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閑話 カエデありがとう会

今回三人称です


 時は遡り、ここは王都サクリの冒険者ギルド。


 今宵、ある冒険者パーティがある青年のことを感謝して、あるパーティーを始めた。

 その名も『カエデありがとう会』。


 エレンを筆頭にラナ、シードが乗り気になりカエデが渋々と言った様子でパーティーは始まった。



 時間も経てば酒の酔いが回ってきて、シードのある話が始まった。


「カエデぇ、ひっく吾輩が何故このような喋り方なのかぁ、気になられねぇかぁ!? ひっく」


  頬を酒で緩ませ、蒸気を発しながらも言語だけは流暢に口を走らすシード。

  これにはカエデも苦笑いで水を進めるが――


「ひっく、水なんてぇいるかよ! それでぇ、どうなんだぁ?」

「·····はぁ気になるよ」


 仕方なしとため息を吐き出しながらカエデはシードの話に付き合うことにした。


「これはなぁ、吾輩んちにある、ある古代書が教えてくださったのだよ」


 古代書? カエデとしても古代書という単語は前世、今世共に聞いたこともなかった。

 故に興味を持ち話を聞けば


「古代書ってのはなぁ、解析不能の言語が使われてるぅ、古代の本だぁ」


 前世、つまり魔王だった頃でも古代書は聞いたこともないし、当然持ってなかったのでカエデは熱心に聞けば


「おぉそこまで興味をもってくれるのかぁ、吾輩の喋り方を」


 若干互いに食い違いが起きているが、しかしそんなものを気にすることも無く話は続く。


「そんなぁ古代書を吾輩は解読に成功したのだぁ、その歳はわずか六歳の頃、吾輩は天才だったのだーハッハッハァー」


 酒も回りドンドンとヒートアップしていく。


「しかし吾輩とて全てを解読できた訳では無い、せいぜい表紙に書かれていた言葉だけだった。それが『吾輩は猫である』だ!」


 この瞬間、カエデは自分の内にある熱が急激に下がる気配がした。


「古代書に描かれていたことは縁起がいいに決まっている。だからこそ吾輩はそこだけでもと喋り方を変えたのだぁ」


 つまり古代書は、はるか昔にこの地に召喚された勇者――つまり日本人が持ってきた所有物であり、それが何の因果かシードの手にわたり、何故かそれが解読出来てしまい今の喋り方となったのだ。

 これを聞けば興奮していた自分が馬鹿らしくなってきたと、やけ気味に酒を飲み干せば、次は肩を組まれた。


 なんだ? と目線を転じれば酔いが回ったラナがいた。

 ちなみにエレンがどうしているかと言えば、一人で誰もいない方を向いて自分の武勇伝を語っている。


「カエデしゃあーん」


 まためんどくさいのがと肩に回された手を払おうとしたが、しかし相手は女性。

 しかもラナである。


 さらに、元魔王で転生してもカエデは男。

 ラナの容姿は他人に自慢できるほどに整っている。


 青みがかった髪に、蒼穹のように澄んだ双眸、控えめながらもしかし確かに女性を感じさせる双丘は酒が少なからず回ったカエデにはこたえるものだった。

 己にある全ての理性を総動員し、溢れ出てくる欲望を抑えながら平静を装いカエデは問いかける。


「どうした?」

「ねぇ、ちょっとぉ聞いて欲しいことがあるんですけどぉ·····いいですかぁ?」


  シードの話で正直お腹がいっぱいだが、しかし断る訳にも行かずカエデは了承する。


「もぉねぇ私どうしていいのかわかんなぁいですっ!」


 唐突に泣き出しながら、木製のコップを思いっきし叩きつける。


「私ねぇ冒険者をしながら教師もやっているのですよぉ」


 冒険者とは実に安定しない職業だ。

 もちろんモンスターを倒せば収入は入るがそれで一生食って行けるかと言えば答えは『無理』だ。


 だから、ラナのように冒険者はもう一つ職業を持っている。ステータスに書かれた『剣士』や『魔法使い』とは別の収入がある職業を。

  まぁだからといって『教師』を生業とするのは些かどうかと思うが人生は百人人がいれば百個のストーリーがあるものだ。


  仕方なしに話を合わせるカエデ。


「それでねぇ、もうそろそろ『七魔武闘祭』が始まるって言うのに私はクラスを学院代表に導けるか不安なのですよぉ」


 『七魔武闘祭』とは王都を中心に開催される全七つある学院からナンバーワンを決める大会だ。

 内容としては各学院から代表者クラスを選抜し、その中からナンバーワンを決めるのだがラナが言っているのはそれの話だろう。


「ラナの魔法は丁寧で綺麗だからお前が教えれば勝てると思うがな」


  カエデが言ったことは紛れもない本心だった。

 ラナの歳は十八。その若さ故か経験がなく、杖での詠唱しか無理だが、彼女の魔法は丁寧で実に綺麗な魔法だ。


「うふふふ、そうですかぁ」


 この褒め言葉にラナはこれでもかっと言うぐらいに頬を緩め、酒を飲む。

 そして本来の話を思い出したのか、すぐに怒りだす。


「ってそうじゃなくてぇ、私のクラスの子は優秀だからぁ私が教えることがなくてぇ」

「どのくらいなんだ? その優秀って」

「んー? 全員が杖をなくても魔法行使できる程ですよぉ?」


 この言葉を聞き、内心でカエデは感嘆する。

 生徒ということは歳はカエデと同い年ぐらいだろう。カエデは前世が魔王だったこともあり杖なしの魔法行使なんて余裕だが、この世界は違うだろう。


 余程の優秀さに「それなら何が心配なんだ?」と小首を傾げれば


「優秀なのはいいんですけどぉ、それで天狗になって傲慢な態度で勝負すれば結果なんてたかがしれてますぅ」


 確かに一理ある。

 ラナは冒険者だ。そのような態度をとりクエストに望み、散っていった命を知っているんだろう。しかし、彼女の実力より生徒の方が上。となれば当然ラナの言葉など聞く耳持たぬだろう。


「教師も大変なんだな」

「そうですよぉ、生徒はアプローチしてくるし、給料は少ないし、目の前でカップルがイチャつくし、給料は少ないし、リア充が多いし、給料は少ないしぃ·····」


 基本カップルと給料に対して怒りをもっているんだなと苦笑するカエデ。

 そんなラナにどうせ酒のせいで忘れるだろうとこの場から脱するため言葉を探し、かける。


「まぁ困ったら俺を呼んでくれよ。ラナの頼みなら断んねぇよ」


 そして優しく頭を撫で落ち着かせる。

 すると――


「うわぁーんカエデしゃあーん!」


 泣いて抱きついてきた。

 余程リア充もといカップルと給料に対して思うことがあったのだろうと優しく背中をさすり、ラナを泣き止むまで抱きしめ続けた。


 この言葉が数週間後、まさか実行されるとはこの時はまだカエデですら思いもしなかったのだった。

さて、第一章が完結しました。どうだったでしょうか?


第二章は書いた通り『七魔武闘祭』に向けた魔王教師篇です。楽しみに待って頂けたら幸いです。


面白ければブクマや感想、評価よろしくお願いします。随時募集中なのでよろしくです。

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