アマサの友達
『天才』
そう彼女は言われて来ました。
圧倒的不遇職とも言われる『付加魔術師』の職業につきながらも、溢れんばかりの才能によってそのイメージを払拭したこの国ではまず知らない人は一人もいません。
そんな彼女の歳は十四歳でこの学院の生徒。
所属クラスは1組――
「――つまり、私たちのとって最大の敵はその天才である――サナ・アランさんなのです!」
ある日の昼休み俺は飯を食うべく食堂に来たのだが偶然居合わせたラナに、今年の『七魔武闘祭』の学院代表戦においての最大の敵は誰か? という質問をしたのだが、その回答が今のそれだ。
「つまり? このアラン王国の王女様がこの学院に在籍していて、そいつは『付加魔術師』という不遇職ながらもその才能によって成り上がったと?」
「そうです!」
俺が教えればある程度この学院に敵は居ないと思っていたが、存外そんなことはなかったらしい。
それにしてもサナか·····。
召喚当日に会ってそれっきりだな。というか正直会いたくない。面倒なことが起こりそうだ。
「ということは、だ。俺らのライバルとも言えるクラスが1組だと?」
「はい。そして·····アマサさんの転入クラスでもあります」
そうだった。すっかり忘れていたな。
アマサの転入もとい体験入学はクルムにお願いした通りちゃんと行われた。
制服を着て俺に見せつけてきたのを覚えている。が·····
それならまだしも、まさか『七魔武闘祭』への参加が認められたというのはさすがに驚いた。
大方クルムの仕業だろうが、アイツ多分俺らのクラスである2組に素直に学院代表にさせる気はないらしい。
「1組の特徴は?」
「1組には成績トップクラスの子たちが平均的に揃えられています。2組にも成績優秀なツーレさんやキマくん、メリーさんなどいますが、1組と比べると見劣りします。それに――」
「なんだ?」
「1組と2組はどちらも優秀なのですが、1組にサナさんがいることによって、戦力が桁違いに変わります」
確か·····付加魔術師はエンチャントを主にした戦闘スタイルだったはずだ。つまり後方支援型。
後は武具に対してのエンチャントをするぐらいかな·····この話だけを見ると確かに不遇職だ。
近接戦闘員に向けてのエンチャントは魅力的だが、術者本人の戦闘能力は皆無。よってカバーが必要だ。
それはいかにパーティを組んでいても足でまといを抱えることに他ならないからな。
「従来の付加魔術師であれば後方支援型なのですが、サナさんは違うのです。彼女の戦闘スタイルは近接戦闘型」
ほう。そう来たか。
それならカバーが必要なくなり更にはエンチャントをかけることができる。オールラウンダータイプになる。
この話を聞くとサナは天才であると同時に努力家ということが分かる。
付加魔術師が自分にエンチャントするという話は前々から知っていたが、それは自殺に等しい行為なのだ。
例えば『戦士』という職業にエンチャントをかけても特に支障はない。何故ならば力の使い方を知っているからだ。
しかし、付加魔術師は魔法使いと同様に体力や筋力がない。というより鍛え上げることが出来ない。何故ならば魔法を使用するに辺りそれ相応の努力と研鑽を積み重ねなければならないからだ。体力作りをしている暇がない。
だが、この話は全て試さなかった人の話である。
サナは付加魔術師でありながら、武術を試した。剣術を試した。故の近接戦闘型。
「じゃあサナは近接戦闘をしてきながら支援をするオールラウンダー。つまり一番厄介な奴だな」
「はい。そしてアマサさんや他の成績優秀者にエンチャントを施せば、出来上がるのは化け物の軍団です。2組の生徒が杖なしの魔法行使をした所でそんな軍団の前では意味も成さないでしょう。そして教える教師が私となると·····」
「それで俺を呼んだのか?」
「はい。私もそうですが、あの子たちもまた未熟。しかもまだ対人戦を経験していない初心者です。傲慢になるのも仕方がないでしょう」
ここ数日の授業でアイツらは見違えるほど強くなったが、身の丈に合わない力は時に破滅を呼ぶ。ここらで対人戦の授業の導入でもしようか――と考えていた矢先、俺に声がかかった。
「あ、御主人様ぁ」
アマサか。
「どうした?」
「いえ近くでお見かけしたので報告を」
そう言えば友達が出来たと言っていたな。
「オールのおかげで友達が出来たのは聞いていたが」
「はい、そのお友達と一緒にお昼ご飯を食べていたので、ここでご紹介しておこうかと」
別に紹介なんていいんだがな。
しかし、登校初日は竜人ということで同性や異性の友達が出来ないと言っていたが、オールを連れていけばその容姿も相まって、恐怖心が拭えたのだろう。
「オールありがとうな」
「いえ、私が近くにいることで役立てるのならば本望ですよ」
まぁコイツに限っては本当に本望なのだろう。
連日オールを巡って女子生徒たちの争奪戦。勝ち取った生徒たちに抱かれて嬉しいと呟いていたのをたまたま聞いた。
「あっいました。お〜い!」
俺とオールが談笑しているとアマサがその友達を連れてきた。
「あぁ、アマサ。こちらの方がアマサの言っていた御主人様なのですか?」
アマサの出来た友達は――
「お前·····」
見間違えようのない金髪碧眼の美少女。
「えっ? カ、カエデ様!?」
サナ・アラン。その人だった。
アマサはサナの他にも友達はいますが、一番の友達ということでサナを紹介したのです。




