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基礎魔法


「ふぅなんか緊張してくるなぁ」

「それも少しすれば慣れますよ」


 あれから数日経ち、俺は初の講師生活一日目がスタートしようとしていた。

 現在、俺が教えるクラス――ラナの担当クラスの教室の目の前まで来ているのだが、いざ踏み込むとなると緊張する。


 多分だが、魔王になる以前一回経験した学園での出来事が俺の中でストッパーとなっているのだろう。我ながら情けない。


「よし、入るとするか」


 事前に渡されたクラス名簿から生徒たちの名前は覚えておいた。

 できる限りの事はした。後は俺が実行するだけだ。


「今日から私たちのクラスの特別講師として呼んでいる方が来ます。ではどうぞ」


 ラナに促され、俺は教室の敷居をまたいだ。


「今日からお前らの魔法を教えることになったカエデだ。よろしく」


 例に漏れず俺は敬語は使わない。というか敬う相手でもないからな。

 そんな俺の第一印象は·····


「「「·····」」」


 全員がポカーンとしている。

 ん? どうしたんだ?


「じゃあカエデさんはホームルームが終わるまで後ろで待機してください」

「ああ」


  なんか釈然としないが、俺は言われた通りに後ろへと向かう。

  が、それをある女生徒が止める。


「お待ちください。ラナ先生、カエデ先生は本当に魔法講師なのですか?」

「えっ!? はい、そうですけど」

「ならあの自己紹介では私たちに与える情報が足りません。名前しか分からないとなると、カエデ先生に聞く質問やカエデ先生の適正属性も分からないのである程度のことを知りたいです」


 それでポカーンとしていたのか。

 あぁ、そう言えばあったな適正属性という概念が。


「それは悪かった」


 適正属性とは、術者が使える属性の事だ。

 と言っても正直この適正属性とはあってないようなものなので俺は気にしていなかったが、そう言えばここ学院だった。


「俺の適正属性は全てだ。後、担当する教科も全て俺が請け負うことになっている」

「はぁ?」


 なんと失礼な生徒だな。俺は全て正直に話したのに。

 確か名前は·····


「ツーレだっけか?」

「はい、ツーレ・シルフと申します。·····って! そうじゃなく、今の発言は本当なのですか?」

「そうだ」


 俺の言葉に深いため息を吐き出すツーレ。


「いいですか? 適正属性が全てなんて聞いたことがありません。通常二属性、多くて四属性です」


 あぁ、魔法発展期でも人間たち·····と言っても俺も人間だが、適正属性について熱く語ってたな。

 だが·····その認識は間違っている。


「その辺も含めて後で授業してやるよ」

「――ッ! そうですか。分かりました」


 未だツーレはピリピリしているが、ようやく解放された俺はそのまま後ろにへと向かった。




 あれからある程度の連絡事項をラナが読み上げ、ホームルームが終わった。

 これから一時間目に入ろうとしている。


「それでカエデ先生? 授業の方はどうしましょう?」

「ん? そうだな。確か·····一時間目は基礎魔法の授業だっけ?」

「はい」

「じゃあ最初の三十分間はラナがやってくれ、残りは俺がやる。最初はどのように授業やってるのか知りたいしな」

「分かりました」


 ラナの質問に答え、俺はそのまま授業を見た。


 その授業はラナが言っていた通り、生徒がいかに優秀かが伝わってきた。特にツーレだな、俺にあんだけ突っかかってきた小娘がこのクラスではダントツか。

 他にもめぼしい生徒はいる。キマという男子生徒とメリーという女生徒に後は·····クロムという男子生徒だな。


 まぁ、全体的に見てラナの言っていたことは正しいということが伺えたが。


「ではカエデ先生。お願いします」


 予定通り三十分間の授業を終えたラナが俺を呼ぶ。

 では、俺の授業を始めようか。


「まず最初に思ったことはお前らがいかにダメかだった」

「「「えっ!?」」」


 開口一番告げた俺の言葉に全員が疑問符を浮かべる。


「ちょっと何を言ってるんですか!?」


 ツーレが案の定突っかかってくるが、もちろん理由なしでダメだしなんてしない。


「何故、この学園の呼び名が学院に変わってたのかよく分かったよ」


 俺が通っていた時の名はどの学校も『学園』なのに対し、今では『学院』となっている。その理由が――


「魔法に対しての神聖視化」


 この世界には二種類の魔法がある。それが汎用魔法と固有魔法だ。

 汎用魔法は魔法発展期に誕生した数多の魔法を指す。既存された魔法。

 それに対して固有魔法は俺の『魔王装束』みたいな物を指す。


「お前らは、汎用魔法をそのまま使おうとしていないか?」


 汎用魔法を学び、それを暗記し、実行する。この流れが出来ている又は出来すぎているというのがこの世界の『優秀』ということだ。


「少なくともこの学院の授業では汎用魔法を知り、学び、覚えている。が、お前らは思ったことがないか? その汎用魔法に欠陥があるとか·····」

「そんなのありません!」


 ツーレが机をバンっと思いっきし叩き、立ち上がる。

 おいおい隣の子がビビってるぞ。


「では、この魔法陣はなんの魔法だ?」

「火系統初級魔法<火球(ファイヤーボール)>です」


 俺が黒板に描いた魔法陣を即座に答えるツーレ。

 もちろん正解だ。


「そうだ」


 これは、俺もたまに使う魔法であり、火球(ファイヤーボール)の魔法陣は覚えている。が、実際俺が使ってる火球(ファイヤーボール)の魔法陣は違う。


「いいか? 魔法に置いて大事なのは魔法陣の複雑度と魔力そしてイメージだ」


 汎用魔法の魔法陣は複雑とは言えない。なぜなら汎用するためにあえて複雑にしていないからだ。

 しかし、実践で使うとならば相手に解析されては乗っ取られてしまう。なので魔法陣を自分なりに改変しないとならない。


「お前らはこれから約二ヶ月後に控える『七魔武闘祭』に出場するため学院で一番にならなくてはいけない。ならば、魔法陣の改変の一つや二つこなさなければならない。じゃなきゃ魔法を乗っ取られ、利用されておしまいだからな」

「「「――ッ!」」」


 俺の言葉に全員が驚く。

 やっぱり気づいていなかったのか。結構致命的だぞ? 解析されるのは。


「今のようにこの火球(ファイヤーボール)の魔法陣を見抜かれては話にならないんだ。それが汎用魔法の欠陥という訳だな」

「·····」


 おっ、ツーレも黙り始めたな?


「その汎用魔法の欠陥である複雑度が低いことを自分なりに改変し、実用するのは難しいことじゃない。では今からそのための基礎を教えよう」


 こうして俺の一時間目――基礎魔法の授業が本格的に始まった。

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