勇者として 2
三人称からのクレアの一人称です。
制御装置解除。
前もって制御の術式を己が身に発動し、解除するという魔法。
この魔法の利点を上げるのなら、それは魔力をも制御出来るという点だろう。
これにより、あえて過酷に身を投じ己を鍛える。もしくは、己の本気を隠し、手の内をあまり明かさないのが主な理由だ。
よって、制御装置解除は彼らにとってある種の必殺技と言っても過言でない。
必ず殺す為の技と言ったところか。
そんな、本気を出したとも言える彼らに、クレアが駆ける。
「<連続技・四連弾>ッ!」
四連の突きが、ナチスの心臓めがけて襲う。
「<空蝉>」
「その技、厄介っすね」
クレアが索敵を始める。
「しまっ──」
背後を取られていたクレア。
気づくのが遅れた。
「遅い──<光線>」
ただ一直線に発動する光線。
それを至近距離で打たれれば、死ぬことは火を見るより明らかである。
「クレア今行く!──摸倣<破壊>」
【縮地】からの摸倣した<破壊>
「助かったっす」
「礼には及ばないけど、体で返してくれるとありがたいなぁ」
「えっちな事じゃなければ……」
「そこふざけてないでしっかりしてください」
アマサの言葉でクレアは我に返る。
「まだまだ行くっす。ユウキちゃんも手伝って!」
「了解だよ」
ユウキ(魔眼モード)が、先を走る。
「剣聖の技が一つ──<居合・一閃>」
居合抜刀術。
妖刀・政宗を鞘に収め、高速で抜刀を繰り出し、不可視の一閃を放つ。
「これは早いですね──<光速>」
光の粒子がナチスを覆い、まるでエンチャントを施したが如く、高速で避ける。
いや、光速の方が正しいか。
だが、第二陣としてクレアが行く。
「アルテガ剣術──<虚空>」
クレアが来ることに対応して、ナチスが右手を突き出し魔法を発動しようとするが、そこにはクレアの姿がない。
そこにあるのは虚空。
しかして、クレアは一歩踏み込んだところでエクスカリバーで斬る。
「──っ! <空蝉>」
だが、後一歩のところでナチスに当たることは無かった。
「失敗したっす」
「私たちが次続きます!」
<空蝉>の反動かは知らないが、ナチスの動きが悪い。
そこを、アマサとサナが駆ける。
「王族武術──<陥没拳>」
だが、ララがそれを止める。
「<常闇の盾>」
サナの拳が常闇に吸い込まれる。
「火系統、竜人秘伝<鍵爪>」
炎をまとった爪が、ララの心臓を潰そうと突き出される。
「<闇穴>」
ララの闇系統最上級魔法<闇穴>、常闇の盾の攻撃を吸収するのと同じ要領で、人体を闇の力で引き寄せる魔法。
これにより、<鍵爪>が防がれる。
「ナチスに近づかせる訳ないじゃん」
やはり、<空蝉>には反動があると見てアマサたちが近づこうとしたその時、
「飽きたな……」
その言葉がこの空間を支配する。
「時間がかかりすぎだ。わしはそろそろ向かいたいんだが?」
「も、申しわ──」
「もう良い。わしがやる」
一歩踏み出す、それだけで圧がアマサたちを襲う。
「こんな者共に時間をかけるのもめんどくさい──<時の狭間>」
「な、なに……こ、れ」
体の自由が効かない。
呂律すらも回らないほどに動きが遅い。
「拘束」
そして、動かなくなった。
いや、動かせなくなった。
「申しわけございません。魔王様」
声が耳にはいる。だが、反応することは許されない。
「別に構わん。アイツの物なら、お前たちが苦戦するのもうなずける。それよりも、早く済ませるとしよう」
「はい」
なんのことかわからない。
しかし、その答えが分かるのは直ぐだった。
「さて、王女様の殺しを済ませよう」
時系統なる魔法で拘束されているサナの元にララが行く。
「直ぐ楽にしてあげるからね?」
サナだけ拘束が解け、直ぐにララによって手を拘束される。
その様子をクレアたちは、ただ黙って見ることしか出来なかった。
* * *
サナちゃんが連れて行かれる。
手を伸ばそうにも届かない。
サナちゃんが私たちの方を向いた。
その時見せたのは、笑顔だった。
まるで、今が最後みたいに、彼女は笑みを見せる。
そこには哀愁がにじみ出て、途端に私の心臓が締め付けられるように苦しくなった。
私は今なんで助けにいかないのだろうか。
なんで、助けられないのだろうか。
その答えはわかりきっている。
そう、ただ一つ。
──『弱い』からだ……
彼にあんな事言っておいて、この様だ。
つくづく自分が嫌になる。
彼からもらってばかりだ。
それを返せるかもしれないのに、己の未熟でそれを果たせない。
これほど惨めなことがあるだろうか。
これでは、彼に振り向いてもらうどころか、見てすらもらえない。
彼に釣り合うには『強さ』がいるのに……
視界の端に彼から貸してもらったモノが写る。
──聖剣エクスカリバー
私の先祖であるアルテガ・ウォーカーが所有していたとされる伝説の剣。
私にはやっぱり宝の持ち腐れだったのかな。
私はやっぱり…………
不意に昔の記憶が思い出される。
まだ、両親が健在だった頃、幼い私が問うたのだ。
『ねぇ、お母さん。わたしの性はなんで、うぉーかーっていうの?』
すると、母は笑顔でこう答えてくれた。
『それはね、私たちはいつだって歩き続けているからなんだよ』
『でも、いま、わたしとまっているよ?』
『んーん。今も歩いているわ。こうして、新しい知識を得たことでまた一歩踏み出したのだから』
『うーん。わからないなぁ。お父さんはわかるの?』
『もちろん。……うーん。まだ、クレアには早いか。でも、いつかわかるよ』
──ウォーカー……『歩き続ける者』……いつだって、成長という道を歩き続けるという意味さ。
思い出した。
もう、昔の記憶。
そうだ。私は歩き続けるんだ。
ウォーカー。歩き続ける者。
今は弱くたっていい。
これをバネに歩き続けるんだ。
そして、いつか強くなる。
成長に限界はないのだから……
キィィンという音が耳を貫く。
これは……?
エクスカリバーが光り輝く。
──あぁ、私は今、また一歩、前に踏み出せたのか。




