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暴走


「──という作戦で」

「了解」


 <思念>により作戦を伝え終わったところでユウキが一歩前に進み出る。


「なんだ? もうお話しは終わりか?」

「ん。待たせた」

「別に構わなぇさ。幾ら作戦を練ろうが関係ないからな」


 この会話の最中に、サナは二人から距離をとった。それは、今回の作戦に関係している。このまま二人の近くにいても、ユウキの邪魔となり、作戦どころでない。

 そんなサナを一瞥し、カイトはユウキに狙いを定めて戦闘態勢をとった。


「ハンデだ。お前らの作戦を正面から崩してやるよ」


 カイトが見せるは、強者の余裕。

 しかし、そんなものにいちいち反応するユウキではない。即座に妖刀・政宗を構える。


「【魔眼】」


 ユウキは<制御装置解除(リミッターカット)>状態で迫るカイトに対して、本気で応えた。修行中に行ったのは基本の剣技に加えて、ララやオールから【魔眼】を詳しく聞き、修正を繰り返して、今の極地に至った。

 

「その眼……」


 右目が黄金に光輝く。それは魔眼と、完璧に適合した証……つまり、今の彼女はユウキではなく──


「ヒヒッ」


 不気味な笑みを浮かべ、彼女は斬る。


「何を……!?」


 一瞬、遅れてカイトは気づく……己の右腕の有無に。

 根元からバッサリと消滅した己の右腕……しかし、それにいちいち呻くカイトではない。黙々とカイトは<不死鳥の炎>を発動し、その右腕を完璧に再生してみせる。


「ハハッ! 面白ーい! 幾らやってもいいんだぁ」


 狂喜。

 残虐な顔を表に見せながら、彼女は再度剣を構える。


 そんな時、彼女の脳内に言葉が響く。


『まーちゃん、目的忘れてない?』


 それはユウキの声。


「大丈夫。安心して? ゆーちゃん」


 すると、今までの狂いが嘘のように魔眼はそう答える。


 「まーちゃん」と「ゆーちゃん」それは彼女たちが、決めた互いの呼び名。

 魔眼の極地──それを説明するには、まず『魔眼』という種族の説明をしよう。


 そも、魔族の中で寄生型な魔眼という種族は大変珍しい。故に、好奇な目を向けられるのは当たり前だろう。そんな彼ら──魔眼が生きていられたのは、やはり寄生をしたからである。

 他者の目を喰らう。そこに住み着き、寄生する。寄生が成立すれば、その体は魔眼の支配下となり意のままに操られる。宿主の精神が崩壊し、人格すらも乗っ取られ、遂には廃人となるのがオチだった。


 しかし、ユウキの場合は少し違かった。

 ユウキの右目に魔眼が住み着いたのは、魔眼の意思でも、或いはユウキの意思でもない。それは第三者による意思。それが意味するのは、不完全な適合だった。


 適合とは、前述したとおり、廃人。完全に魔眼の意のままに操られる事を指す。しかし、ユウキの場合は魔眼の力を使用した時のみ、魔眼の人格が現れた。それは、ユウキの人格と、魔眼の人格が、ユウキの体の中で共存しているという証拠だった。


 故に、極地までたどり着く事が出来たのだろう。


 魔眼の本来は、廃人に非ず、契約のもと、彼らは完全となる適合が成立する。

 そう、それこそ、今の彼女たちがそうだった。


『右から!』

「はいよっ!」


 カイトの火系統を的確に避け、隙をついて攻撃を繰り出す。


「ッ。面倒な」


 カイトはここ一帯を消し炭にする為、魔法を放つ。


「──<火炎ノ大地>」


 それが、地面に飛来する直前。


「お願いゆーちゃん」

『ん』


 短いやり取り。

 この瞬間、体の所有権は移り変わる。


「摸倣──<魔道・一閃>」


 放たれる斬撃。二つの魔力はぶつかり合い、均衡したが、それも一瞬で爆発が起こる。


「やるじゃねぇか? 魔眼なんて種族まだ生きてたのもおかしいが、話に聞いてたのと随分チゲぇな」


 今の攻防の感想を述べるカイト。確かに、彼からすれば魔眼という種族が生きているということも、彼女たちが契約のもと、共闘しているなんてことも、驚きに値する事だろう。


「一体どうなってんだか……」

「ん? 別に普通だよ。友達になっただけだもん」


 いつの間にか、所有権がまーちゃんに移り、答えた。


「友達だと?」

「そう。私たちがした契約……といってもおかしいけど──友達になること。それが、私が彼女に掲示した条件だよ」

「人間と魔族が……?」

「うん。ゆーちゃんは二つ返事で了承してくれたよ?」

「そんなの嘘だ!」


 カイトの声が震える。怒りで、動揺で、感情を表に出さなかったカイトが初めてだした。


「人間は裏切る。俺らの敵でしかない。それなのに友達だと!? よせ、絶対に裏切られるぞ?」

「ゆーちゃんはそんな人間じゃない。それに……私からすれば、魔族も変わんないよ」

「いや、魔族は違う! 魔族は──」

「いや、変わんない。貴方たち魔族も、私たち魔眼を研究対象にしか見ていなかった」


 魔眼の持つスキルと能力は興味深かった。魔眼の固有能力は寄生。しかし、それとは別に能力というものが存在した。それはまーちゃんの摸倣然りだ。これが明らかになれば、魔族側の戦力は大幅にアップする。そのために、魔族は魔眼の乱獲を始めた。


「私の親も、魔族に殺された。そんな魔族を信じられないし、第一、私が心を許しているのはゆーちゃんたちだけ。そんなゆーちゃんを馬鹿にするなら許さない!」


 しかし、当のカイトはそれどころじゃない。


「友達? 嘘だ。そんなもの……俺らはそんな人間たちを殺そうと……」


 己の頭を乱暴にかき、叫び声を上げるカイト。

 そして──


「嘘だァァァァアッ!!!!!」


 暴走が始まった。

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