滅系統魔法
「どういうことですか!? あれ·····カエデさんが」
「·····」
アマサが険しい顔つきで偽造世界が展開されている方向を見つめる。
「アマサさん?」
「思い出しました。先の奴隷の反乱で私たち奴隷の半数以上を消滅させた魔法使い·····アレは破壊なんてものではない、彼女の魔法は破滅、肉体すらも滅ぼす魔法」
一呼吸置いてアマサはその名前を口にする。
「滅系統魔法」
驚くラナ。
「じゃあカエデさんは·····」
「滅ぼされました」
「何でそんなに冷静なんですか!?」
だが、アマサの顔を見ればラナもその理由はすぐに察することができた。
「決まってます。御主人様は滅ぼされたぐらいで消えないからです」
「そう、でしたね」
そして二人して偽造世界が展開されている所を黙って見つめ続けた。
「さすがにやりすぎたわね」
本来の彼女の話し方で目の前で消えた青年がいた所を見つめる。
「まぁあの実力なら申し分ないわ。今復活させてあげるから待ってなさい」
そして魔力を高めるクルム。
「<蘇生>」
聖女や神官は神に語りかける事ができ、蘇生魔法が使える。だが、それが聖女たちにしか出来ないと言えば否だ。
聖女程じゃないがそれ相応の魔力を支払えば、死んでから三日以内なら復活する。だが、しかし――
「復活しない!?」
そう、確かに唱えたはずの蘇生魔法が発動されないのだ。
これが示す答えは一つ。
「彼はまだ生きている!?」
しかし必死に辺りを見渡しても彼の姿は見えない。第一、彼の肉体は滅ぼしたはずだ。
「滅系統魔法に逃げ場はない。相手を滅ぼすために開発した私だけの属性だから」
故に何よりも信頼している魔法だ。決して失敗は無い。が、今回の場合は相手を間違えたと言った方が正しい。
「そういうことか·····」
偽造世界に木霊する彼の声。
「ラナから聞いても破壊という表現が合う魔法はなかったが破滅なら話は別だ」
クルムの目の前に光の粒子が集まっていく·····
「滅系統魔法·····話しか聞いたことがないが確かに存在はしている。触れる又は近寄ることにより発動する禁忌魔法。確かにこれを生徒に教える訳にもいかねぇな」
光の粒子はだんだんと人の形にへと変貌していく。
「しかし、その禁忌魔法すらも俺の場合は話が別だ」
そして人の形をした光の粒子はカエデへと姿を変えた。
「というかクルムも今使ったろ?」
「·····そういう事·····」
「そう遅延魔法で遅らせ、<蘇生>を発動させれば復活するんだ。魂さえ残っていればなんとでもなるからな」
そう言って不敵な笑みを浮かべるカエデにクルムはただ恐怖を覚えることしか出来なかった。
◆
いや普通にビビったな。
魔王と言えどさすがに今の魔法には驚かされた。魔女の話を思い出した時に滅系統魔法も思い出しておけば良かった。
しかし、結果オーライということで気にしないでおくか。
俺は魔力を高め始める。
「さて遊戯を始めよう」
そして俺は右手を前にへと突き出す。
「武具顕現」
さすがに聖剣エクスカリバーを出す訳にもいかないので、今回取り出すのは俺の剣だ。
これなら問題を起こすことなく本気を出すことが出来る。何せ、魔王の頃でもこれを使ったのは滅多にない、更に使った相手は口伝させないよう確実に殺している。
「魔道・神楽」
現れた黒色の柄を掴み、抜けば血塗られたように真っ赤な刀身が煌めきその姿は妖刀と言っても過言ではないほどの不吉さを放つ。
「えっ·····何それ·····」
「俺の愛刀だ」
鞘も取り出し、静かに魔道・神楽を鞘に収め、構えを取る。
「俺は確かに魔法使いの部類だが、俺の剣技はそこら辺の奴らよりも上だと自負している」
「そ、そう。でも素直に負けるつもりもないわ。滅系統魔法の真髄を見せてあげる」
先制はクルムだ。
「<滅竜>」
炎が巨大な剣にへと形どられ、それがクルムの腕と共に振り下ろされる。が――
「フッ!」
魔道・神楽で一閃すれば縦に真っ二つになり、俺の左右にそれぞれ突き刺さる。
「嘘·····」
「<魔道・一閃>という名前の技だ。魔法の欠陥点に向かって放ち、破壊させる技。魔女だからといって欠陥がない訳でもない」
「ふぅん。説明してくれるのね」
「まぁな。俺から見ても滅系統魔法は欠陥がある」
「ッ! そう。終わったらぜひ聞きたいものだわ」
「あぁ幾らでも説明してやるよ。勝負の勝ちを貰ってからな」
「まだ終わったわけじゃないわ! <滅神>」
天高くかざされた右手から魔法陣が広がり、上空に巨大な火球が出現。
「なんだぁ、見かけ倒しか?」
「ふふっ随分と余裕ですね」
その含みのある笑みの正体は炎の種類だろう。火球の色は黒つまり黒炎だ。
黒炎、別名地獄の炎。触れれば燃え尽きるまで燃え続ける。
「だが触れなければいいだけだ」
構えて、俺は眼前の火球を見据える。
ふぅ·····。
一呼吸。カチャリと魔道・神楽の音がなる。
「魔道・飛翔」
魔力を魔道・神楽に込め抜刀。その速さは神速を超え、振り切れば、魔力の斬撃が飛翔する。
それは真っ直ぐと火球に突っ込み、そして火球を斬った。
「う、そ·····」
俺は黙ってクルムに向かい、首元に魔道・神楽を突き出す。
「チェックメイトだ」
「·····負けだわ」
そのままペタリと座り込んでしまったクルムに俺は手を差し伸べながら問う。
「どうだ? 俺は講師として充分か?」
「えぇ、長い時を生きてきたけどあなたのような魔法使いは見たことがないわ」
数拍の後、クルムは真剣な眼差しになった。
「あなたは何者?」
「俺か?」
元魔王、孤高の魔導王やら俺の呼び名はあるが、一番気に入ってるのならば――
「俺は楓だ。それ以上でもそれ以下でもない」
時と場合によって俺はエヴァンとしての力を使うだろう。というか今も使ってるしな、
それに対して躊躇いはないが、俺の好きな呼び名はエヴァンよりも魔王よりもそして孤高の魔導王よりも、楓という名前が好きだ。
「·····そう」
フッと柔らかい笑みを浮かべながら、彼女はこちらに手を差し出し、俺はそれを優しく握った。
「ならば改めてお願いするわ。カエデくん、臨時講師としてあなたの活躍を期待してるわ」
「そうか、なら今後ともよろしく頼む。後、俺の連れの一人がこの学校に体験入学したいらしくてな、お願いしていいか?」
「もちろんよ、あなたの奴隷かしら? あの子·····確かアマサって言ったかしらね」
「そうだが、知ってたのか?」
「奴隷の反乱の時に一人骨のある子が居てね、記憶に残ってたのよ。もしかしてあなた·····アマサさんになんか教えたのかしら?」
「まぁな、俺ほどとはいかないがクルムといい勝負するんじゃないか?」
「ふふふっ楽しみにしてるわ。あなたが導く教え子たちの成長を·····」
「初の試みだが、俺なりにやってみるよ」
「よろしくね。カエデくん」
そして偽造世界の崩壊と共に女教師の声が響く。こうして俺の審査が終わりを告げた。
次回からやっと教師として魔王が授業を行い始めます。




