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魔族襲来


 時は遡る。


『アルムドア学院対クリムゾン学院の戦いは白熱していますッ! 今年のアルムドア学院は一味も二味も違いますが、クルム学院長一体どんな事をしたのでしょうか?』


『そうね、詳しくは言えないのだけど、ある特別講師を雇ったのよ』


『それはそれは……おっと、どうやら決着がついたようです! 勝者はアルムドア学院、2組です!! これでアルムドア学院は決勝への出場権を得ましたッ!』


 観衆の声が雄々しく響き渡る。


 その観客席、二階にて、クレアとサナはアルムドア学院の戦いを観戦していた。


「おぉすごいっすね。カエデの教えのお陰っすか?」

「えぇ、そうですね。カエデ様は本当に凄い方です」


 そして二人で笑い合う。

 彼女たちの仲は幼少の頃から続いているものだ。


 『堕ちた勇者』として、身寄りがいない幼き頃のクレアが一時期居候していたのだ。

 二人の仲は決して悪くは無かったが、当時クレアは持っていなかったモノを持っているサナを妬み、その罪悪感から、独り立ちした一五歳まで友人というよりかは、知人。もしかしたら知人よりも空気のように接していた。


 サナは金があり、家族がいて、人望もあった。


 だからこそ、クレアはそんなサナに羨ましいという感情を抱き、そしてそれはいつしか妬み、嫉み……嫉妬に変わった。


 だが、カエデがそんな自分から解放してくれた。


 だから、クレアは今、こうしてサナと笑っていられる。

 サナを友人として見る事が出来る。


(ありがとう……カエデ……)


 カエデからもらってばかりだ。

 私もいつしかもらったものを返せる日が来るのだろうか……。


「ん? どうかしましたか?」


 サナの言葉にクレアは我に返る。


(今の私に出来る事は、サナちゃんを守る事っす。しっかりしろぉ私!)


「なんにもないっすよ」

「……そう。なら、アルムドア学院が優勝すること祈って観戦しましょう」

「そうっすね」


 そして腰にある聖剣エクスカリバーを見る。


──これを生きて彼に返す。


 そう決意を改めた時だった。


 ドゴォォンッ! 爆音が耳を貫く。


「一体……」


 急いでクレアは<索敵(サーチ)>を発動。


「この気配は──魔族っ!」

「え!」


 魔族は三体。

 その中に、馬鹿でかい圧を一つ感じる。


「やばいっす!」

「これは何事ですか!?」


 丁度、アマサが現れる。


「いいところに! アマサちゃん、魔族の気配が三つ<索敵(サーチ)>で感知したっす。恐らく、私たちしか対抗は難しいかもしれないっす」

「分かりました。ユウキ、私たちは急いで避難に徹しましょう。人がいては戦いのしようがないですから」

「ん、了解」

「その必要はないわ!」


 勢いよく、会話に割り込んだのはツーレだった。


「私たちがその役目を買う。『影』を上手く使えばできるわ」

「では、お願いします! 私たちは魔族への対応を!」


 そしてアマサはいつかカエデが言っていたことを思い出す。


『どうして御主人様はそんなにお強いのでしょうか』

 

 魔族であるオールを倒した時に聞いたこと。

 すると、彼は笑って言った。


『俺は強くないよ』

『なら、その力はどうやって手に入れたのでしょうか?』

『別に欲しくて手に入れたわけでないよ。ただ、手にしなければ死ぬだけだ。戦いには「死ぬ」か「生きる」かの選択しかないんだ。生きるには、力が必要なんだよ』


 そう口にする彼は悲しげだった。

 だから、そんな彼から離れたくなかった。


 一人にしたくないと思った。


 今回の魔族の襲撃の標的は、サナかユウキのどちらかとカエデは言っていた。

 なら、我が主が大切としている彼女たちを死なすことは彼を一人にすること。


 もう二度と、あんな悲しげな顔をさせない。


 だから──


「私とクレアで守る」

「了解っす」


 ツーレのお陰で観客の避難も完了している。

 国王も完了したという<思念>も先ほど送られてきた。


 標的である二人を逃がす時間を作らなければ。


「サナとユウキも早く逃げて!」


──その時間は私たちが稼ぐッ!


「え?」


 だが、二人共逃げる気配を見せない。

 それどころか戦闘態勢をとっている。


「私たちも残ります」

「なんで……」

「ん、アマサたちだけを残すわけには行かない……」


 もう魔族がそこにまできている。

 今更背を向けて逃げたところで遅い。


「……もう知りませんよ?」

「大丈夫です」

「任せて」

「私たちなら余裕っすよ!」


 全員で生きて、カエデのもとに帰る。

 だから、コイツらに勝つ。


「おぉ。殺る気だね」

「いかがしましょうか? 魔王様」


 魔族は男が一人と女が一人。

 そして、クレアが感じた化物──


「目的は王女様だ。他は半殺しでいいだろう」

「「了解しました」」


──来るッ!


 そう全員が感じたところで、戦闘が始まった。

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