魔族VS元魔王 2
「さぁ、小手調べだ。喰らいな──<獅子炎弾>!」
カイトの魔法が先手を打つ。
獅子の顔面にも似た炎弾が数百発と俺めがけて飛来してくる。
「……<障壁>」
ドガァァンッ! 五重にも重ねた障壁が、あまりの衝撃にヒビが入る。
チッ! これで小手調べかただの魔族じゃねぇな。
これじゃあ、魔法陣破壊も破壊できねぇじゃねぇか。
「あれ? 強いって聞いていたけどこれは余裕かな?」
ソアラの挑発。
調子に乗るなよ?
「<武具顕現>」
魔道・神楽を顕現し、獅子炎弾を切り裂く。
「ソアラさんが挑発するから、敵が武器を出したじゃないですか!?」
「ごめん。ライ」
敵を目の前にしてこの余裕。
イラつくな──<転移>
「おい! お前らッ!」
カイトが俺の転移に気づいたがもう遅い。
「魔道・一閃」
前、説明した魔法の欠点に向かって放ち、切り裂く剣技。
これは、人体にも同じ作用を施す。
すなわち、一瞬で死にへと誘う――のだが、
「チッ! 炎が邪魔して!」
「あっぶねぇ──<炎の鎧>」
カイトが咄嗟に魔法を発動したか。
「お前ら調子乗り過ぎ!」
「「ごめん(なさい)」」
お前もだよ! 俺の目の前で説教してんじゃねぇ!
「魔道・飛翔!」
「<炎の壁>」
斬撃が炎に包み込まれる。
厄介な火系統の魔法だな。
一流の魔法使いは、一芸を極める。
つまり、カイトは火系統であれば俺よりも理解がある。
ならば──
「<水流五月雨>」
水系統なら──!
「残念だったわね──<海竜の盾>」
なら、木系統だ。
「<彗星>」
海竜の盾が消えたところに<彗星>を放つ。
「私が居ます──<土竜の土壁>」
おいおいマジかよ。
三人、全員一流ってよ。
はぁ、めんどくせぇ。
なら下手に魔法を使うとまずいな。
「《状態変化・剣聖》」
魔王装束が変化する。
それは、漆黒の軍服にへと……
「それは報告で聞いてないな」
当たり前だ。
このモードを見たのはクルムしか生きてないし、
クルムに言うなって言っているからな。
「ということは……やはり、あの魔女は黒ですね」
これで、クルムを通しての魔族の情報は潰えたが、ライの口振りから察するに疑っていたようだな。
まぁ、あんまり関係ない。ここで、情報が手に入るのだから。
「魔道の真髄を見せようか──魔道・不知火」
魔道・神楽に炎が纏い、揺らめく。
そんな、炎の揺らめきが如く、予測できない太刀筋でカイトたちを襲う。
「チッ、めんどくさい! ──<魔炎纏い>」
カイトの腕に炎が纏われる。
その腕で、俺の魔道・神楽の刃を防ごうとしたが──
「炎は消える……」
刃が消え、カイトの腕を通過する。
そして、出現する。
「カイトさん! ──土竜の土か──」
「魔道・一閃」
焦ったばかりに魔法に欠点がある。
俺はカイトを斬る前に、横薙ぎで一閃を放つ。
土壁を切り崩したところで、カイトの方を見ればソアラが救出していた。
「なかなか、良いコンビネーションだな」
「そんなお前は化物かよ。これでも元魔王が三人揃ってんだぜ?」
は?
「元魔王がお前らのような雑魚なわけあるか」
魔王とは強者に与えられる称号だぞ?
「これは手厳しいですね。まぁ、魔王の証たる魔法がないのでそれもそうですけど」
なんだそれ?
「魔王の証たる魔法だと?」
「え? しらなかったのかしら。貴方も魔王だったって聞いてるから知ってるんだと思っていたんだけど?」
おいおい、初耳だぞ。
そんなもん俺にない。
俺が、魔王と呼ばれた所以であった魔王装束や同時発動は、俺が作った魔法と技法である。
当時の他の魔王は全員が全員、各系統ごとの極みの魔法をもって魔王と恐れられていたから──
「もしかして、極みの魔法が証の魔法なのか?」
「そうよ」
だとしたら──
「我の系統はなんだ?」
俺は全ての系統ができ、なおかつ魔法の創造まで出来る。
「お前の系統は<魔>だ」
あそこにいる三人ではない、何処か聞き覚えのある声が偽造世界に響き渡る。
しかし、待て。俺の偽造世界に侵入だと?
固有能力である『侵入』を所持しているロンの声でないし、第一、詠唱までしている完璧な偽造世界だ。
それに無理やり侵入してくるなんて、俺よりも魔力や魔法技法が高くないと──
「相変わらず、お前の魔法はお粗末だな」
カツカツと足音が鼓膜を振動させる。
カッ、という音を最後にソイツは歩みを止め、こちらに視線を向けた。
「爺さん……」
「久しぶりだなエヴァン、いや今はカエデかな?」
そこに立つのは、前世で魔王と呼ばれる前、売られた俺を買った魔法使いである――
名を──クロクル・ファーストだった……
覚えてますか? アルテガと語らった時に出てきた独り身の爺さんを……
アイツですよ。




