今の限界
聖剣から流れ込んでくる。
魔力が、技が、今までの所有者たちの研鑽の全てが……。
これなら、いける。
この拘束を──斬る。
「あの小娘……」
気づかれた。
なら、迷っている場合じゃない。
やる。
やるんだ。
一歩前に──踏み出せッ!
「聖系統最上級剣術──<精霊の道標>」
精霊とは、草木、山川などの自然なるものに宿る生命体。
そして、微量ながらも空気にすら、精霊は宿る。
これは、精霊の力を借りて魔法の抜け道を見つけ、聖剣で一点突破する剣術。
「そこだッ!」
亀裂が入る。
そして──ビキッ! バリィィン!! と拘束が解ける。
「サナちゃんを返せっす!」
聖剣を力強く握る。
「ほう……このクロクルの前で戦意を保っている……」
もう魔力が残り少ない。
さっきの<精霊の道標>に聖剣の魔力と私の魔力の大半がなくなった。
これが、私の限界。
四肢に疲労が溜まっている。少し気を抜けば崩れ落ちる。
「小娘……お前、魔力と体の限界が来ててもなお立つか。面白い、わしが相手になろうか」
クロクルがこちらに歩みを進める。
疲労? 魔力切れ? それは今の限界であり、私の限界ではない。
限界なんて超えろ。
自らの足を気合という鞭で叩き、私は眼前の化物を倒そうと残りの魔力を高める。
「聖剣が過去の所有者たちの技を教えてくれる」
高めた魔力をエクスカリバーに纏わせる。
構えは、アルテガ剣術において、一番最初に叩き込まれる型。
腰を落とし、後方にへと体重をかけて聖剣エクスカリバーに集中させる。
「さてどんな技を打つか。見せてもらおうか! ──<時の暴力>」
また体が遅くなる。
だけど、あの人が考案したこの技はこんなもんなんかでは止まらない。
「アルテガ剣術奥ノ型──<天翔破月>ッ!!」
カエデ程の綺麗さでないが、私の残り最後の魔力全てが弧を描き、クロクルのもとにへと飛来する。
「──ッ! 小娘……なら、わしも敬意を払って全力で止めてやろう。己とわしの格の違いを見せてやる──火系統冥級魔法<火之災>」
炎? いや、あれは黒炎。地獄の炎とも呼ばれる炎だ。
触れれば焼き尽くすまで燃え続ける災厄の炎。
それが鳥の形となり、<天翔破月>と衝突する。
それは均衡することなく、<天翔破月>は燃え消えた。
これが、私の限界なんだ……でも、いつか、君の隣でこの道を一緒に歩きたいな。
「ふむ。じゃあ、わしは出迎えに行かなければ」
「あとのことはお任せ下さい」
消えゆく意識の中、会話が耳に入ってくる。
ごめんね、サナちゃん。
私も、う………………
──おい
この声……カエデ?
──聞こえるか?
あぁ、来てくれたんだ。
「おいッ!」
「へ?」
私の意識が覚醒する。
まだ、はっきりしない意識の中、おぼろげにカエデを見る。
彼の顔は今……え?
目と鼻の先にカエデの顔!?
「ようやく目覚めたか……」
「きゃああぁぁぁぁ!」
自分でも驚く程の声で後ずさる。
「驚きたいのはこっちだ。何があった?」
その言葉でようやく思考が通常にもどる。
急いで知らせなければ。
「サナちゃんが、サナちゃんが殺されるっす!」
私の言葉に彼は「やっぱりか……」と漏らす。
「どこに連れて行かれた?」
「わからないっす…」
ここで、私も辺りを見渡す。
辺りには、私たちの戦いの跡と──
「そうだ。アマサちゃんたちを解放してください!」
「もうそれはした。だが、長い時間、時系統で拘束されてたからか、目覚めが遅いんだ」
「そうっすか」
あれ? 倒れてから時間が経ち続けているってことは……
「サナちゃんはまだ生きてるんすか?」
「あぁ、それは間違いない。魔力の気配があるからな」
なら、問題は──
「「サナさん(ちゃん)の場所」」
え?
「サナさんの場所なら分かるわ」
コツコツと足音が聞こえてきたかと思えば、クルムさんが姿を現した。
「クルム。お前今までどこに?」
「ごめんなさい。国王の警護で……」
そうだったのか。
「クルムさん。サナちゃんの場所がわかったんっすか?」
「えぇ、というよりも、場所の位置が送られてきたのよ」
魔法でね。と。クルムさんは魔法術式を展開させた。
「どうやら私が黒だってばれちゃったから、こんなものを送ってきたのね」
魔法で表記された手紙?
「内容は王女様の公開処刑。場所は王城の近くにある『思い出の崖』よ」
「このことをトウタには?」
「伝えてないわ」
「処刑の時間と日時は?」
「今日、いまから二時間後」
そうか、とそれだけ聞いたカエデは魔法陣を展開させ始めた。
「じゃあ、俺が行ってくる。二時間もかけずに救出してきてやる」
それだったら──
「私も……」
「ダメだな」
「どうしてっすか?」
「お前らが頑張ったってのに俺だけってのもアレだろう? それにクレアにはアマサたちを見ていて欲しい」
食い下がろうとしたけれど、先ほどの格の違いを見せられた後だと、もう反抗する気が起きなかった。
「なら、お願いするっす」
「あぁ、任せろ」
「私はどうした方がいいかしら?」
「お前はトウタを頼む。もしかしたらサナに続いてって事があるからな」
「わかったわ」
カエデは魔法陣を発動する。
「じゃあ行ってくる」
そして、彼は転移をして姿を消した。
次回からカエデの一人称に戻ります。




