大嫌いな人
誤字報告ありがとうございます。一応は見直しているのですが、読みやすい小説を目指して頑張りたいと思います。
「焼き尽くせ──<咆哮>」
「ちぃ」
あれから体感で数時間が経つがしかし、それは体感であり実際の時間とは大きく異なる。実際はたかが数十分なのだ。だが、数時間と錯覚してしまう程に、彼女……いや彼女たちの運動量は常人のそれを超越していた。さすがといえばいいのか、馬鹿と言えばいいのか。
しかし、それほどまでに実力が拮抗しているのも、また事実なのだ。
さすがは好敵手であるといえる。
「どうだ? 俺の自慢のブレスは」
「別に」
「そうかよッ」
淡々と返すララに何故かイラつきながらマミラは接近する。
「<鍵爪>エェ!!」
纏う魔力が爪の如く鋭利に変形する。
次いで、マミラは怒涛の連続技を繰り出す。両手両足の例えるなら舞踏といえばいいのか。それほどまでに精練された武道術がララを襲う。
「お前はいつもそうだ! 俺の成す事を否定し、馬鹿にしやがって!」
だから、俺の動きを見ろよ、と言わんばかりにマミラは蹴りを、正拳をララ目掛けて打ち込む。
マミラの動きは事実として賞賛に値する。それは元とはいえ魔王であることも然ることながら、竜人の遺伝子が組み込まれているというのが大きい。
しかしながら、そんなことはララにとってどうでもいいことで、興味もなければ賞賛なんてあるはずもない。竜人の遺伝子で強くなったのであってマミラの純粋な戦闘能力でなく、魔王であったのなんてまぐれで冥級魔法を手にしただけなのだから。
だが、前述した通り、マミラに敗北はない。それはララもまた引き分けこそするもの勝利とまではいかなかったという事である。故にそのことを咎めはしないが、嫌ってはいるのだ。
「<闇纏い>」
舞踏が如くの拳の嵐をかいくぐり、ララはマミラの顔面に拳を打ち込む。そして、連撃。
「力やスピードに頼りすぎて笑えるんだけど」
確かに精練されている武術だ。しかし、ララには子供の武術のように見えたのだ。確かに精練されていて、マミラ自身もここまで極めるのに時間を要した。
ただ、マミラの満足がそこだっただけなのだ。
ある特定の一つのことを極める。それは究極系であり、それ以上の上がないのは確かだ。だが、ララは極めて終わりという考えは持ち合わせていないのだ。
魔法も武術も、終わりなんてないのだ。これは何にしたって変わることない事実である。終わりを決めてしまえば、発達なんてない。
話は変わるが、過去に偉業を成し遂げてきた人に共通するのは可能性を信じた事である。
その道に可能性があると信じて突き進んだ先に成功があり、それが後に偉業と呼ばれる。少し、地球の話になるが、電話を開発したからと言って、人類は止まったわけではない。更に使いやすさと、性能を上げて、上げてとしていく内にスマートフォンが生まれた。このように、終わりと決めればそこで止まってしまうが、更にと突き詰めていけば、更なる発展が生まれる。
ララに地球の知識はないが、それに似た考えを持っているお陰で力を得たのだ。
飽くなき探究心がもたらした無限の可能性と力がララにはある。しかし、マミラにはない。これが二人の差というのだろうか。かつて引き分けた相手との力の差が開き始める。
「グハッ」
「まだまだ、行くよ!」
拳を蹴りを、マミラを超えるスピードで力で技術で打ち込む。
「なん、で」
遂には倒れるマミラにララの追撃が襲う。
「なんでなんだよォ!!!」
何故、最強の自分がララにここまで劣勢にならなければならないのか。
何故、ここまで力の差があるのか。
答えはシンプルだった──
「チャラ男が弱いからよ」
そして強い衝撃が頭に来た瞬間、マミラの意識は無くなった。
少年の物心がついた時に、一番最初、目に映ったのは魔族の下卑た笑みだった。
「コイツが成功体ですか……」
この言葉が一番最初に聞いた言葉。今でも忘れたことはない。
「えぇ、これであの醜い人間共を蹂躙することができる」
少年は恐怖を覚えた。
そう言う魔族の顔があまりにも恐ろしく、醜いものだったからだ。醜い人間は知らないが、醜い魔族と認識したのはこの時だった。
「しかし、唯一の成功体が男ですか……」
