勇者として 1
「魔王様、ここは私どもが」
「なら、任せよう」
「ありがとうございます」
アマサたちが戦闘態勢を取る。
「全員に付加します! <筋力強化><脚力強化>──エンチャント」
サナのエンチャントが全員に施される。
「いくっすよ」
「「了解」」
先行はクレア。
「<連続技・四連弾>」
アルテガ剣術、連続技が一つ──四連弾。
前にカエデに言われた隙を最小限にした、クレアの出せる最高の四連弾。
「サナちゃんのエンチャントも相まって今の四連弾は見えない弾丸が如くお前らの心臓を貫くっす」
クレアが魔族に向かって放つ。
突きという動作を高速化した弾丸。
「ララ。お前の魔法で十分でしょう」
「言われなくてもあちきが行くよ!」
ララと呼ばれた女が一歩前に出て、魔法を放つ。
「<常闇の盾>」
そして出現した黒い、ただ黒い円状の物体に四連弾は吸い込まれる。
「なんっすか!? この魔法は」
「んふふ。常闇は全てを吸い込む永遠の闇……そんな闇の前ではどんな技も通用しない」
そんなララの後ろにはアマサが居た。
「死角を突いた攻撃なら闇は通用しない!」
「うん。いいね、その通りだ──結果は変わらないけどね」
「え? ──キャ!」
アマサの背中に魔法が着弾する。
「私を忘れてもらっては困る」
「さすが、遠距離ならナチスだぁ!」
ナチスの遠距離の光魔法。
「厄介……」
ユウキはそんな厄介なナチスを先にと仕掛ける。
「<刹那>」
軽く数回ジャンプを繰り返す。
そして、エンチャントのかかった突きを繰り出す。
「<空蝉>」
しかし、それがナチス本人に当たる事はなかった。
「これは光?」
妖刀・政宗が貫いたのは光の粒子。
「魔力を身代わりにして貴方の攻撃を躱したのですよ」
この攻防でアマサたちは知る。格の違いを、その魔法もさることながらどんな時でも、冷静な頭。その時、その時で最善の魔法を選択するというのが、潜ってきた死線の数を物語っている。
だが──
「今まで相手にしてきた人よりかは弱いっす」
どんな魔法も通用しない、物理ですらも通用しない、全系統の魔法を同時発動で最上級を連発してくる、理不尽なほどの強さと相手にした彼女たちにとって、格の違いなんてわかりきっている事だ。
「御主人様に比べれば」
「ん、大丈夫」
「皆さんをアシストします! <防御強化>──エンチャント」
三重のエンチャント。
加えて、
「顕現せよ、我思うままに」
付加魔術師のデメリットは後方支援型という戦闘に置いて、邪魔なポジション。しかし、サナは近接戦闘型として天才と語られていた。
その秘密としては、己にエンチャントを施し、相手にデバフの効果をエンチャントすることにある。
「束縛せよ、眼前に立つ敵に悪魔の悪戯を、祝福せよ、我が同胞に天使の加護を──<天使と悪魔の囁き>」
「これは?」
「体が重い」
魔族側にはデバフを、味方にはバフを、これこそが付加系統最上級魔法。
「これなら! アルテガ剣術<連続技・六蓮華>」
連続技が一つ、六蓮華。
頭、四肢、心臓、六つの点に蓮華が如く、赤き花を咲かせる。
「いけッ!」
「舐めるなぁ! <制御装置解除>」
ララの紫色の魔力が強制的に解放された事で、膨れ上がる闇がデバフを飲み込む。
「あんたたち、誇っていいよ。元でも魔王にコレを使わせた事を」
ララの魔力が先ほどの倍。
その事態に全員が息を呑むが、絶望はしない。
「ララ、早いですよ。それは」
「うるさいなぁ。そういうナチスももう解除してるじゃん」
「だから私が解除するから、貴方はまだ早いって言っているんです」
気づいて、ナチスを見ればこちらも魔力が倍に膨れ上がっていた。
「まぁいいじゃん。もう、この状態だと一瞬で終わるんだから」
「そうですね。ささっと終わらせましょう。魔王様を待たせる訳にも行きませんから」
言いながらナチスは後ろで佇む敬愛する魔王を見る。
「──もう遊びは終わりです」




