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元魔王と堕ちた勇者


 月夜に、その赤き髪を照らし、蒼穹のような瞳をした少女――クレアが殺気を放ちながら、そこに立っていた。


「どうしたって·····ふざけるのもいい加減にするっすよ」


 放つ殺気に負けず劣らずと、その言葉にも怒気が含まれている。


「もしかして分かったのか? 俺の正体が」

「俺の正体っすか·····。過去、人類に喧嘩を売ってきた魔王は余すことなく我々勇者の一族の先祖が倒してきたっす。その中で一番の戦闘能力を保有し、所持している、又は奪ったスキルは数しれず、その中には威圧や気配感知も含まれている神殺しを成した魔王――第七代魔王・エヴァンしか心当たりがないっすね」


 長々と俺の事を語るクレア、その語ったものの中に一つだけ間違いがあったな。


「人類に喧嘩を売ったね·····。まぁ、いいや」


 そんな俺の呟きは夜風の音により消えていく。


「で? 俺に用か?」

「ッ! まぁ、そうっすね。あるとするならば沢山ありますけど、ここではなんですからアラン草原にでも場所を移しましょう」


 アラン草原とはアラン王国の近くに広がる、クエストの時に通った、あののどかな草原である。

  だが、あそこまで行くとならば衛兵かなんかに、引っかかってめんどくさいので転移魔法で行くとしよう。


「どうやら間違いなく魔王のようっすね」


 俺の一瞬の間の転移を発動するために高めた魔力を感知したらしい。さすがだな、やはりアイツの血か·····。


「先に待ってるぞ――<転移(ルーザー)>」


 目の前の景色が消え、瞬く間に草原にへと場所を移した。

 すると、数秒後、クレアが姿を現した。


「おいおい、衛兵の検問を通り抜けるために王国を囲っている壁を飛び越えるってよ」


 王国にはモンスターの被害を抑えるために、外壁が外を囲っている。高さ、十メートルを優に超えるであろう高さを脚力で飛び越えるのか

 見たところ魔法を使った形跡が見えない。地力であそこまでか·····。


「早かったな」

「堕ちても、勇者っすからね」


 そして訪れる静寂。辺りは草木をなびかせる夜風の音しか聞こえてこない。

 その状態を破ったのはクレアだった。


「なん、なんで·····なんでアルテガ様を殺したんすか!」


 やはりか、この怒りが俺にぶつかるとは予想していた。

 アルテガとは、俺がまだ魔王だった頃に、俺を殺さんと訪れた数多い勇者の中の一人だ。


 名をアルテガ・ウォーカー。クレアの先祖に当たる勇者だ。


 人間とは馬鹿な生き物で、魔王が人類に危険を及ぼすと分かれば、異世界――地球から勇者として人間を召喚する。俺みたいにな

 魔力が高ければ、元の世界に帰る人間が居れば、この世界に滞在する人間もいた。アルテガは後者だった。


 俺と対峙した時は、既に所帯を所持しており、妻子に恵まれ、実に幸せだと語っていた。

 まぁ、結局は俺が殺したのだがな。


「アルテガをなんで殺したかって? ·····」


 俺の沈黙に黙って耳を傾けるクレア。


 アルテガを殺した理由ね、アイツの剣術は豪剣とまで言われ、しかしその攻撃力に比例し、速さもずば抜けていた。俺が対峙した勇者の中で間違いなく一番強かったと記憶している。

 そいつを殺した理由か·····。


「俺の命を狙ってきたからだな」

「ッ! なら、なんでアルテガ様だけを殺したァ!」


 ズンっと重りの乗っかったように重くなる空気。原因は言わずもがな、彼女の殺気だ。


 アルテガだけをか·····確かに俺の命を狙ってきた勇者の中で唯一殺したのはアルテガだけだ。


「それを聞いてどうする? 俺を殺すか?」

「·····」


 クレアは、スウっと腰に差した剣を抜き構えを取る。


 ほぉ、アレは覚えている。アルテガが使っていた剣術で確か名前は――


「アルテガ剣術。エヴァン·····お前は覚えているっすよね、この剣術の名前を!」


 そうそう、アルテガ剣術だ。あまりにいい名前が思いつかなかったんで、自分の名前を取り入れたという何とも馬鹿な由来だ。


「まぁ、覚えている。しかも、お前·····最初っから一人で戦う気が無いな?」

「やはり気づいていまっすよね·····はい。そうっすよ。私一人では仇は取れない。だから協力を仰ぎました」


 クレアの言葉に、反応して木陰からスっと現れる人影。


「エヴァンを討ち取ったと言われる勇者の一族――ロン」


 クレアの紹介に一礼して、俺に殺気をぶつけてくる少年。

 この夜の闇にも似た黒髪に、闇夜に紛れた黒のロングコート。手には白色の手袋がはめられていた。


「私に気づくなんて、さすが魔王いや、元魔王様ですね。私の名前はロン、ロン・ウォルです。今からあなたを殺す人物の名前ですので、冥土の土産として受け取ってください」


 丁寧な自己紹介を言いながら、再度一礼するロン。


 そう言えばいたな。ウォルとか言う勇者·····確か名前は·····そうだ! モブという名前だ! モブ・ウォル。地球に行くまでは知らなかったが、モブの由来は何とも面白いものだな、その名に恥じない見事な弱さだったのを覚えている。


「それで、二人でかかってくるのか?」

「勇者の一族二人かかりで行くのです。これでも戦力は多い方ですよ」


 どうやら、アルテガの仇討ちが今始まるらしい。

分かりづらかったらということで補足を、

人類は魔王を討伐するため何回も召喚を行っています。それはアルテガ然り、モブ然りです。

では、何故、地球人っぽい名前では無いのか? という疑問なのですが、

姓は奥さんの姓となっています。名は、彼ら以外は全員地球人っぽいのですが、彼らだけ、俗に言うキラキラネームなのです。

本当の名前を勇人 (アルテガ) 黒子 (モブ) です。

由来はアルテガの両親は重度のド〇クエ好きでオルテガのように強くなれという由来です。オルテガだと馬鹿にされると思った両親はアルテガという名前にしましたが、彼にはいじめが絶えませんでした。

モブは、モブというキャラは物語を動かすためには重要な存在なの、だからそんな人になってね。と漫画家の母、小説家の父に名付けられました。もちろん同級生からいじられました。

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