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冒険者登録


 さて·····。


 元の世界に戻る前に、せっかくこの世界に成り行きとはいえ戻ってきた。しかも魔王から転生し、地球人となった今の俺にどうやらやり残した事があったらしい。それが終わるまでこの世界に滞在するか·····。

 そのために、とりあえず、金を稼ぐため手っ取り早く冒険者になろうと王都まで向かおうとしたのだが


「グルルッ!」

「ギヒッ」


 どうやらモンスターたちが行く手を阻むようだ。ゴブリンからウルフ。見るからに雑魚なのだが、数が揃えば厄介度は増すものだ。パッと見十数体、見えないだけで気配は三十体を優に超える数がいる。


 王城の前に広がっていた森を抜けなければ王都につかないようなので、久しぶりに歩こうとしたのが、間違いだったな。


 まぁ、俺にとっては恐るるに足らない。が


「この剣じゃあ役に立ちそうに無いな」


 だって安物だもの。仕方ない魔法を使うか、俺は剣を鞘と共にアイテムボックスという魔法の空間にへと放り投げ、右手を突き出す。


「グルル! ワンッ!」


 既に殺気だったウルフが俺に飛びかかる、それを先頭にゴブリンたちも冒険者から盗んだのだろう装備を身につけ、俺にへと向かってくる。


「めんどくさいから一掃するか――<火炎の息(フレアブレス)>」


 火系統中級魔法――フレアブレス。まるで、竜の咆哮の如く勢いよく放たれる。

 狙い通りにモンスター共を殺すことは出来たが、しかし迂闊だった。


「やべぇ! 森が燃えちまうッ! <水流(ウォーター)>」


 危なかった。危うく大惨事になるところだった。まぁ、数本木がなぎ倒れているけど·····うーん、木系統の魔法で何とかできるか。いや、あれがあったな


「<創造>」


 スキルの一つである創造を用いて、なぎ倒してしまった木を生成。なぎ倒してしまったのは火系統の魔法で消去。

 結果、無駄に精神をすり減らした俺は、王都にへと向かったのだった。



 王都サクリ――


 よ、ようやく着いた。実際は、そこまで長くない距離だが、あのことがあったせいで体感で五時間も歩き続けたような気分だ。


 そんな俺を地球で言うところの警備員――衛兵さんが出迎える。


「王都に入るならステータスの提示と百ゴルドの手続きが必要だよ」


 その言葉に、そう言えばと手持ちの金を見ると二千ゴルドが入っていた。

 チッ、王族の割にしけてんな。


 仕方が無いので、ステータスをまたもや偽造を施し、この世界の基準よりも少し高い状態にし、百ゴルドを渡す。

 ちなみにこの世界の標準はBである。E、D、C、B、A、Sそしてその更に上がEXと七段階で分かれている。


「ほい、これが百ゴルドとステータスね」

「·····。ふむ、よし! 不備はないな、じゃあ、ようこそ王都サクリへ」


 衛兵に軽く会釈し、王都にへと入る。まぁ、王都の見た目なんてゲームや小説 (ライトノベル) で描かれているようなものだ。


 今の職業は魔法使いとなっているので、杖の一つぐらい持たないと不審がられるが、まぁ、仕方が無い。年不相応だが、詠唱省略ができると言って押し切るか。


 王都で冒険者ギルドを見つけるのなんて、子供でも出来る。それは、外装がとてつもなく派手だからだ。つまり、目立ちたがり屋の巣窟なのだ。


 昼にも関わらず、外からでも聞こえてくる陽気な酔っ払いの声に、ため息一つ吐き出し、ギルドにへと入る。


 冒険者の受付のカウンターは数多く設置されているが、それとは別にバーのカウンターもあるな。あっ、飯屋もあるじゃん。万能過ぎだろ。


 もちろん、俺が今回来た目的は冒険者の登録なので、迷わず受付のカウンターにへと向かうが、三番と書かれた受付に着いた瞬間、衝撃に襲われた。

 それで倒れることは無かったが、少し押し出され、目線を向ければ青い甲冑に金の装飾、両サイドの腰に長剣を差した青年が居た。


「てめぇ、どきやがれ! アリアちゃんはオレの専属なんだよ」


 アリアと呼ばれた受付嬢に本当なのか? と目線で伝えれば、首は左右に振られた。


「違うって言っているが?」

「そんなわけないだろうッ! な? アリアちゃん」


 そして、俺と青年はアリアに目線を向けるが――


「それで、どういう要件でご利用ですか?」


 まさかの無視だった。これには、名も知らぬ青年は涙目となるが、俺も嫌気がさしてきたので、話を合わせることにした。


「ああ、冒険者の登録をしにきた」


 すると、ナチュラルに会話をしたのがこころにきたのか、青年は小声でブツブツと「嘘だよね、嘘と言ってよ。アリアちゃん」と言いながら走り去っていった。


「ありがとうございます。話を合わしてくれて」

「いや、俺もめんどくさかったんでな」


 俺の言葉に苦笑いを浮かべ、アリアが理由を説明してくれた。


「慣れてきたのですが、私たち受付嬢たちにあんなことを言ってくる冒険者は、なにもあの人だけではないのですよ」


 今まで何とも思わなかった受付嬢にそんな苦悩があるとは思わなかった。

 しかし、そうか。それならめんどくさくて無視の一つぐらいかますだろう。


「気の毒だな。まぁ、なんだ。強く生きろよ」


 労いの言葉でも言いながら、話を続ける。


「それと、冒険者の登録お願いしていいか?」

「あっ、はい。分かりました。では、こちらの冒険者カードに名前と職業を御記入をお願いします」


 ささっと書き終わり、アリアに渡すと


「はい、カエデ様ですね。職業は魔法使いですか·····でも杖は?」


  案の定ツッこまれたが、まぁ大丈夫だ。


「杖が無くても魔法が使えるんだ。ほら、荷物がかさばるだろ?」


 俺の言葉に納得したように頷くアリア。


「その歳で詠唱省略が出来るのはすごいですね」


 この世界には俺のような詠唱省略や無詠唱で魔法を行使できるやつもいる。

 まぁ、詠唱省略は魔法使いなら出来るやつも多い。万が一のための杖だ。杖があると魔力の循環がやりやすくなるのだが、無くても対して支障はない。他にも杖の効力とすれば魔法陣を杖で描くことにより魔法を行使する事なのだが、デメリットとして荷物がかさばるし、第一、戦闘中にそんな余裕はない。まぁ、俺と同い年のヤツらなら杖は持っているのだが、今みたいに言えば誤魔化せるのだ。


「では、こちらがプレートとなります。失くした場合再発行はお金が発生しますので、出来れば失くさないでください」

「分かった」


 そう言って渡してきたのは銅のプレートだった。


「今は銅のプレートですが、クエストの回数や冒険者としての実績を積めば銀にへと昇格が出来ます。最高ランクはプラチナなので頑張って下さいね」


 そして、最後に可憐な笑顔で


「では、冒険者としてのご活躍を期待しております」


 こうして、ようやく冒険者になれたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初しか読んでいませんが、主人公に魅力を感じる。
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