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 時を同じくして、クルムたちは魔王城の廊下を駆けていた。


「どうやらユウキたちの方は上手くいったみたい」


 <思念>にて送られた報告に安堵の息を溢すクルムたち。クルムとしては長年もユウキのの師として過ごしてきたが故に心配しており、例え一週間でもサナやアマサたちに師として教えていたララやオールも、なんやかんやで心配はしていたのだ。

 しかし、そんな安堵と共に、彼女たちの顔には緊張も生まれていた。


「次は私たちだわ……」

「うん。あちき、人間はクソだと思っていたいたけどね? 今では主様の奴隷でもいいって思っているんだ。だって、あんなにも一生懸命なあの子たちを見てたら、こっちもカッコつけたくなってきたんだから」


 一度師と名乗ったからには負けは許さない。しかも弟子が勝った相手に負けるなど言語道断。

 だからこそ──


「そこに隠れている人たち……出てきてください」


 オールが目線を厳しく、廊下に並んだ一つの鎧と天井、そして壁を一度ずつ射抜く。


「あちゃあ、気づかれちゃった?」


 てへっと舌を出しながら、ある男が鎧から。


「そのまま後ろから一撃で終わらせるはずだったのに……」


 可憐な少女が天井から。


「でも、こういうのも面白いよねぇ」


 半分透明の少年が壁から。


 それぞれ戦闘準備が整っている状態で姿を現した。


「さて、誰が誰をいく?」


 片角の男が他二人に問う。その問いに少し悩みを見せながらも、一斉に指を差し始めた。


「おっ、運良くバラけたな」

「うん。マミラたちにしてはいい働きだった」

「なんだと?」

「まぁ、落ち着きなよぉ。せっかく喧嘩なしに綺麗に決まったんだからぁ」


 いつの間にか相手のペースにのっていたクルムたちは一瞬、このままでいいのか迷ったが、協調性よりも個人戦闘能力が高い事を認識して、その迷いを捨てた。


「じゃあ私はあの魔女を。マミラは裏切り者のララを。そしてカミュは同じく裏切り者のオールをってことでいい?」

「「あぁ(うん)」」


 そして各々<偽造世界>を発動させたのだった。


 * * *


 【クルム。フィールド館】


 <偽造世界>の発動を確認したクルムは、特に何もせずその光に身を包ませた。光が引いていく先に広がっていたのはある館の光景だった。

 外見は古びており、時刻は夜。鳥や動物たちの鳴き声が不気味に聞こえてくるこの世界に来たクルムは特に怖がる様子も見せず、一歩を踏み出す。


 すると、館の扉がギギギっと開かれ、館内の光景が視界に写ったが、真っ暗でよく見えない。そんな中、館の中から先程の少女の声が聞こえてきた。


「戦闘を始めましょう? さぁ<入って?>」

「──!?」


 その言葉にクルムは成すすべもなく館へ一歩、また一歩踏み出していく。魔法でどうにかしようにも、口はもちろん、思考すらも自分のものでないように感じる。

 そして、クルムが館に入ったのと同時に扉は締まり、ロウソクの火が順番に灯っていった。


「ようこそ。私の館へ。私の名前はウルク・サイファ。これから戦闘……いや、一歩的な蹂躙をさせていただく、元魔王でございます」


 先程までの子供っぽい口調は消え、大人……いや、あの場にいた誰よりも年長者な雰囲気を纏って、ウルクはお辞儀をした。


「では蹂躙を始めましょう」


 そして顔を上げたウルクの表情は誰よりも不気味で、クルムは戦慄した。


「<地に這いばれ>」


 たった一言。

 その言葉が聞こえてきた瞬間、クルムは地に頭を擦りつけ、這い蹲るポーズをとった。


「なん、で?」


 クルムには理解が及ばなかった。なにせ、自分が聞いたのは言葉であって魔法じゃない。では、なぜ今自分はこのようなポーズとなっているのかわからなかった。

 そんなクルムを見て笑うウルク。


「教えて欲しい? もっとも知ったところで貴方にはどうすることもできないけど──これはね? 言霊っていう魔法。神系統に位置する高等魔法よ」


 そう。ウルクはかつて魔神に最も近い者とされ、魔王の中で圧倒的な強さを誇った。その理由とは、正しくそれ。扱う系統にあった。


 神系統──神が使用すると言われる魔法。基本の術は言霊と呼ばれる一見言葉に過ぎない呪文である。その力たるや、絶大と評され、故に神が絶対的強者である所以だった。


「さて、ネタばらししちゃったし、貴方。絶対生きて返さないわよ? いや、一生玩具の方が面白いかしら?」


 そして真の蹂躙が幕を開けた。

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