信じていた者
すみません、遅くなりました。
「全員揃ったね。一部、関係無い者もいるけどね」
「うるさい!」
ネロの言葉にカミュが反論する。オールから大体の経緯は全員聞かされている。
最初は反対されていたカミュだったが、ララがカミュのバックに着いたことにより、共に連れていくということに落ち着いた。
「いよいよっすか·····」
「そうですね。御主人様、無事だと良いんですが·····」
「きっと、大丈夫だよ! だって、最強の魔王だったんでしょ?」
沈みかけた雰囲気を、菜乃花が励ます。
「そうね。破滅の魔女を倒したんだから、魔神なんかに負けないわよ」
「はい。カエデ様が負けるのは想像出来ないですよね!」
互いが互いに信じている者で、鼓舞し合う。しかし、それはお世辞ではなく、彼女らが信じている楓がそうであり、そうだったからだ。
故に、負ける姿が想像出来ないのも、今なお戦っているということ、いや魔神であるクロクルを既に倒しているかもしれないという妄想を繰り広げるのも頷ける。
「じゃ、開けるよ?」
各々が頷く。
その瞳には希望が写っており、誰もがカエデの無事を確信していた。
ゆっくりと開く扉。ずっしりとした重厚感のある扉は彼女たちに安心を届けるはずだった。
「え·····」
それは誰の声か。しかし、その声に希望も安心もあるはずがなかった。
「グハッ!」
血反吐を吐く、カエデの姿。
その姿に彼女たちが信じているものは無く、いつになく弱々しかった。
四つん這いで震えながらも力を込め、立ち上がる姿は生まれたての子鹿のよう。普段の大胆不敵さは一切なく、満身創痍であった。
「「「カエデ!!!」」」
全員の声がカエデに届く。各々の心配している眼差しを一瞥したカエデは力無き声で、掠れる声で言う。
「お、お前ら·····、来てしまったのか」
〈魔王装束〉の効果により、白髪となった雪のような白さも、血によって紅く染まり、いつもは無傷であった魔王装束自体もボロボロに変わり果てていた。
その姿を見たララやオールは直ぐに戦闘態勢を取ったが、しかし。
「遂にここまで来たか·····」
クロクルの一言。その声で全員の戦意が一時的にも失った。本能的に悟ったからだ。相手にしていけない相手であると。
しかし、ララやオール、クルムが畏怖している中、意外な人物が先行を切る。
「楓から離れろ!!」
菜乃花である。
ナチスとの戦いが彼女を更に強くさせた。覚悟こそは無くとも、内に秘めた力と勇気はこの場にいる誰よりも備え持っているだろう。
「アルテガ剣術〈連続技・四連弾〉」
放つ技はクレアの技。
これに、クレアは驚く。
ユウキのような〈模倣〉もないのに、荒削りながらも様になっている四連弾は確かにクロクルにダメージを与えた。
「小癪な! 〈時の狭間〉」
「体がッ!」
ピクリとも動かない体に菜乃花が驚きの声をあげる。その声で、全員がハッと我に返った。
──自分は何をしているのか、と。
この中で一番、命の関わりに無関係であった娘に、先を越された。
彼女たちはこの場にいる前提を思い出したのだ。楓を助ける、救うという前提を。
確かに信じてはいた。楓が飄々とした姿でクロクルを倒しているという図を。
しかし、それは信じているものであり、現実ではない。ならば、どうすればいいか?
支えればいい。
いつまでもおんぶされているのは嫌だ。いつまでも守られているのは嫌だ。隣で戦って、共に傷ついて、喜びも悲しみも痛みさえ共有して共に強くなる。
アマサはふと、あの時のことを思い出す。
──関係ないんだ。
あの時に言われた言葉。確かに、それは事実なのかもしれない。家族間の問題であり、アマサたちは部外者だ。
しかし、共に過ごしてきた時間と共有した思い出も、また事実だ。
もうあんな言葉は言わせない。
いつまでもカエデの後ろにいるのは飽きた。次からは隣で、いや、カエデの一歩前へ。
「御主人様を救い出しましょう!」
「「「おぉ(あぁ)!!!」」」
そして、最終決戦が幕を開けた。
いよいよ最終決戦です。
また期間が空くかもしれませんが、気ままにお待ちくださると嬉しいです。
では、また次回!




