づいた時にはクロクルが立っていた。


「ちっ、厄介な·····」

「なら、次はあちきだね! クリム、王女様。手伝って!」

「「了解したわ(しました)」」


 ララが先頭に〈常世の盾〉を発動し、攻撃を全て吸収し、背後に控えた二人が突入する。


「王族武術──〈陥没拳〉」

「滅びなさい──〈神滅(ゴッドスレイヤー)〉」


 サナの拳を右手で受け止めつつ、黒炎を魔法発動解除(マジックキャンセラー)で収める。

 そのまま右手で握られているサナをクルムへと投擲し、魔法を放つ。


「これが本物の黒炎だ──〈火之災〉」

「破壊して見せる──〈陣壊〉」


 しかし、微かに炎の勢いを弱らせただけで壊すまでには至らない。


「させないよ──〈魔法(マジック・)支配(コントロール)〉」


 だが、負けじとネロが黒炎を支配し、当たる寸前のところで標的をクロクルへと変える。

 だが、もちろん。それによるダメージはないようだ。恐らく、〈陣壊〉により少し傷ついたお陰で魔法発動解除(マジックキャンセラー)を使用出来たのであろう。


 ここまでは互角。いや、人数が多い分、アマサたちの方が上だろうか。

 しかし、依然としてカエデの顔が晴れることはなかった。


「違う。爺さんの本当の力はそんなもんじゃない」

「その通り。しかし、まさかここまでやるとは正直思わんかった。礼として、見せようか。魔神たる魔法を──」


 そして、クロクルはある魔法を発動させた。 

期間が空き、申し訳ありません。最近忙しく、書く暇が無かったのが原因です。今後もこのような事があるかもしれませんが、何卒よろしくお願いいたします。


では、また次回!

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