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合同戦闘訓練


 俺の失敗から日が経ち、講師生活の一週間が終わりを告げた。

 ラナやアマサの無視(スルー)問題は一応解決したのだが、これはまたの機会にしよう。


 さて、今日の授業は一週間に教えた全てを利用した戦闘訓練でもしようかと思ったのだが――


「カエデ先生、1組と2組で合同戦闘訓練をしませんか?」


 シルターと言う奴から誘いが来た。

 もともと俺がアイツらの相手をしようと思っていたので、どうせなら同世代のしかもライバルとも言える1組と戦えるなら了承する他ないだろう。


「分かった。では魔法闘技場に集まるでいいか?」

「えぇ、ホームルームが終わり次第向かってください。学院長には伝えておきます」


 ふむ。なかなかいい教師ではないか。

 気配りも出来る優秀な教師だ。服装もしっかりと着こなし、髪は綺麗にまとまっている。同じ男性から見ても好感が持てる教師である。


 ではこのことを早速アイツらに伝えるとしよう。


「――というわけで1組と合同で授業することになった。内容は戦闘訓練、場所は魔法闘技場だ」


 朝のホームルームで伝えると、なんだ? みんなの顔色が悪いな。


「せ、先生! 1組と戦闘訓練って何をするんですか?」


  ツーレがおずおずと手を挙げ、発言をする。

 ツーレは最初の方は俺に突っかかってきたが今では従順な好感の持てる生徒だ。


「実際の戦場に似た団体戦だ。こっちとあっちの生徒が総動員して魔法戦闘を行う」


  これを聞いてやる気が増すかと思えば、相変わらず、いや先程よりも顔色が悪い。


「どうした?」

「いやどうしたもこうしたもありませんよ! なんでそんなものを受けてしまったんですか?」


 次はラナか。


「受けるのは当たり前だろ。戦闘経験が足りないのはダメだ。その場の判断、作戦、全てを経験しなければ強くはなれない」

「それは生徒には早すぎると思いますが?」


 あの一件以降若干当たりが強いが、気のせいだと信じて返す。


「戦闘訓練は何よりも大事だ。それにお前も経験させたいと言っていたではないか」

「1組以外ならまだしも、初めての戦いから1組とやり合うなんて荷が重すぎます」

「戦闘が初めてという点なら1組も同等じゃないのか?」

「いえ、1組は遠征で戦闘を経験しています」


 ほぉ、だがおかしいな。


「では何故2組は参加しなかった?」

「この学院の生徒はモンスターを甘くみています。そんな人たちに行かせるわけがないでしょう!?」


 ラナの判断で行かせなかったのか。

  これも冒険者としての経験故か·····。


「ラナ·····お前は少し生徒を信じてはどうだ?」

「信じるですか?」

「ああ、教師や講師としての経験は俺はない。が、生徒たちを信じなければ何も始まらない」


 そして俺はラナだけではなく、全体に言い聞かせるように言葉を選ぶ。


「この戦闘訓練は負けるか勝つか、という点においてはお前らは負けると思っている」

「えっ?」


 ラナが信じろって言っているのに負けるって言うんですか? と言わんばかりの顔をしているが無視だ。


「なのに何故俺は合同授業を受けたのかと言えば、勝ち負けよりも先にあるものを掴んで欲しいからだ」


 全員がゴクリと息を呑む。


「俺が教えるだけでは分からないものがきっとそこ(戦場)にある。それを各々感じ取って欲しい。が、素直にこちらも負けるつもりはない。お前ら真剣に取り組め! 勝ち負けは関係ないにしろ素直に負けたら元も子もない。真剣に取り組んだ先にお前らが掴むべきものがある。分かったか?」

「「「はい!」」」


 いい返事だな。


「じゃあそんなお前らに一人一人アドバイスをしておこうか」


 ◆


 ホームルームが終わり、一時間目のチャイムがなる頃俺らは魔法闘技場に着いた。

 そうすれば既に待ちくたびれている1組の姿が見える。


「遅れてしまったな」

「いえ、私たちのクラスよりも弱いなりに考えてきたのでしょう?」


 わざと俺らを逆撫でる言葉を用いて挑発してくる。

  どうやら今から戦闘訓練が始まっているらしい。


「まぁそんなところだ。それよりも、ルールは前もって決めていたやつでいいか?」

「えぇ構いませんよ」


 今回の戦闘訓練にあたってのルールは


  ◆1 一人大将を決め、その大将が負ければ勝負は終了。大将を討ち取ったクラスの勝利。(尚、大将は教師とする)


  ◆2 汎用魔法に関わらず、固有魔法の使用も可とする。


 ◆3 偽造世界への細工は禁止とする。これを感知、または発見した場合反則負けとする。


 ◆4 今回の審判はラナ・アストリアとし、勝負の結末への口出しを禁ずる。


 大方こんなもんだ。

 本当は俺が審判を努めようと思ったが、自分でこの戦闘訓練の合同を許可した手前、さすがに俺が大将をやらねばと思い、断念した。


「では偽造世界の発動をお願いします」


 シルターが観客席の上に位置する特別観客席にいるクルムに偽造世界の展開を願う。

 するとあの時でも出てきた五人が詠唱を開始し、偽造世界が構築されていく。


 瞬く間に偽造世界は完成し、俺が目の当たりにしたのは広い草原だった。

 ここはアラン草原か。懐かしい、クレアとロンとの戦闘を思い出すな。


「では、合同戦闘訓練を開始します」


 クルムのアナウンスで戦闘訓練の開始を促す。


「5秒前――」


 開始前のカウントが始まった。

 いつの間にか遠くにいる1組を見る。


  体内保有魔力が高いのはアマサとサナ――あとはあの女の子か。青髪で黒目の女の子。身長はそこまで高くないな、一応頭に入れておくか。


「――2、1、開始っ」


 こうして合同戦闘訓練が幕を開けた。

青髪の女の子は次話かその次で登場します。

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