勝者の名は·····
今回、三人称です
時を少し遡る。
「『影』のお陰で押せてる。先生のアドバイス通りに」
やや興奮気味にツーレが戦況をみてそう呟く。
そう、彼女の言った通り、今この戦況で不利なのは1組の方なのだ。
前衛に置かれた生徒たちの魔法がことごとく破壊され、その隙をつき反撃する。
この戦いが出来ているのは陰キャ集団で構成された部隊――『影』のお陰である。
「ツーレ前から来てる!」
「任せて! 魔法陣の解析お願い!」
「分かってる」
前方から1組の三人体制が攻めてくるが、後方からの遠隔射撃魔法はメリーが解析し乗っ取る。
『影』が前衛の魔法を無力化し、その隙にツーレが魔法を放つ。
もはや作業にも似た工程にツーレは退屈感が湧くが、ここは戦場油断でもしたら即座につけ込まれる。
「一班の方は粗方倒したわ。三班は?」
『こっちも大体片付いてきた』
<思念>で他班と情報の共有をする。
これもカエデが教えたことだ。
『いいか。戦場において情報の交換は必要だ。これはもちろん知っているだろうが、この情報をいかに相手にばらさず交換出来るか、と言ったら<思念>が一番だと思う。これを使えるのはツーレだけか? なら、ツーレを司令塔にコミュニケーションをとれ、分かったな』
そう、ツーレが一班の班長にして司令塔の役割を果たしている。
ますます油断出来ないとツーレは身を引きしめる。
それに勝負の分け目は『影』と『アレ』であることも教えてもらった。
「1組はある程度片付けたわね。じゃあ一班から三班までシルター先生に向かうわ。他の班は1組の残りをお願い!」
『『『了解』』』
司令塔が敵陣に突っ込むのは些かどうかと思うが、これも作戦というか相手を惑わす罠である。
地球でもなんでも争いとは『長』が死ねば終着する。故に『長』は死なないよう後ろにへと避難するが、逆に攻めればそれは『長』ではなく『兵』となり相手はツーレが司令塔ではないと考える。
そこをついた作戦である。
大将はカエデでも、その場で指揮しているのはツーレだ。しかしそれさえバレなければ勝てる可能性は上がる。
「それじゃあ行くわよ」
ツーレの言葉と同時に一班から三班までが移動する。
しかし単純に突っ込む訳にもいかない。よって『影』の出番だ。
「じゃあよろしくクロム」
「ま、任せてください」
基本陰キャであるクロムに女子を会話させるのは心苦しいが、クロムの影に入りツーレたちは奇襲をかける。
シルターの周りには生徒が五人残っている。カエデの事前の予想だと――
『シルターは自分の身を守るために生徒たちを残すだろう。そして残す生徒は大方、成績優秀者だ。サナやアマサがその場にいたら奇襲を一旦やめ俺に<思念>をしろ』
影からひょっこりと覗けばシルターを守る生徒にサナとアマサはいない。
これを確認したツーレは作戦実行のサインを出す。
今回の奇襲は左右からの攻撃だ。
しかし、同時に仕掛ける訳では無い、二班、三班を先に仕掛け、そこに意識が向いてる隙に討つのだ。
先生と言うだけあり、辺りの索敵は怠ってないだろうが、突然の攻撃に一瞬の瞬間が生まれるだろう。
そこを一班であるツーレたちがつくのだ。
「うぉりゃあ」
二班、三班が攻める。
二班にはキマとナッツがいるので五人の生徒は彼らに任せる手筈となっている。
「いつの間に!」
シルターが二班と三班主にキマとナッツに意識が向いた。
すると辺りの索敵に一瞬の綻びが生まれた。それをメリーは見逃さなかった。
(ツーレ今!)
(分かったわ! クロムお願い!)
(わ、分かりましたぁ)
クロムが影を伸ばす。そしてクロムの影がシルターと重なった瞬間、ツーレが影を移動し
「貰いました」
シルターは突然背後から聞こえてきた声に驚き、後ろを向けばナイフを突き出したツーレがいた。
しかし――
「ふふっ甘いね。声をかけなければ私を討てたのかもしれないのに」
ツーレの右手に握られたナイフはシルターの頬をかすっただけ。
頬からツーと血が滴る。
場面だけ見ればツーレは失敗したかのように思えるが――
「いや、先生は終わりましたよ」
ツーレは笑みを崩さない。
それにシルターは怪訝そうに見つめるが、直ぐに原因が分かる。
「――ッ! なんだ、こ、これは·····」
突然、シルターは自分の首を掴み苦しみ出す。
シルターを守っていた生徒は驚きを隠せない。
「ど、毒だな」
「正解です。毒系統上級魔法<猛毒>ですよ。これで私たちの勝ちですね」
毒系統上級魔法<猛毒>本来ならば即死性の毒で十秒もしないうちに死に至るが、魔法陣の改変を覚えたツーレにとってそれを遅く、長く苦しみを与える毒に変えることは難しくない。
「そ、そこまでやるか·····」
「カエデ先生の教えなので」
カエデは合同戦闘訓練をする前に全員に向かって一つ言葉を言った。
『真剣に取り組め』
·····と。
だからツーレもやるからには徹底的にと<猛毒>を選択したのだ。
魔法陣の改変には少し手間どったがカエデのアドバイスの元比較的短い時間で終わらすことが出来た。
「そ、うか。じゃあ私たちのま、けだな」
シルターがそういうや否や力尽きる。
それを観客席から見ていたクルムは勝者の名前を呼ぶ。
「戦闘訓練終了。勝者2組!」
この言葉がアナウンスされれば、偽造世界には静寂が訪れたが、それも一瞬。
直ぐに2組の喜びの声が偽造世界を埋めつくしたのだった。
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