学院選抜戦
俺が特別講師となって一ヶ月が経つ。
合同戦闘訓練で1組を破った2組は、七魔武闘祭に向けた学院選抜戦の優勝候補とまで囁かれるようになった。
さて、今日はそんな学院選抜戦の当日である。
学院選抜戦のルールとしては合同戦闘訓練の時とさほど変わらない。
違いと言えば審判がちゃんとした人がやるという事だ。(ラナがちゃんとしてないとは言ってない)
場所はもちろん魔法闘技場。
学院選抜戦は七魔武闘祭の代表クラスを決める戦いだが、参加するかどうかは担任次第である。
よって全校クラスが参加する訳ではなく、今回の参加クラスは1組、2組、4組、7組である。
魔法学院のクラス制度は地球とは違い学年はない。が、その代わりクラス数が多い。
20クラス以上あるとかないとか、そんな中で4クラスしか出場しないのだ。
しかし理由は分かる。
幾ら、俺らが1組を破ったとしても彼らはサナやアマサを戦闘に参加させることはなかった。それに加えて『正体不明』の存在。勝ち目がないとでも思っているのだろう。
やはりこの時代はチキンが多い。
試さなければわからんだろうに·····。
だが、他の心配をしている暇はない。
これから第一試合である2組対7組が始まるのだから。
そんな俺は現在観客席にいる。
「お前らなら勝てるぞ!」
「·····」
俺が応援すれば、闘技場の真ん中に立つラナがジト目を向けてくる。
まぁ、俺ばかりが戦ってもしょうがないだろう。たまにはラナの力を他のクラスに見せつけることも大切だ。
ラナにはある程度の策とアドバイスはしてある。
2組の連中にも言うべきことは言った。
『さて、学院選抜戦がいよいよ始まろうとしています! 第一試合は、あの2組対7組の戦いです!!』
女生徒のアナウンスが響き渡る。
観客席に座る生徒たちもそのアナウンスに合わせて大いに盛り上がる。
『紹介が遅れましたぁ! 私今回実況を努めさせていただきます、ハルと申します!』
なかなか元気の良い生徒だな。
『さて、あの1組を破った注目の高い2組ですが、今回の大将は噂の講師ではなく、ラナ先生が務めるようです!』
噂になってたのか。知らんかった。
『ではでは、早速始めましょう! 先生たちお願いします!』
ハルの声のもと先生たちが偽造世界を構築していく。
瞬く間にラナと2組たちは偽造世界に入っていった。
『では第一試合開始!!』
ハルの言葉で第一試合が始まった。
今回のフィールドは森のようだ。
2組が有利なフィールドだな。
今回の作戦は二人体制ではなく、ツーレを司令塔とした戦術となっている。
<思念>はメリー級の解析をもってしないと乗っ取りは不可能だ。いや、メリーでさえも難しい。
よってツーレが司令塔だとバレなければ、危なげなく勝てる予想をしている。
7組の特徴は圧倒的な遠距離魔法である。
だが、遠距離魔法が7組だけのものかと言えばそうじゃない。フィールドが森なら2組でも遠距離魔法が使えるいや、ワンサイドゲームと化す。
それが、<遠見>を利用した超遠距離攻撃。
草木が生い茂る森ではどこから撃たれたか全くもって検討がつかない。
見ると既にワンサイドゲームと化している。
『おっと7組の生徒たちがどんどんとやられていくぅ!』
「ぐわっ」
「ど、どこから!?」
「きゃあっ!」
7組の悲鳴じみた声が響き渡る。
観客席に座る生徒たちがザワつく。
彼らは目の前で起こっている出来事が分からないのだろう。
クラス対抗戦において、一番大切なのはコミュニケーションである。味方に敵の存在を教えるや、戦況の報告は重要だ。
そして、今回取った作戦はこうだ。
ツーレはラナの近くで待機。
ラナは<遠見>を発動させ7組の位置を確認。ツーレはラナから位置を教えてもらい、それを全員に<思念>で伝達。
伝達された者は『影』の協力の元実行する。
とまぁツーレに教えた作戦がこれである。
そしてそれは滞りなく実行された。
勝敗は大将の敗北か、兵つまり生徒たちの全滅。もしくは降参である。
今回は大将はあえて狙わず、生徒たちの全滅に変更した。
その方が相手を絶望に陥れることができるからだ。
一人、また一人と味方が減っていくのは心にくるものだからな。
そのせいか簡単に勝敗が決した。
勝者は2組。まぁ今回は相手が良かったとしか言いようがないがよく頑張った。
ラナがこれで教師として自信をもつきっかけになってくれればと思う。
そんな時俺の視界の端に人影が写った。
「クルムか」
「あら、よく分かったわね」
そしてクルムは隣に腰を下ろす。
「てっきり上の方で観戦してたと思ったよ」
「まぁ、どこで観戦しようが勝手でしょ?」
「·····そんなんだがな」
クルムには聞きたいことが沢山あるが、今はよしておこう。
ただ一つだけ気になることがある。
「なぁ、一ついいか?」
「なにかしら?」
「お前は何を企んでいる?」
本当はユウキについて知りたかったが、教えてくれないだろう。
なのでユウキのことは本人に聞くとして、クルムの狙いが分からない。
「ふふっ、もうじき分かるかもしれないわよ?」
ニコリと笑みを浮かべるクルム。
「そうか」
どうやら無駄そうだな、と席を離れようとした時、俺はクルムの身体にあるものを見つけた。
ぴっちりと着こなされたスーツの裾から覗く、彼女の腕に微かな痣があったのだ。
そして俺はその正体を知っている。
それは――『呪い』だった。




