聖剣と邪剣 前編
<融合>はその名の通り、融合させる魔法。それは人物だけでなく、万物全てに適用される魔法である。
これは闇系統の本質とも言えるが、ナチスは光の魔王だったはずだ。そのことを知っているクレアは疑問を覚える。ナチスはそれを察したのか、口を開いた。
「私が何故、闇系統の魔法が使えるか不思議そうですね」
クレアの肩がビクっと震える。ナチスの言葉に圧がかかっているからだ。
「私の家系は代々、闇系統を極めているのですよ。だが、光系統に適性があった私は闇系統の本質を理解した状態で光の魔王になってしまった。魔法を生み出すのは想いとイメージ。その事を知った今では<融合>を使えるのです」
さて、種明かしもしたことだしと、ナチスが菜乃花の方を向く。
「ファングから貴方に言伝を預かっています──『これで犠牲者が一人』だそうですよ?」
「──ッ!」
菜乃花のリアクションを見たナチスはニィと口元に三日月を描く。その笑みにクレアはいち早く反応した。
「ナノカちゃんッ」
急に押し出された菜乃花は頭の処理が追いつかず、困惑する。だが、それも直後に聞こえたギィンという金属音に現状を把握する。
ナチスの腕をエクスカリバーで止めるクレアの姿。恐らく、驚き、意識がファングの言葉に切り替わったのを好機と見て、ナチスが攻めてきたのをクレアがフォローしたのだろう。
今すぐにでも感謝したいが、今は戦場。感謝の念を隅に追いやり、加勢する。
「やぁ!」
ステータスのお陰か光速に達したサクリファイスがナチスの腕を捉えた。が。
「なんで」
腕は切れず、逆にサクリファイスがはじかれたのだ。
「このッ!」
クレアがナチスの腹に蹴りを入れ、吹き飛ばす。
「恐らくっすけど、ナチスは自身の腕にバフ効果のある魔法を施しているっす」
クレアの見解に吹き飛ばされたナチスが否定する。
「それは違います。これになんにもしてません」
「嘘っす! じゃなきゃ、聖剣と邪剣が押し負けるわけが……」
「残念だけど、ナチスの言葉は真実だよ」
「──ッ」
ネロの言葉にクレアは驚愕する。
「多分だけど融合したことにより、ナチスの身体能力や筋力も魔力同様に倍以上増えていると判断した方がいい」
菜乃花は内心で焦る。
自分が犠牲を出したばっかりに、と。
それは先程のナチスの言葉も相まって、深く心を抉った。
それを一瞥したクレアは一歩前へ踏み出す。
「私が行くっす。ナノカちゃんはネロちゃんと待っててくださいっす。今のところ、戦えるのは私だけのようっすから」
その言葉に止めに入ろうとしたネロだったが、今の菜乃花の様子を見て、それが現実とも理解した。苦渋の決断であるが。
「宜しく頼むよ」
「はいっす」
そして駆け出すクレアを菜乃花は傷心中の中、微かにだが、確実に見ていた。
「<連続技・四連弾>」
聖剣を構えたクレアは光速の突きを繰り出す。弾丸と化した突きを、しかしナチスは冷静に避ける。クレアは避けた先に左ストレートを放ち、ナチスを吹き飛ばす。
だが、途中でナチスは魔力のみを放出させ、吹き飛ばしの威力を軽減させた。そしてそのまま無詠唱の<光線>を連続で四回放つ。それは、先程の四連弾の如く。
「<精霊の道標>」
大気に舞う精霊が光線の逃げ道を標してくれる。それは道筋となりて、クレアは光線にかすることなく避けた。しかし、ナチスは特に驚きもせず、冷静に魔法陣を構築する。
「<激光>」
激しい光がクレアの目をくらます。そこに無慈悲に放たれる直線上に伸びた光はクレアの心臓を捉えていた。本来なら、この魔法でクレアは命が失っているのだが。
「精霊宝具……なるほど、道理で」
一週間の修行の後、カエデがクレアに授けていた。当時は実力を認めてもらったのだと大喜びしたが、今となっては目の前から消えるのに、ただ返してくれたのだと言うことがわかる。
「次はこちらの番っす。<連続技・六蓮華>」
頭、四肢、心臓。六つの箇所に蓮華が咲き誇る。
「<空蝉>」
しかし、ナチスには届かなかったが。これも想定済み。<索敵>を発動させ、微かに反応した魔力でナチスの現在位置を確認。そこに、渾身の技を放つ。
「<天翔破月>──ッ!!」
三日月のように綺麗に精練された斬撃は光の粒子から肉体へ変化途中である一秒間の隙をしっかりと捉えていた。
そして──
「グッ」
ナチスは斬れた。
まだ終わりではありません、長いので前後編で分けました。




