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呪いと魔眼の真実

今回いつもより長いです。


「う、んっぅうん」


 ·····ようやくお目覚めか。


「こ、ここは?」

「ここは学院だ、クルム」

「えっ?」


 驚いてクルムはこちらを見る。


「安心しな。生徒たちには帰らせた。もちろんお前が魔族を呼んだことは言ってない」

「·····」


 まだ脳の整理が追い付いてないか?


「いや、私は死んだはずじゃあ」

「<蘇生>だよ」

「あっ·····」


 ようやく頭が追いついてきたか。

 魔族の襲撃から五時間たった。今じゃあもうすっかり夜だ。

 ちなみに、ここは保険室だ。クルムは現在ここのベッドにて寝ている状態である。


「さて、話してもらおうか?」

「わ、分かってるわよ·····」


 そして彼女は重い口を開いた。



 私が彼女――ユウキと出会ったのは随分昔。

 私は当時、滅系統魔法すら覚えていない時だった。


 小さな貧しい農村の子であったユウキは()()()をした五歳あたりの少女であった。


 村が貧しく食糧難に見舞われる彼女に、私はきまぐれで手を差し伸べた。

  それはもしかしたら同じ髪の色をしていたからかもしれない。何故か親近感が湧いたの。


 その時、私は別段することもなかったので近くに拠点を構えて、なにかと村やユウキに手を差し伸べ続けた。


  最初はきまぐれだったのに、いつしか私はその村が好きになっていった。

 貧しくても互いに手を取り合って、辛い時だからこそ互いが互いを大切にしあって本当に良い村だったの。


 私は、そんな村人たちに魔法の使い方や、モンスターとの戦い方を教えた。

 村を救いたくて、助けたくて、滅ぼしたくなくて·····。


 ある日私は村人たちの願いである薬草を取りに行くことになった。

 どうやらユウキが病を患ったようで、千病草を少し遠くの病まで取りに行ったのだ。


 それが間違いだと気づいたのは帰ってからだった。


「どういう、こと·····?」


 帰った私に待ち受けていたのは焼けた村だった。

 いや、違う燃えていた村だった。焼けていたのは村人だった。


 焼死体となった村人たちを見て私は後悔した。私がついていながら目を離した隙にこんなことに、って·····。


 私は急いで炎の中に潜った。

 ユウキは確か離れの家に匿われていたはず。


 もしかしたら·····!!


