クエスト
数分後――
集合場所である王都の入口に足を向ける。
「こっちですカエデさぁん!」
王都の入口で手を振るラナに、俺も返事をする。
「分かった」
見れば、盾をかつぐシードの姿が見える。良かった、どうやら盾はあったようだ。
その後ろにはエレンも手を振っている。
「悪い遅れたか?」
「いや、俺らが早かっただけだ。行こうぜ」
衛兵に会釈し、王都を出る。王都の出入口は二箇所あり、一箇所はここ南門である。もう一つは俺が最初に入ってきた門で名を北門。基本的に王城や森に行くために使用する門だ。
南門を抜けると、草原が広がっている。所々に花が咲き、実にのどかな場所である。
「ウルフは基本的に森に多く生息しているからな、そして今回俺らが採集する薬草、千病草はクリアの森の奥にある滝に生えているという情報があったからな。そこ目指して頑張ろう!」
パーティリーダーであるエレンが今回の目的を口にしながら歩みを進める。
確か、パーティメンバーの一人が必要としていた薬草と聞いていたが、そいつは何に使うのだろうか? 千病草を使うとなると結構な重病のはずだ。と言っても俺の治癒魔法一つで回復出来るほどだが
「ああ、アイツは、病人の妹がいてな。そいつが重病らしく名前はなんだっけな·····あっ、そうだ。確かナノ病とか言う奴だな」
気になったのでエレンに聞けば、ナノ病か·····。聞いた事が無いな。まぁ、いいか。
ようやく見えたクリアの森の入口により俺の思考はそこで途切れる。
「グルルッ!」
「ワン!」
入って数分でウルフとエンカウントするとはさすがだな。
「おりゃあ!」
「守るでござる!」
ウルフの弱点は火だ。ラナが魔法杖で魔法陣を描き、その間を守るようにエレンとシードがウルフの相手をする。
ほぉ、凄いな。実に良い。
連携もしっかりと取れている。俺が前述した通り、戦闘中では魔法陣を描く暇がない。だからこそベテランの魔法使いというのは命懸けで詠唱省略を覚えるのだ。しかし、若い時はどうしても杖を頼らないと魔法を扱えない。だからこそのパーティという訳だ。そこら辺の事はさすがだと言える。
「俺も黙っているだけではなく、ラナの手伝いをしなくてはな――<火球>」
手加減をしながら、火系統初級魔法ファイヤーボールを使用する。
俺の突き出した右手から野球ボールぐらいの大きさのファイヤーボールが出現し、ウルフの脳天を貫いていく
「出来ました! 偉大なる火よ、今此処に火竜の咆哮が如く放たれたまえ――<火炎の息>」
広範囲に火炎が広がり、瞬く間に五匹のウルフの討伐が完了した。
見ると、エレンたちは互いにハイタッチを交わし、ウルフの討伐を喜んでいた。ふふっ、仲間とはいいものだな。
「カエデさんもッ!」
「そうだな」
「そうでござる」
外れの木でそんな光景を見ていると三人がこっちに駆け寄ってきた。
そして、俺もハイタッチを交わす。
「お前らの連携さすがだよ」
ニッと笑顔を浮かべる三人に、俺も無意識に笑みを浮かべていた。
やっぱり、仲間とはいいものだな。