破壊の魔女の魔法
最初三人称でその後カエデの一人称です。
「もうそろそろ始まりますよ、アマサさん」
「·····はい」
魔法闘技場に設置されている観客席にてラナとアマサが会話をしている。
しかし、アマサのテンションがいつになく低いことに対してラナが疑問を持つ。
「ん? どうしたんですか?」
「えっ? いや·····ただ」
――何か突っかかるんです·····その言葉がアマサの口から出ることはなかった。
互いに準備をし終わったようで今からその対決が始まろうとしていたからだ。
「ただ?」
「いや何でもないです。御主人様の戦いを見ましょう」
少し焦った様子のアマサにラナの疑念が高まるがこれから始まる戦いに気を移した。
アマサが破壊の魔女の魔法の本質に気づくのはこれから少し経ってからの事だった。
◆
どうやら準備が終わったようだ。
クルムの格好は動きやすいものになっている。
腰まで伸びた髪はポニーテールにまとめ、服は魔道着とかなり本気だということが伝わってくる。
魔道着とは、魔法使いの戦闘服だと思ってくれていい。魔法を前もって仕込めたりすることが出来るスグレモノだ。
「どうやら本気らしいな」
「えぇ、そうですよ。我が校を七魔武闘祭の頂きまで導くことができるかもしれないのですから」
ラナが言っていたことは本当だったのか。そこまで本気なら
「何でお前が教えないんだ?」
「·····私の魔法は特殊ですから」
ん? なんだ今の間は·····
そんなことを気にする前に対決もとい審査が始めるため呼び声がかかった。
「では、両者前に」
スーツをピシッとキメた女教師の号令に従い前にへと進む。
「では偽造世界を発動します」
五人がかりで偽造世界を発動。世界を構築するため使用魔力が馬鹿ならないが、通常十人がかりの所を五人でやってのける辺り流石と言えよう。
「では、はじめ!」
構築が完成した所で女教師の試合開始の合図が聞こえた。
「ふむ、束縛か」
足元に魔法陣が展開される。解読したところ束縛で間違いないが、先程の――
――私の魔法は特殊ですから
これが頭から離れない。
チッそういうことかよ!
「あら避けてしまうのですね?」
「当たり前だろ! 束縛に見せかけた火竜咆哮炎なんだからよ!」
「大概の方々は気づかないのですが、流石ですね」
イタズラしたような子供のような笑顔をしやがって、偽造なんて技法を使うなんてよ。
偽造は実に厄介な技法だ。例えばだが火系統初級魔法である火球の魔法陣が展開されたかと思えば発動されるのは火竜咆哮炎という事だ。
厄介なのは解析しづらいことだ。魔法とは陣の複雑度とイメージがものを言うのだ。
俺の魔王装束を纏う際の魔法陣は解析させないために複雑に作られているため乗っ取られることも、真似することも出来ない。これが定石だとするならば、
偽造はわざと油断させ、その虚をつく技法であり、一種の高等技法だ。初級魔法だと思い、乗っ取れば予想外の込められた魔力量の差に暴発し、真似しようものならアマサで言うところのオーバーヒートを起こす。
「さすが魔女だな」
「それは褒め言葉として受け取っておきます、が私の魔法はこれが全てじゃないので悪しからず」
まだ余裕だということだ。ここまでやられたら俺もやる気が出るもんだ。
「同時発動」
「――ッ!」
火竜咆哮炎と彗星の同時発動。
「そんなものっ!」
「バカが」
火罠をそこに既に設置済みだ。
「きゃっ!」
瞬間に全身に強化を発動し、耐えたか。その場の判断力は魔女なだけある。
「ここから俺のワンサイドゲームか?」
「調子に乗るなぁ!」
おっ、言葉遣いが崩れたな。これから本気ってことか?
「火系統最上級魔法――<火花>」
目くらましか·····。
「雷光の矢」
なんちゃって同時発動で連射。
たちまち火花により発生した火花と煙は消え去るが――
「クルムの姿がない」
どこだ?
気配感知を発動し、辺りを散策するがそれらしき気配は感知しない。
「ここよッ!」
しまった背後を!
「滅系統最上級魔法<終末の日>」
滅系統だと·····?
その思考に変わる前に俺の背中にクルムの差し出された右手が触れ、瞬間俺の体が消滅した。
元魔王ピンチです。次回も戦闘が続きます。




