孤高の魔導王
「<火炎>」
俺は無詠唱で火系統初級魔法を発動。
「そんな初級魔法で――えっ?」
ロンは俺の初級魔法に対し、障壁で対抗した。
しかし、先程も言った通り込めた魔力が違う。それはひとえに魔力量の差だ。
故に俺の火炎が障壁を打ち破り着弾し、ロンは鈍い声を上げる。
「クレア悪かったな」
「えっ?」
「侵入は我も知っていた。それを頭に入れなかったのは我の失態だ。結果、怖い目に合わせてしまった。済まなかったな」
「·····」
俺の謝罪を呆然とするだけで、クレアは言葉を発しなかった。
まぁ、突然言われても頭の整理がつかないだろう。この謝罪は俺の自己満足だ。
すると、俺の余裕ぶりが腹たったのかロンが怒りを露に俺に向かって最上級<水流五月雨>を打ち込んでくるが――くどい。
「障壁」
五重もいらない。
その俺の予想は裏切らず破られることなく水流五月雨を防ぎ切ったのだが、俺は新たなる気配に気づいた。
「魔族か·····」
「せいかぁーい。ふふふっ前もって用意していたのが良かったぁ、さぁ僕の女を――えっ?」
魔族が偽造世界に侵入しようとしている。恐らくロンの仕業だろうが、そのロンはと言うとクレアを奪還すべく侵入で俺とクレアの間に移動してきた。
しかし、馬鹿の一つ覚えだ。俺に二度目の失態はない。
無詠唱で転移。
転移して侵入を防ぐが、後ろから魔法をが放たれた。
「チッ! もう侵入してきたか」
パッと見五人の魔族。
その姿はフードにより隠されているが、オールと同じように制御装置をかけている。
俺を舐めているのか?
「ふふっあははははっ! やっと着いたな? これでエヴァンお前は詰みだ」
自信満々だな。
強者に寄生するガキかよ。いや、ガキか。
「魔族程度で我の足を止められると思うなよ?」
「あはは?」
何を言っている? といった様子で小首を傾げるロン。
はぁ、仕方がない。説明してやるか。
「我のかつての二つ名を知っているか?」
「·····」
俺の問いにロンは黙っている。
「『孤高の魔導王』だ」
その所以たるは同時発動でもはたまた魔王装束でもない。
「一つ例え話をしよう」
俺の語りに魔族も不思議がるが俺は気にせず話を続ける。
「魔法使いは若いうちは杖での魔法行使しか出来ない故にパーティの存在が必要不可欠だ」
その例としてはラナである。
だからこそパーティの必要性であることは以前説明した通りだ。
「でも我は違う。味方や配下なんぞ要らなかった。何故だか分かるか?」
「·····」
「我一人で事足りるからよ」
「――ッ!」
そう仲間は要らない。
というより必要性がなかった。仲間というのは自分に足りないモノを補うために必要な存在である。
「それこそが孤高の魔導王たる所以。故に雑魚が何匹増えようが我に取っては害虫にほかならない」
剣士? 俺の剣術で充分だ。
魔法使い? 俺だ。
盾使い? 俺で足りる。
付加魔術師? 俺のエンチャントの方が何倍も上だ。
全てが俺一人で充分だった。
しかし、時が経てばそれも虚しいだけだ。俺があの時アルテガと酒を交わせたのはこの渇望からと言っても過言ではない。
俺は誰かといたかった。
しかし、人間は俺に寄り付かない。配下を作ろうにも需要性がない。
だからこそ、俺は孤独だった。
龍を殺したのも神を滅したのも俺と共に歩める種族を探したかっただけだ。
しかし、そのどちらもが俺に勝てる存在とは至らなかった。
「――ッ! だからどうしたァ!」
ロンの掛け声と共に魔族たちも共に魔法を放ったり、剣を抜いたりと俺に敵意を向ける。
そう、そんな攻撃すら。お前らが俺を殺すために本気で何をしようが俺にとってそれは
塵芥とほかならない。
「《消え失せろ》」
魔法発動解除は前に説明しただろう。
しかし、俺の使った魔法発動解除は魔法陣を破壊した。
それの説明をしようではないか。
その答えは単純。名を――
魔法陣破壊。
俺にあらゆる魔法は意味をなさない。俺の魔法陣破壊で壊せない魔法と言えば最上級だが、それも使い手によれば破壊まではそう難しくない。
「――なぁ!?」
ロンが驚く。
もちろんだ。俺は一言で破壊したのだから、ちなみに俺がわざわざ 《消え失せろ》 と言ったのには理由があり、その方が相手にとって絶望を与えられる程の威力をもっているからだ。
無詠唱で発動させるよりも、俺の言葉にはこのような能力があると勘違いさせた方がいい。
そして俺は気にせず、火炎の息を放つ。
「なんで僕の魔力が侵入しないんだぁ」
当たり前だ。
侵入されるには俺の『奪取』のように条件がある。それは、侵入するために必要な入口がある事だ。
俺の偽造世界は完璧とは言いがたかった。それはクレアの殺気で勢いで作ったもので多少の綻びがあったからだ。
世界を構築するというには無詠唱とはいかない。もちろん無詠唱でも発動できるがそれこそ侵入される。
そして俺は、詠唱省略で構築したものだから当然無詠唱とまではいかないが小さな綻びが生じた。
それがロンが侵入出来たカラクリで、この状態の俺ならそんなミスなんぞ冒さない。
「《武具顕現》」
さて俺も飽きた。
俺の力の本気を見せると言った手前、俺はその力を見せなければならない。
そしてコイツを殺す武器はこれだ。
「せ、聖剣?」
腕に抱かれたクレアが呟く。
そう、これは紛れもない聖剣だ。何故、クレアが精霊宝具を持っていて聖剣を持っていないかと言えば俺のアイテムボックスに入っていたからだ。
そしてこれはアルテガが当時使っていたものだ。名を
「聖剣エクスカリバー」
俺はエクスカリバーを握るためにクレアを左手で抱き、魔法陣から出現した柄を握り、引き抜く。
魔法陣から勢いよく抜かれ、エクスカリバーはその刀身を輝かせる。
青と金でカラーリングされた鍔から先の刀身には古代文字が中心に描かれ、錆ひとつない綺麗な銀の刀身は煌めく。
「綺麗っす·····」
しかし何故聖剣が俺に握れるのか? という疑問があるだろう。
それは俺が人間だからだ。
聖剣はその名の通り魔を滅するために生まれい出た剣で、魔族には持てないが人間である俺は持てる。
では何故勇者にしか握れないとされているかと言えば握れば物凄い勢いで魔力が吸われるからだ。故に常人には握るだけで魔力欠乏症に陥る。
「では終わりにしよう」
無詠唱で束縛。魔族やロンを一塊にさせる。逃げ回れるのがめんどくさいのでこのようにしたがそもそも相手方も戦意を喪失しているようだ。
そんな奴らに俺は無慈悲な一撃を与える。
「奥ノ型<天翔破月>」
魔力を斬撃として放つ技。
これはかつてアルテガが得意としてた技だ。
桁違いの魔力放出量。それを全てコントロールして綺麗な三日月を描く。
それが一寸の狂いなくロンにへと直撃し、その胴体と下半身をさよならさせた。
「俺に喧嘩を売るなんざ百万年早い」
魔王装束を解き、クレアを下ろす。
こうしてロンとの戦いは幕を閉じた。
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