「えぇ、戦闘能力的には申し分ないですが、道具としてはいささか不満はありますね」
「いっそのこと、女として育てるのは?」
「ハハッ、それは変態ですね。やめてください」
やはり醜い。この時が幾ら戦争中で、欲が溜まっているにしても、男……しかもまだ少年である彼をそういう目で見るのは変態であり、人のことが言えない。
少年は後に、人も魔族も等しく醜く、差ほど変わりないと知る。
その少年の名はマミラと言った。
そんなマミラにある出会いがあった。それは女性との出会いだ。その女性の名はララ。
竜人の遺伝子を持つマミラと引き分けた女性。
彼女はいつもマミラを目の敵にし、憎まれ口を言い放つ。それがマミラにとって新鮮だった。いつもはペコペコと頭を下げる弱者が憎まれ口を己に叩く。
次第にマミラもララに対し、憎まれ口を叩くようになった。
いつも彼女のことを考え、嫌われる言葉を模索する。彼女に勝つ為に努力をし、彼女に認められるように力を磨いた。
常に頭のどこかで彼女がいたのだ。
そこで、マミラはふと考える。自分がこの戦いにおいて、相手をララにした理由。ララに対して怒りが湧いた理由を……
──俺は、俺は……
──ララを好いていたのかもしれない。
ララが他の、しかも人間の男の味方についた、主と崇めた。それが嫌だった。ララに認めてもらうのは自分でありたかった。だからララに怒りが湧いたのだ。
何故、自分でなく、カエデを選んだのか。
そう自覚してしまえば簡単だった。いつも、彼女のことを考えたのは、いつの間にか好きになったララを振り向かせたかったのだと。
そこで、意識が浮上する。
目の前に立つのは意中の女性。
気持ちを声に出そうとして、止める。
負けた自分が告白なんてダサい。
なら、せめて彼女の腕で死にたい。だが、その前に確認を。
「なぁ、お前はあの男の何が気に入ったんだ?」
「?」
唐突すぎて、ララが疑問符を浮かべるが、マミラの真剣味を帯びた顔を見て、考える。
「テクニック」
そして出た言葉がこれだった。
「あちきの体を焦らしながら、でも時に厳しく、それでいて優しさを投げかける。そんなテクニックに、あちきは堕ちた」
若干聞いたことを後悔した。
なんだって惚れた女の堕ちた理由なんて聞かなければいかんのだ。もっと別の理由だと思ったマミラは軽く落ち込むが、まぁ気にしない。
「そうか、ならもう聞くことはない。殺してくれ」
「自分勝手だな」
文句を言いながらララはマミラの心臓部に手を添える。
「<闇纏い>」
その言葉が魔力を闇に変換させ、腕に纏わせた。
既に目を閉じていたマミラが、ふと、気まぐれに言う。
「お前は知っていると思うが、他の奴らにも言っておけよ。あの男は化物……いや、文字通りの神だ」
あの男がクロクルを指しているのは明らか。この言葉がララたちに利を与えればいいが、と。マミラは今度こそ、目を閉じる。
しかし、そんな目を開かせる出来事が起きる。
突然と耳に息がかかる。あまりの事態で目は見開く。
そんなマミラに一言。
「アンタのブレス、少し、少しだけだぞ? ……気持ちよかった。マシになったな」
マミラの心臓が跳ねる。
いい雰囲気であると自覚する、が。マミラは──
「バーカ」
その言葉にララはムッとしかめる。
「…………死ね、チャラ男」
「じゃあ、早く殺せ、裏切り者」
あんなのが最後の言葉なんて自分たちには似合わない。
やっぱり、自分たちは好敵手──いや、憎まれ口を叩き合うのがお似合いである。
──ララ。俺のライバル……じゃねぇか、大嫌いな女。じゃあな……。
「バカ野郎……」
最後に耳に届いた言葉に、憎まれ口を言いながら、ララは自分の大嫌いな男に涙を流した。
他に比べ二話で終わったララVSマミラ戦でしたが、どうだったでしょうか。
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最後に補足として、ララはマミラに恋こそしていませんが、それなりに大切でありだが憎い相手でありと複雑な感情を抱いていました。例えるなら、幼馴染でしょうか。めんどくさい幼馴染に怒りを抱きながら、それでいて大切みたいな、アレです。分かりにくかったらすみません。




