罪悪感
一人をこの手で刺した時、何かがおかしいと気づいた。
でも、体が言うことを聞かない。足が腕が、人の命を奪っていく。
許されるとは思ってない。
だからかと言って、開き直り殺し尽くすのは出来ない。
なら、私が彼に言った言葉は中身のない言葉だったのであろうか。殺す覚悟も、愛する覚悟も、何も持たない私が己の赴くままに言葉を紡ぎ、彼の決心を揺らがせてしまった。
でも、仕方のない事だ。ずっと、離れ離れだった好きな人とようやく会えたのだ。その形や経緯はどうであれ、長年の気持ちを吐露してしまうのは……仕方のない事なんだ。
割り切ってしまえば、簡単でしょ? そう自分に言い聞かす。
殺めてしまった者たちにできること? そんなのある訳が無い。できるとすれば、それは己の命をもって償うことなのだろう。事実、地球では人殺しの罪を死刑で償わせる。だが、ある人はこう言う──
──逃げるな、と。
己の命をもってしても、償えない。故の大罪。
なら、その大罪を犯した私は許されないのだろう。でも、その罪悪感と同じくらい彼を──楓を愛してしまっている。
私は一体どうすればいいのだろうか。どうすれば罪を償える? どうすれば彼と共に道を歩める? 問うても、問うても、答えは一向にでない。
彼に、一緒に見つけようと言ってこの始末。結局、私は自分勝手なのだ。自分の気持ちのままに行動する。確かに、それは幸せな事だ。でも、私が自分の為に行動した分だけ、誰かが傷つく。もしかしたら、私の思い込みなのかもしれない。だけど、そう思ってしまう。
私は一体、何をしたかったのだろうか。
罪を償う方法があるのだろうか。
彼と共に歩き続けることができるのだろうか。
あぁ、誰か、誰でもいい。
──私に答えを、この問いの答えを教えて……。
【一方、菜乃花チーム】
「どうしたっすか? 気分悪いんすか?」
クレアが菜乃花の顔色が悪いことに気づき、問う。
「ん? ううん、大丈夫」
焦りながら、食い気味に否定する菜乃花を怪訝そうにクレアが見つめるが、一向に解決しないと悟って、一応警告だけする。
「ここからは危険な場所っす。命を奪う覚悟、奪われる覚悟がないのなら、ここでやめとくっすよ」
「ねぇ、聞きたいことが──」
「どうやら、そんな時間はなさそうだ」
丁度、考えていたことに思わず菜乃花が問おうとした瞬間、ネロがあることに気づく。
「どうやら、私たちだけのようです」
「そうだな」
目の前から現れたのは二人の男性。その一方はクレアにとって、忘れられない男であった。
「ナチス……」
菜乃花は一応、情報共有を事前に行っていた為、クレアが異常にナチスに反応する理由はわかっていた。
「どうやら、私の名前は覚えていただいていたようで」
一礼するナチスをクレアは睨む。
「今日こそは、お前を殺すっす」
「少しほど前まで、あのざまだった子がここまでの殺意を……。分かりました。貴方の相手は私が努めましょう。ファング、後ろの二人を頼みます」
「了解した。だが、前もって仕掛けていた<偽造世界>は残り一つだ。一応勢い余って滅さぬよう努めるが、万が一がある。できれば共闘でお前の力も利用したいのだが?」
「分かりました。ではファングは後衛で、前衛は私がやります」
「感謝する」
<偽造世界>は偽りとはいえ、世界を構築する魔法だ。普通は戦闘前に前もって仕掛けておき、戦闘前の魔力消耗を抑える。二人の会話から、設置した<偽造世界>の残りが一つと知ったクレアはピンチを察する。
「ナノカちゃんが危ない」
まだ地球から来たばかり、戦闘は洗脳によって行われていたし、覚悟が出来てないのは明らか。それでもと、ついてきたのはカエデを助ける為。だが、先程の反応を見る限り、まだ迷いがある。
今のうちに菜乃花だけでもと、<偽造世界>の範囲外へ、突き放そうとした瞬間──
無慈悲にも、<偽造世界>が展開した。




