王女救出
転移した先で俺を出迎えたのは、話に聞いたララとナチス。そして、サナだった。
十字架に貼り付けとされているサナは所々に傷があり、服は何箇所か破れていた。
「やっぱり。君が来たんだね!」
どうやら、俺が来ることは予想済みだったようだ。
「お前らは爺さん……いや、クロクルの仲間か?」
「仲間ではございません。表現的には配下が正しいでしょう」
元魔王を配下か……。
爺さん。あんたは何者なんだよ……。
まぁ、それはデビルス大陸に行けば分かるか。
今は、サナの救出が先だ。
「悪いが速攻でサナを返してもらうぞ」
「なら、私たちも役目を果たすため、貴方の相手になりましょう」
恐らく、あの十字架は魔法でできている。
条件発動式の魔法で二時間後にサナを殺すように設定しているってとこか。
なら、本当に速攻で終わらせないと。
「顕現せよ──《魔王装束》」
<武具顕現>で魔道・神楽も顕現させる。
「魔道・不知火」
先行は俺。
さぁ、不可視の剣筋にどう対応する?
「<空蝉>」
これが例の<空蝉>か。
なら──
「魔道・一閃」
<空蝉>は肉体的な技でなく、魔法だ。
さすがに元魔王といえども、そこには必ず欠陥がある。
そこを突くッ!
「それはさせないよ<常闇の盾>」
魔道・神楽が吸い込まれて……
ナチスに向けた剣先が、<常闇の盾>に移り変わる。
「面倒な魔法だ──<紅蓮爆裂>」
魔法で出来たものなら、そこに必ず許容量が存在する。
それを超えるまで、なんちゃって同時発動で魔法を連発する。
「やばっ! <常闇の盾>が壊れちゃう!」
よし、あとちょっと──ッ!
俺は急いで上体を反らす。
「避けられましたか……」
なんちゅう正確さだよ。
光系統初級魔法<光線>、弘法筆を選ばずとはよく言ったものだ。
一芸を極めた、一流の魔法使いなら初級魔法ですら脅威に変わる。
今ので、ララに間を取られた。
「クソ、めんどくさい、なッ!」
一歩を踏み出す。
瞬間に<威圧>を発動。元魔王といえども、瞬間的な<威圧>には動きが鈍くなる。
すかさず、俺は<火竜咆哮炎>を放つ。
火竜の顔面が姿を現し、その巨大な顎を開かれ、竜人族のブレスにも似た咆哮を放つ。
「クッ! 常闇のた──」
「させるかッ。<雷光の矢>」
光の矢が雷光が如く、駆け抜ける。
そして、それは<常闇の盾>を発動する為、突き出された掌に深く突き刺さった。
「アッ、グッ」
痛みを耐えたララの元に<火竜咆哮炎>が襲いかかる。
それは、ララに着弾し、燃え上がる。
「キャアァァァ!!」
激しい断末魔の叫びが耳を貫く。
炎が消え、姿が見えたのは焼死体となった無残なララだった。
「ララさん……」
ナチスがララに近づく。
「これで一体一だ」
「魔法の発動まで後、三十分ですか……」
以外にも抗うかと思ったナチスは<転移>を発動させる。
「もう、私たちの役目は終わりましたのでこれにて帰らせて──」
「おっと、ララの死体を渡すかよ──<奪取>」
俺の固有能力である<奪取>を発動させ、死体を俺の足元の置く。
あのまま、死体があちらの手にあれば復活する可能性があるからな。
「まぁ、いいでしょう。では」
そして、ナチスの姿が消えた。
よし、後は魔法陣破壊をして、サナを助けるか。
「《消え失せろ》」
サナはどうやら眠らされているようだ。
魔法陣破壊が発動する。
それにより、崖の先にあった十字架が崩壊を始めた。
空を仰げば、西の方角で太陽が沈んでいくのが見える。
そんな、沈みかけた夕日の優しい光に身を包みながら、思い出の崖の先で十字架の支配に解放され、落ちていくサナを優しく抱き迎えたのだった。




