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後悔


「遊戯だと!?」

「えぇ、そうです。貴方は人間で子供だ。なら、敬意も必要なく、不必要な存在だ」


 オールはあえて怒らす言葉を選ぶ。カミュが嫌がる言葉、カミュが嫌う言葉。魔王としての彼を見てきた。魔王という存在はオールにとって研究対象だ。


 器用貧乏なだけにオリジナリティを生み出そうと、魔王を調べた。ララやカミュにも接近し、彼、彼女の戦いを間近に見た。

 そんなオールにとって、魔王の嫌う言葉、弱点などは容易に突くことができる。だが、通常の場合、そんなことをしても勝てないのが、魔王だ。しかし、今のカミュは違う。怒りで冷静さを失い、子供の癇癪が如く、自分の手のひらで転がっている。


「ならば、君が主としたっているのも、人間だろぉぉ!!」


 カミュが大地を駆ける。幽霊が故に、浮游し、オールを惑わす。しかし、普通なら焦るところをオールはただ冷静に眼を働かせ、回避に専念する。

 ここでミスを犯すわけにはいかない。だから、冷静に、心を凍てつかせて、自分の感情を押し殺す。


「はい、言葉を間違えました。同じ人間でも、貴方は中途半端に人間な存在で、子供でした。主とは全く違います」

「──ッ、このクソ野郎! 僕を馬鹿にしてッ!」


 カミュが嫌うのは人間と同一視されること。自分が何者かと問うた時、幽霊という答えが出た。それは人間ではなく、人間の容姿をした者。なるほど、確かに中途半端だ。しかし、カミュの考えは違った。人間とは違う。世界を回って、人間が如何に脆弱で醜いものかを知った。故に、人間より高貴な存在だと、そう信じ込んできた。

 だから──


「僕が人間より、劣っているわけないだろうがッ」


 カミュの霊力が高ぶる。魔力にも似た力──霊が持つ不思議な力を爆発させる。


「霊力全開ッ、喰らえよ──<霊弾>ッ!!」


 それは巨大な弾。霊力により、巨大に肥大化したその弾は、オールに向かって放出される。その巨大さから、逃げる事は叶わず、オールは正面から立ち向かうことに決めた。

 先程、まぐれにも偶然出来た呪系統……元来、霊と呪は相対する力であり、混ざる力である。お互いの力がこの世に存在しているのが奇跡であるが故に、矛盾する力。


 怨霊は呪いと霊を混ぜた存在。ならば、霊力も少なからず存在する。行くしかないだろう。足りない霊力は魔力や呪力で補う。

 やるしかない。


「呪われし世界に誘え、死神──<死ノ神(グリム・リーパー)>」


 出現するは黒い穴。しかしながら、<闇穴(ブラック・ホール)>とはまた違う異質な何か。

 見れば見るほど、気になり、吸い込まれそうな感覚に陥る常世への穴。それは、呪われし世界への片道切符だ。


「う、そ、だろ……僕の霊力を全部つぎ込んだんだぞッ!? それがなんで、器用貧乏で雑魚のオールの魔法に負けるんだァ」


 霊とは中途半端。その存在を保つは肉体ではなく霊力。


「ふざけるなよ、消える訳にはいかない。だからッ」


 そう消えなければならない。霊とはそのような存在だ。未練により生まれ、未練を解消したことによる消滅。もしくは、霊力の消失。

 それが常識なのだ。なのに、なんだコイツは!?


 オールは目を見開く。


「呪力を霊力に変換!?」


 呪力と霊力は表裏一体。時に反発し、時に融合するそれは、まさか変換できるとは思いもしない。しかし、だからこそ、超えがいがあるものだ。

 ──と、ここでオールは合点がいく。彼を主とした理由が。


「私はただ、主を超えたかったのか」


 あの時、負けた瞬間から、オールはカエデの力に魅せられていた。故に超えたかった。主と慕い、付き添ってまで、力の所以を知りたかった。

 オールはカエデを一方的にライバルだと思っていた。


 だからだろう。


 オールに笑みが浮かんでいた。それはもう、不敵な笑みが。なぜなら、そう。


「負ける気がしない」


 主に比べれば、どうってことはない。あの時魅せられた力は、カミュの力では足元にも及ばない。


「何を笑っているんだい?」

「いえ、時に質問ですが……カミュ様は同時に魔法を発動できますでしょうか?」


 カミュは質問の意図がつかめなかったが、答えた。


「……できるわけがないだろう」


 そう、できる訳が無い。


「ク、アハハハッ、そうですよね」


 そう。この答えで十分だ。やはり、足元にも及ばない。


「千を超える光の矢に比べればどうってことない」

「何を?」

「逃げ場のない、一方的な蹂躙でない」

「オール?」

「なら、余裕だ。なぁカミュ?」


 様と呼称するのはあの方で十分だろう。尊敬するのは一人で十分だろう。


「僕をまた馬鹿にッ」

「さぁ、ケリをつけますか。──<怨念の纏い>」

「──ッ」


 怨霊が、負の念がカミュの足元にまとわりつく。同じ霊体である怨霊たちはカミュを瞬く間に拘束する。


「主のように、貴方を戦意喪失させましょうか?」


 己の手を怨念で纏う。それは黒く、不格好ながらも、なんとか腕を形成させる。その、歪な腕でカミュを一撫で。さすれば、カミュの服は瞬く間に細切れとなる。


「主は敵に容赦しない。相手をいたぶる時はその妨げとなる服、鎧を目の前で奪う」

「や、やめ」


 カミュの声は虚しく、オールの手は止まらない。


「最初は背中を、腕を足を、再起不能になるまで魔法で、じっくりと」

「ア、グゥゥッ」


 <火球(ファイヤーボール)>を、カエデとまではいかないもの、連弾させる。


「そして治癒を施す。これを後、一万回繰り返す」

「へ?」


 それは形容するなら地獄。繰り返されるアメとムチは、カミュの戦意も意思も消失させるのに十分過ぎるほどだ。

 そして、そんな地獄が終わった時。オールは後悔した。


「オール様ぁ」


 カミュが懐いたのだ。しかし、通常のそれとはまた違う。


「もっといたぶってぇ」


 オールは頭を抱えた。カミュが向ける視線は、ララがカエデに向けるそれと同じであり、また言動もララに近しいものだったからだ。


「そういえば、ララも、主様にこれをヤられたと言っていたな」


 もはや、尊敬するのはカエデのみにしたらしく。ララも呼び捨てになっていたが、今はそれどころでない。頼もしい味方が増えたと喜ぶべきか、カミュを悦ばせるべきか。

 どちらにしろ、ため息を吐くオールであった。

趣向の違った終わり方ですが、まぁララと同じネタキャラなので。プラス、まだ人間に対する評価も変わってはいません。あくまで、オールに懐いただけなので。

人間への評価が変わるのは完全に閑話になってしまいます。書くかはわかりませんが、全ては完結した後で……次回はララ目線の戦闘です。お楽しみにッ!


余談ですが、オールとカミュのBLではないです。あくまで懐いているだけで、恋愛的な発展は無いのであしからず。

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