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元魔王の失敗


 黄金の如く輝く美しい金髪、サファイアのような綺麗なブルーの双眸。姫という名に恥じない見事なルックスの少女――サナ・アラン。

 このアラン王国の王女である彼女がアマサの友達だと?


「なんでカエデ様がここに·····?」


 クソっ不覚だった。

 サナがこの学院に在籍していると知ったのは今日。前もって知っていればある程度の対策が組めたが、今となってはそれも遅い。


 アマサやラナには俺が異世界――地球から来たことはもちろん元魔王ということも話してはいない。唯一知っているとなればオールやクレアぐらいだが、地球から来たことは誰も知らない。


 ならばここは――


「お前が噂に聞くサナか」


 知らないフリをするしかないだろう。


「えっ、えっ!?」


 驚いているが仕方がない。

 索敵系上級魔法<思念>を発動。頭の中で直接会話する。


『おい、落ち着いて聞いてくれ』

「えっ!?」


 混乱しているのだろうが、この場で俺の正体を明かすのは失策だ。

 そしてこれは王女であるサナにとっても同じ。


『今お前には<思念>という魔法を使って会話している。お前は極力周りに悟られないように俺の話だけ聞け』


 するとさすが王女といえようか、落ち着きを取り戻して気づかれないようにコクリと頷く。

 周りは突然黙り始めた俺らを不思議がっているが気にしたら負けだ。


『ここで俺とお前が面識があるとバレると後々厄介になるのは俺もお前も変わらない。なら、俺とまるで初めてあったかのように振る舞え、後で事情は説明してやる』


 そこまで言って俺は<思念>を切った。

 クソっ、地球でたまに見たドラマの浮気がバレた夫みたいに心臓がうるさいが、ここは一つバレないように演技しよう。


「御主人様。どうしたのでしょうか?」


 アマサが俺に質問してくる。

 ここでの答えはどうしようか·····仕方がない。


「いや、な。あまりにサナが美しかったんで見蕩れてた」


 これならバレないだろう。

 突然黙りだした言い訳にもなるし、なにより自然だ。サナの容姿は美しい。それこそ美少女級だ。

 アマサも美しいが、それとはまた別の惹かれる何かをもつ。


  しかし、辺りの反応は芳しくない。


 なんだ?


 見ると、サナの顔は蒸気を発し、頬はピンク色に染まっている。

 アマサやラナ、オールは·····分からないが、二人は呆けている。


「どうした?」

「えっ? いや何でもありません」


 サナに聞けば慌ただしく手を振り、俺と距離を置きながら首を左右に振っている。

 どうやら俺は言葉の選択を間違えたらしい。ここまで拒否されるとなるとやっちゃった感が否めない。


「それよりも、だ。アマサいい友達をもったな」


 俺は急ぐように話題を転換した。

 するとアマサはようやく我に返ったのかやや早口で返す。


「そ、そうですね。私の自慢の友達です。さて紹介も済みましたので私たちは次の授業のために行きますね?」

「おう。聞けばアマサも七魔武闘祭に出るんだってな。1組で学んだことを見せてくれ」

「分かりました。絶対2組に負けません」


 そしてアマサは去っていく。


「じゃあサナ、アマサのことよろしく頼むよ」

「は、はいぃ」


 まだ蒸気を発しながらサナはぎこちない動きでそのままアマサの後を追うように行った。


「あれ·····ラナ?」


 さて話の続きをと思い、辺りを見渡せばラナの姿がない。

 するとオールが教えてくれた。


「ラナさんは先程の主の発言の後、逃げるように去っていきましたよ?」


 どうしたのだろうか。急ぎの用でもあったのか?


「そうか。それにしてもアイツらの反応。俺、もしかしてなんかやっちゃったのか?」

「まぁ、他の方々にならあの発言でもある程度は大丈夫でしょうが、あの方々の中に限っては失敗でしょうね」


 やっぱり失敗だったのか。やはり慣れないことはするものじゃないな。次からは気をつけるとしよう。

 その後、授業から休み時間、帰りまでラナやアマサから無視されたのは内緒である。

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