戦況
「へへ、なんか嬉しいな」
「あぁ、俺もずっと見合わないって思ってたからな」
そして二人で笑い合い、菜乃花の顔が神妙なものとなる。
「楓……」
「あぁ、わかってる。俺はこれからも人を殺し、お前らを守らなければならない。俺が殺してきた人たちに出来る事と言えば、この馬鹿げた事を終わらせることだと思っている」
「……うん」
人を殺すことが罪なら、俺は罪人レベルでは測りきれないぐらいに殺してきた。
そのぐらいの屍を越えて、俺は、今この場所に立っている。
「さぁ、行こう。もうあっち側も限界みたいだからな」
ならば、終わりにしなければならない。
命が軽いこの世界を──変える為に……
「それにしても、心になんてよく侵入できたね」
心の世界から出る際に、菜乃花が問う。
「外にいる俺の仲間が、お前の心に扉を開き、俺が固有能力と呼ばれるスキルの一つ『侵入』を使ってここまできたんだよ」
「へぇ、私にも出来るかな?」
「魔法だけなら、菜乃花も出来るさ」
「そうだといいな」
「さぁ行こう。外に出たら戦場だ」
俺の戦いは終わってない。
爺さん……アンタと話して、それで……倒す。
俺は、菜乃花の手を握り、心から出た。
「もう遅いよ。主様……どうやら、その様子だと成功したんだね?」
「あぁ、無事……かどうかは分からんが、いけた」
「こ、こんにちわ」
菜乃花は先程まで襲っていたからか、ネロに対し若干緊張しているようだ。
「そんな緊張しなくてもいいよ。君が洗脳されていたのは主様もボクもわかっていたから」
「はい……」
まぁ、これから仲良くしてもらいたものだ。
……他の奴らともな。
ここで、俺は改めて戦場を見る。
菜乃花の爆発により死んだのが百名、オウカという統率者がいなくなった今、彼らは混乱している。
気配感知を発動させれば、魔王城とやらに馬鹿デカイ気配を感知。
どうやら、爺さんはまだ動いていないようだ。
元魔王たちも同様か……。
「魔王城へ急ごう」
「魔族たちはいいの?」
「オウカを失った部隊は機能しない、無駄な命は取らない」
「そっか」
急ごう。魔王城へ……。
* * *
「魔王様、オウカと勇者がやられました」
ナチスの報告がクロクルの耳に入る。
「……そうか。カエデがすぐそこまで来ているのか」
クロクルが手配した軍勢一万が、半分以上の死者を出した上、統率者として配属した影の魔王であるオウカが、戦死……いや、菜乃花の手により死亡。
その菜乃花さえも洗脳を解き、今ではカエデの元についた。
「いかがしましょう?」
「うむ……」
残った元魔王もとい配下は八人。いずれも先鋭だが──
「貴様らは今回、カエデとの戦いには使わん」
この言葉にナチスは耳を疑った。
では誰を──と口を開きかけ、続くクロクルの言葉に耳を傾けた。
「我が出よう」
「──ッ、しかし!」
「ここで、貴様らが出撃しようが、どうせオウカの二の舞よ。ならば、我が出るしかあるまい」
ナチスはこれ以上どうも言えなかった。
言外にナチスたちではカエデに勝てないと言われたのだ。
これ以上食い下がるものなら、失礼に値する。
「分かりました。戦闘の規模を考えまして、<偽造世界>を発動させて頂いても?」
「あぁ、構わない。それと他の者どもにも伝えとけ……貴様らの出番はしっかりとあるとな」
「ハッ」
準備を始める為に去ったナチスを尻目に、クロクルは一人、玉座に鎮座し目を閉じる。
「なぁ……ラシル……いつかカエデを包みこんでやる日は来るのか……?」
ラシル・ファースト。
初代勇者で、唯一の異世界人でなく、勇者という称号を得た女性。
「──ただの祖父として……」
そこまで言って、クロクルは笑う。
「ない、か……人間がいる限り……」
そして、クロクルは歩み始める。カエデの元へと……。
最近、朝に投稿できなくてすみません。
リアルに忙しくなってきて、毎日投稿がもうそろ無理になってくるかもしれませんが、できる限り投稿していこうと思います。
では、次話をお待ちください。多分明日も投稿出来ると思います。