「えっ?」


 離れの家に向かえばそこに居たのは魔族だった。

 彼の腕の中には気を失ったユウキがいた。


「その手を離せぇ!」


 怒りで我を忘れて魔法を連発し続けた。

  どれほど放っていただろうか。気づけば私の魔法で焼け野原となった離れの家。


「そ、そうだ。ユウキ――!」


 魔族の死体を蹴り飛ばし、私はユウキを抱き抱えた。

 良かった。まだ生きてる。


  恐らく無意識に私が外していたのだろう。

  この時まではそう思っていた。


 そう、この時までは――


  違和感に気づいたのは村が燃えてから数日後のことだった。

 魔法で外傷を全て治し、私は村の近くにある拠点にいた。もちろん私の家も焼かれていたけど、直ぐに直して住みやすくした。


「目覚めがおそい?」


 魔法で回復したら、だいたいは一日で目が覚める。

 しかし、一向に目が覚める気配がない。


 おかしいと思い、私は彼女の体を調べた。

  すると、原因はすぐ分かった。


「魔眼·····」


 ユウキの閉じられた右目を開いた瞬間、すぐ分かった。

  彼女の元の瞳は黒。しかし、右目だけは違った。その色は金色だったのだ。


  恐らく魔族の手により魔眼が右目に住み着いたのだろう。


  魔眼とは、そのままの意味で魔の眼である。

 しかし、ただの眼だと思えばそうでは無い。魔眼とは魔族の一種であるのだ。


  私も詳しい話は知らないが、確か寄生する一族だったはずだ。

 相手の目を喰らい、そこに寄生する厄介な一族。結構前に魔王の手によりだいたいの種が滅ぼされたという話だったが、まさか生き残りがいたとは。


「ま、まずい。完全にユウキと適合したら」


 適合したら寄生が完全となり、魔眼が寄生者から離れることは無くなる。

 そして、その心配が現実のものとなる。


  パチっとユウキの目が開かれる。


「だ、大丈夫かしら?」

「·····クルム?」


 良かった。

 彼女の人格は保たれているのね。


  しかし、私の予想を超える出来事が起きた。

  リハビリと称し、軽く魔法の授業をしていた時だった。


「ひ、ヒヒヒ、うひひ!」


 彼女のもう一つの人格が姿を現したのだ。

 そして、それこそが魔眼だった。


「どぉう? ビックリしたぁ?」


 狂気地味た目をこちらに向ける。

 それだけで私に絶望と後悔が押し寄せてきた。


 それは、魔眼という存在に恐怖したからではない。

 それは、私がユウキを壊してしまったからだった。私がもし村を訪れなければ、もしかしたらユウキには別の道があったかもしれない。


 それが私の心に渦巻く。

 ユウキに寄生した魔眼の能力は『模倣(コピー)


  そして、それを使用する度に魔眼にへと人格を転じさせた。

 どうすれば、彼女を救えるだろう。


 それだけを考え続けた。


 魔眼のせいかユウキの寿命という概念が人よりも異なることが判明した。

 その都度に姿を変えさせ、私は魔眼の対処をずっと考え続けた。探し続けた。


 そんな時だった。


 魔族と出会ったのは――


  ◆


「それからよ。私は魔眼の対処法の代わりに呪いを受けて、魔族側についたの」

「そうか」


 それにしても魔眼か。

 そう言えば昔に俺に寄生しに来た奴と共に滅ぼしたと思っていたがな。


 まさか、生き残りがいたとはな。


「じゃあ何故、ユウキに魔眼を使わせた?」

「魔族が言うには使い続ければ、魔眼の根が弱っていくらしいわ」


 なんだそのふざけた対処法は。


「なんで、そんなもんを信じた?」

「あなたに何がわかるの!? 私だって嘘だと思った。彼女が魔眼を使う度に人格を転じさせて·····でも! でも、それしか知らない、分からない。他になにを信じればいいの? 私にはそれしかすがるものがないのに·····」


 ベッドからはね起きてクルムは俺の胸に拳を打ち続ける。

 ドン、ドンと叩かれる度に、罪悪感が浮かんでくる。


「じゃああなたが魔眼の対処法を知ってるっていうの?」

「·····いや」

「じゃあ私に何も言えないじゃない! 私の人生はあの子のもの。彼女の人生を狂わしたのは私だから·····」


 拳の力が弱くなる。

  そしてついにはクルムはペタと床に崩れ落ちた。


「俺には魔眼の対処法は知らん。だが、魔眼の人格もユウキ本人の人格も全てひっくるめてユウキなんじゃないか? それにお前だって魔族に言いなりにされるのが嫌だったんだろ? お前は魔族を倒すために俺の講師としての働きを許したんだろ?」


 彼女の思い描いたシナリオは、魔族の殲滅。

 そのためには強者が必要だった。

 

  魔族に呪いをかけられたクルムでは魔族の殲滅は不可能。

 なら、殲滅を任せられる人にし向ければいい。そうすれば必然と殲滅まで至る。


 クルムも辛かったんだろう。

  魔眼の元凶である魔族に呪いを受けてまでユウキを守ろうとしたのだ。プライドも全て捨てたが、魔族への憎しみだけは捨てられなかったのだろう。


 俺が聞けば彼女は力なく頷いた。


「魔族の殲滅までは出来るか分からんが、ある程度のことは手伝ってやろう」


 それが俺に出来る彼女にしてやれることだろう。

 クルムがバッと顔を上げる。


「さて、その話の前に、だ。お前全裸になれ」

「·····」


 バシッ! っと強烈な痛みが俺の頬を襲った。


「·····変態」

「なんだァ、まさか生娘じゃあるめぇし照れることはないだろう?」


  クルムの頬が赤く染まっていく。

 おいおい、魔女なクセにまだなのか。


「しょうがないじゃない。今までユウキのために頑張って来たんだから、そんなものに現を抜かす訳にも行かないわ」


 はぁ、そうなのか。

 しかし、呪いの進行を見るためには裸を見るしかないだろう。

 お前が気を失っている時に見ても良かったが、俺も男だ。そんなことはしてはならないと見逃してやったのに。


「呪いの進行を見るんだよ! せめて背中だけでも見せろ」

「·····」


 いや、上目遣いで目元をうるうるさせても無駄だからな。


「··········はい」


 ようやく見せてくれたか。

  病衣を少しはだけさせて、彼女は素肌を見せる。


 月明かりに照らせれて彼女の肌は鮮明に写し出された。


「結構侵食が続いてんな」


  呪いの侵食が完璧となると、呪いの効果が完全に発動される。

 そうなるとまずい。


 ――が、ここまで進んでいると<解呪(ディスペル)>も難しい。

 いや、もう無理か。

 

