旅立ちの時
王国に魔族が襲来し、一ヶ月が経った。
七魔武闘祭は、魔族襲来の為決勝戦が出来ずに、中止となった為、同率優勝という形で、アルムドア学院とクロリスタ学院の優勝となった。
クルムとしては、不満があったものの一応優勝まで導いたので報酬をもらった。
驚いたのは、学院から出る際に、ラナたち2組や、シルターたちの1組。さらに、学院における全てのクラスが、俺やアマサの退学(?)に見送りに来た事が驚きだった。
まぁ、嫌な気分でなかったし、むしろ嬉しさがこみ上げた出来事だった。
さて、今日はといえば、遂に俺はデビルス大陸に行く事を決めた。
同伴者は、オールと、あとこのぬいぐるみだけだ。
え? このぬいぐるみはなんだって聞きたいのか?
仕方がないな。
「ちょっと!? なんであちきがこんな格好な訳!?」
おっと。説明の手間が省けた。
そう、喋り方……いや、一人称で分かる通り、コイツはララだ。
もちろん。主従契約済みである。
「ララ様。慣れれば良いものでございますよ」
「キィ、オール。アンタ姿が見えないと思ったらぁ。こんなところにいたのね」
意外なことに、この二人知り合いなようで、仲は結構いい感じだな。
「ララ。それ以上うるさいと……わかってるよな?」
今は、早朝。
アマサにバレないように宿から出てきて、このままこっそり王都から出ようと思っている。
デビルス大陸には、魔王だった頃も数回しか、訪れなかったので<転移>の使用が不可能。よって、歩きで向かうしかないのである。
「ヒィィィィィ。分かってますから、主様! どうか、あれだけは!!」
ララが主従契約を渋った際、調教にも似た事をやったらこんなことになった。
従順過ぎるのも考えものだが、この程度なら、可愛いものだ。
「主、少し訪ねたいのですが……」
「なんだ?」
「あのララ様を如何様にここまで?」
あぁ、そういえば。このララ、デビルス大陸では相当な戦闘狂として言われていたらしく、幸い、弱い奴には興味がないらしく、人間が襲われる事は無かったという。
そんなララをどうやって手懐けたか?
うーん。
「簡単だぞ? 全裸にして、拘束。その後、魔法でいたぶっただけだが?」
あれなんか。オール引いてるんだけど!
普通だと思うんだけどな。
だって、いつもの拷問に比べれば、幾分か優しい方だろう。
「ま、まぁ、さすがは主と言っておきます」
その反応は少し苛つくが、まぁいいだろう。
というか、そろそろ門に向かわないとまずい。
「ララお前の歩幅狭いから、俺の肩に乗っとけ」
「分かりました。ですので、あれだけはぁ」
わかったからと、ララに言いながら、俺らは門へと向かった。
……あれ? アイツら……
「なんで、お前らがここにいるんだ?」
門にへと向かえば、知っている面子が姿を現した。
クレアに、サナ。アマサ、クルム。そしてユウキ。
見慣れた彼女たちに、俺は驚きを隠せない。
「なんでって。本気でいってるんすか?」
「いつも、御主人様が私たちを出し抜けると思わないでください」
「ん。無理」
「そうですよ。カエデ様」
「まぁ、この破壊の魔女から逃れる事はできないわね」
ったく。どういうことだよ。
「御主人様がお部屋を出て行くのは視認しました。テーブルの上にあった手紙『デビルス大陸に行ってくる』を見た瞬間に、私が、皆様にお伝いに回りました」
……そういうことか。
「クルムに至っては、学院はどうするんだよ?」
「それは、もうバッチリよ。トウタ様に魔族の調査として、デビルス大陸に渡ることは説明したわ。これでも破壊の魔女だから、直ぐに許可が下りた。その間の学院長の仕事はラナさんに押し付けたの」
ラナとんでもない出世じゃないか。
しかし、これは本当の事を言って帰ってもらうしかないな。
「お前らじゃあ、デビルス大陸は無理だと思って、俺はこいつらと行くことにした。こいつらだって、デビルス大陸までの道案内として、同行するだけで、着いた後は<転移>で返すつもりだったんだが?」
俺の言葉に、全員がうつむく。
しかし──
「私たちが弱いのは百も承知っす。でも、心配なんすよ」
心配? 俺がか。
「御主人様は確かにお強いですけど、たったお一人で魔族全員と戦うのは心配なんです」
今まで心配なんてされたこと無かったが……仕方ないかな。
「わかった。同行を許そう」
俺の言葉に全員が気色を満面に表す。
「が──」
俺は、何も真っ直ぐデビルス大陸に向かうわけではない。
ネロ。
俺は、アイツの事を知らなければならない。
だからこそ──
「行く最中にダンジョンに寄る。そこで、一週間、魔法の調整をするつもりだ。そのダンジョンで強くなってもらう。が、俺が見て無理だと判断した場合。同行の話は無しだ」
「でも、どうやって強くなればいいのですか?」
サナが問うてくる。
「簡単だ。お前らは実践が足りない。まぁ、その年なら当たり前だがな。だから、こいつらと戦ってもらう」
ララの魂をぬいぐるみから出し、<アイテムボックス>から取り出した、体に定着させる。
「主様。やっと、ぬいぐるみから出してくれた!」
戦闘狂と聞いたので、生身の体でなく、ぬいぐるみに魂を定着させていたが、この際やむを得ない。
「ララとオールが相手となって、つきっきりで相手をしてもらう。そこで、己の技を磨け」
これでも、魔族と元魔王。実力は申し分ない。
「そして、更に条件と課題を付ける」
ただやっただけでは、ダメだ。
限界を超えた先に力がある。
「クレアは精霊防具と聖剣エクスカリバーの使用を不可」
チートと名高いこの二つは、魔法が意味をなさないからな。
「アマサは竜化の使用を不可」
アマサが竜化したところを見たことがないが、竜というのは生物上、頂点に君臨する最強種。
それだと、つまらないだろう。
「サナはエンチャントの使用を不可」
付加魔術師にとってエンチャントを封じると、打つ手がないが、サナは前衛だ。エンチャントを使わず、素の戦闘力を上げなければならない。
「ユウキは<摸倣>の使用を不可」
<摸倣>というのは素晴らしい能力だが、使用者が悪いとゴミになりうる。それは、学院選抜戦での通りだ。
「クルムは滅系統魔法のバリエーションを増やせ」
滅系統は珍しいが故に、既存の魔法が少ない。
手を増やすのは悪いことじゃないからな。
「以上が条件と課題だ。出来るよな?」




