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元魔王と勇者 2


 アラン草原を歩く。

  クレアと二人で。


 魔王と呼ばれた時代であれば、考えられないことだ。

 元とはいえ魔王、世界を統べる力を保有する強者と片や、そんな魔王から世界を取り戻す勇者。


 この時代では、魔王はいるものの決戦は二年後、しかもまだ国民にその事実を告げていない。

  勇者の一族がこの世に何人もいるのに関わらず、人は新しき勇者を異世界(ちきゅう)から呼び出す。


 故に勇者の一族と言えどもその者に必ずしも『勇者』という職業とは限らない。

 『堕ちた勇者』とは呼び名であって彼女の職業はまた別であろう。

 しかし、だ。あのアルテガの一族とこうして共に歩くというのはなかなかに新鮮で、俺は嬉しさが込み上げてくる。


 あの時語らったアルテガがいなくとも、彼が守って死んだ血はここに受け継がれているのだと実感できる。

 それが嬉しかった。


「ん? 嬉しそうっすね?」


 おっと知らぬ間に笑みを浮かべていたようだ。

 すると、クレアは意地の悪い笑みを浮かべ言う。


「もしかして私と一緒にクエストをすることが嬉しいんっすか?」

「·····あぁ、嬉しい」


 ブヒュッと音が聞こえてきたと思えばクレアが頬を紅潮させている。

 熱でもあるのか?


「おい、大丈夫か?」

「·····大丈夫じゃないっすよ。カエデのばーか」


 む!? 聞き捨てならないな。


「どこが馬鹿だ!」

「全てっすよ。この鈍感馬鹿魔王」



  ああ、楽しい。

  アルテガと語らった短い日々を思い出す。

 




「ほら着いたぞ?」

「クリアの森なんて久々っすね」


  あの後おちょくりあったり、笑いあったりしてここ『クリアの森』まで到着した。

 ここではあまり魔法を使わないほうがいいな。木々がなぎ倒れても面倒だ。


「<武具権限>」


 そして俺は魔道・神楽を取り出す。


「それがカエデのっすか?」

「まぁそうだな」


  あっ、コイツみて思い出した。

 どうするかな。聖剣エクスカリバー返そうかな。


「なぁエクスカリバーのことなんだが」

「·····あぁ聖剣っすか」


  あれ、あんまり気に止めてないな。

 今も思い出したかのような口ぶりだったし。


「エクスカリバーはアルテガから拝借したもんなんでな。そろそろ持ち主に返すべきかと」

「·····いや、いいっす」


 ·····驚いたな。

 人間は力に対する欲が強いんだが·····。


()()私の力ではエクスカリバーは宝の持ち腐れっす。精霊宝具もそうっすが、今は封印してるんっすよ」


 ·····そう言えばあの精霊宝具を身につけてない。


「今まで精霊宝具に頼った戦い方でした。なので、私自身を強くしなければならないんだってカエデと戦った時思って·····」


 やはり、コイツは強いな。

 己の足りない部分を認め、それを克服するために甘さを捨てる。


 俺の好きな考えだ。


「そうか。なら、一人前と俺に認めさせろ」

「·····」

「お前自身の力を俺に見せろ。認めさせろ。そうすればエクスカリバーも使いこなせるだろうよ」

「·····はい!」


 コイツはどんどん強くなるだろう。

 魔眼状態のユウキといい勝負するんじゃないか。アマサとも手合わせしてもらいたい。

 だが·····今のままでは足りないだろう。


 ユウキもアマサも俺が直々に見てやってるんだ。

 なら、フェアじゃないとな。


「よし、じゃあこのクエスト中にお前を強くしてやるよ」

「·····それじゃあ先輩面できないじゃいっすか」

「戦闘においては俺が大先輩だ」


 さて、クレアを育てるとしますか。


 ◆


「ちょ、ちょっと。これでどうやって戦えばいいんすっか!?」


 クレアの怒鳴り声が響き渡る。

 今のアイツは鎧も武器もなんも装備してない。


「いいか。お前に足りないのは技術だ」


  魔法使いには魔法使いの訓練があり、剣士には剣士なりの訓練があるのだ。


「落ち着いて魔力をコントロールしろ。常に身体強化を行え、相手の動きを見極めろ」

「ひぃぃ」

「限界を超えた先に力がある。ほれ、ゴブリンが来たぞ」


 ゴブリンはゴキブリと同じで一匹見つけたら十匹いると思えが鉄則である。

 これは共通の常識なのだが、クエスト内容は五匹の討伐となっている。

 何故かと言えばそこに危険があるからだ。いかにゴブリンと言えども数が揃えば厄介度は増す。そんなゴブリン集団に真正面から突っ込めば死ぬ。だから冒険者ギルドは実力に伴ったクエストを出す。


 さて、そんな危険が潜んでるゴブリンとの戦いだが、クレアには()()()から向かわせた。

 あえて、一番危険な方法を取らせたのだ。いざとなれば魔道・神楽で助けるし、なによりこれが一番手っ取り早い。


「シュッ」


 クレアはぶつくさ文句を言いつつも拳をゴブリンに放つ。

 今回のゴブリンの総数は七匹。運がいいな。


「ギヒッ!」

「きゃっ」


 後ろからの不意をついた攻撃にクレアの足元が崩れる。

 そこをチャンスとゴブリンが襲う。


 まぁ、及第点かな。


「天翔破月」


  孤を描いた斬撃がゴブリンを真っ二つに斬る。


「へっ?」


 諦めて目を瞑っていたクレアは何事かと目を開く。


「正面からの戦闘ではお前は有利に攻撃してたが、集団戦となると不意をつかれる。辺りの索敵も怠るなよ?」

「·····はい」


 とりあえずこれでゴブリンは完了だから、次はウルフだな。

  時間も有り余ってるし、余分にモンスターを狩るとしようか。


「喜べクレア。これから休憩無しだ」

「ふぇぇ、ついてこなければよかったす·····」


 わざとらしくガックリと肩を落とすクレアに苦笑しながら、俺らはモンスター狩りもといクレアの修行を続行したのだった。

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