  <解呪(ディスペル)>の効果が現れるのは呪われてから三日までだ。

  それはいかに魔法陣の改変をした所で変動しない。


  何故ならば三日以降は内部にまで呪いが侵食していくからだ。

  <解呪(ディスペル)>は肌にある痣しか無理なのだ。


 そして、これはクルムも承知のことだったのだろう。


「はぁ、お前はもう少し自分の身を大切にしろよ」

「ユウキのためなら背に腹はかえられないでしょ?」


 コイツどんだけユウキのことを大切にしてんだよ。

 しかし、その気持ちは分からなくはない。


  前世では全くといって感じたことはないが、俺もアマサやラナたちに出会って大切にしたいと思っている。

 だからこそ俺はアマサに今の今まで正体を隠し続けていたのだ。


 前世みたいに避けられるのが怖くて·····。

 まぁ、もう魔王ってことも言っちまったし、サナも俺が魔王だってことを国王(トウタ)に伝えちまっただろう。


  ラナには悪いが七魔武闘祭には出れそうにないかな。

  ·····おっといかん。クルムの方を先に解決せねばな。


「<解呪(ディスペル)>」


 肌にあった痣は瞬く間に消えていく。


「もしかして呪いを解呪したの?」

「いや、表面上は終わったが内部にまで侵食された呪いは解くことは不可能だ」


  俺の言葉にクルムはやっぱりか、と肩を落とす。

 おい、解くことは不可能なだけだからな?


「クルムこっち向け」

「なに? ――っ!」


 まだなんかあるの? と振り向いたクルムに俺は顔を接近させ

 唇を重ねた。


 抵抗するクルムの腕をつかみ、俺は容赦なく舌を侵入させる。

  しばらくすればクルムも抵抗をやめ、もうなされるがままとなった。


 ·····ふぅ


 そして俺は静かに唇を離した。

 互いの舌から銀色の糸が引かれ、切れる。


「ちょ、ちょっと?」


 クルムが抗議の声を上げる。

 もしかして·····


「お前初めてか?」

「·····」


 コクっと顔を真っ赤にして頷く。

 それは悪いことをしてしまった。というか、さっきの下りで察して上げればよかったか?

 いや、でもこれしか無理だもんな。


「な、何をしたの?」

「いや、解呪が無理だから呪いを書き換えた」

「·····はぁ?」


 内部まで侵入した呪いは解呪不可能。

 なら、内部まで侵入した呪いを書き換えればいい。

 つまり――


「お前の絶対服従かなんかは知らないが、魔族がお前に設定したものが俺になったってだけだ」

「·····へっ?」

「だから、お前はどんな呪いをかけられた?」

「ふ、服従·····」

「なら、その服従の相手が魔族じゃなくて俺になったんだ」


 驚きにまみれた顔をしているな。


「呪いの書き換えは何かが呪いをかけられた者の内部に入ってなきゃ無理だ。それは当たり前だよな?」


 俺の問いに黙って頷くクルム。


「だから俺はお前とキスして舌を入れたんだ」


 ようやく合点がいったか。


「だ、だが、他にもやり方はあったでしょう?」

「後、他には·····性行為しかないが?」


 そして俺の言葉にまたもや顔が赤くなるクルム。

 学院長だから慣れてるかと思えば、生娘とかどこのエロゲだよ。


「で? キスとそっち、どっちが良かった?」

「き、キス·····」


 よし、これでクルムの件は終わりだな。


「とりあえずこれで呪いは大丈夫だ。ところでクルム、お前は――」

「もう少し寝とくわ!」


  言い終わる前に布団に潜っちまった。

  まぁ、いいか。


 俺はクルムの頭を撫でて魔法を発動。

 魔族がクルムに近づけないように<聖域>という防御系統と聖系統の混合魔法を発動させておく。


  これで大丈夫だろう。


 クルムも眠っちまったしな。

 

 じゃあ行こうか。


「主、準備は整っております」


 保健室を出ればオールが待機していた。


「分かった。じゃあ始めようか」


 魔族への拷問を·····。

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