告げれる真実
傷一つない綺麗な透き通るような白い肌。そんな体に実った控えめな双丘は、アマサとは違う惹かれる何かがあった。
そんな思考も目の前のクレアの様子を見れば止まるが、しかし真っ裸を見た訳では無い。
話し合えば――
「今すぐ殺すっすッ!」
「偽造世界ッ!」
放たれた殺気に思わず偽造世界を発動。
瞬間俺らは宿の部屋にも似た、しかし先程とは別の空間に移動した。
「悪かった。決して覗こうとは思わなかっんだが」
「それはそれで女としてのプライドが傷ついたっす!」
なんともめんどくさい生き物だな女とは、束縛を発動させ鎖を巻き付かせる。
しかし誤算だった。
動きを止めるにはうってつけだったが、今のような格好では変な事をしているみたいで背徳感が湧くが仕方がない。
なるべく肌を見ないように、俺の羽織っている礼服を被せる。
すると手で礼服を手繰り寄せ肌を見せないように、しかし怒りでプルプルとしたクレアが恨めしげに見つめてくる。
束縛を解いてもいいが、解いたら即座に殺しに来そうで平和的な会話が出来ない。
というかもう無理そうだが。
「エヴァンが何の用っすか?」
まだ怒っている様子だが、埒が明かないとクレアが問うてくる。
罪悪感が残りつつも俺はこの場所にきた目的を話す。
「お前が結婚すると言ってな」
「·····それは関係ないっすよね?」
「いや、少し関係している。それにあたり俺はお前の間違った認識を改めさせに来た」
「·····間違った認識?」
「そうだ」
堕ちた勇者·····そう言われ続け彼女は酷い人生を送ってきたのだろう。
恐らく好きでもないであろうロンにまで体を売り、俺を倒そうとしてきた。
俺はそんな彼女に真実を伝えに来た。
と言っても時と場合があって本当は会った時に話そうとしたのだが、あいにく間違った認識がありそれは叶わなかった。
故に遅いが今話す。
「まず、俺はウォル一族に殺されていない」
「――ッ!」
どういうこと!? と目を見開くクレアに俺は「まぁ聞け」と落ち着かせ語る。
前世のあの時のことを·····。
「ガハハッ! ほら飲め!」
「·····そうか」
俺は差し出された酒を戸惑いながらも取り、一気に飲み干す。
「おっ! いいねぇ」
俺の飲みっぷりに拍手する人間――アルテガ。
今日、コイツが俺を殺しに来て、俺は例の漏れず殺そうと魔法を発動しようとした所に酒を突き出してきた実に馬鹿な男だ。
なんでも、「俺らが争うことはねぇ」と俺に向かって論説してきて困惑しながらもとりあえず酒を飲もうと今渡されたのだ。
「――では、どういうことだ? 争わないとは」
「んー?」
酒を飲み、機嫌良さそうに俺の方に向くアルテガ。
一応警戒は怠っていない。俺は自身に障壁を発動させる。五重構造だ。
もちろんそれに気づいているアルテガは笑いながらに言う。
「そんな警戒するな。俺らは同じ人間だろ?」
「――ッ!」
どういうことだ? 何故俺が人間だと知っている。
「そう驚くな。ここまで来るのに何の情報もなく来るかよ。ある程度調べたんだよ」
調べて出てくるほど俺の情報は少ないが、しかし勇者であるアルテガなら、国が秘蔵している情報の一つや二つ簡単に盗めるだろう。
「なんでもその才能のせいで魔王とよばれたんだっけか?」
「あぁ」
同時発動も俺の十八番のうちの一つだが、やはり人間が危険視するのはあの魔法だろう。
「なぁ、聞かせてくれよ。お前の過去をよ」
アルテガは気さくで何より明るかった。
魔王として影に生きてきた俺に眩しかったのか、少し抵抗もあるが、こいつは今までとは違う。
何故かそんな確信があった。
だからだろう。俺は、気づいていたら話していた。
「俺は孤児だったんだよ」
「·····」
俺の話を黙って聞いている。
「ガキの頃から盗みをやっていた」
俺は孤児院に拾われ育てられたが、孤児院も貧しかったので借金に追われ、遂には孤児院の土地は撤去された。
他が新しい家族に迎えられる中、俺だけは残り、世話になるまいと盗みを始めた。
生きるのに金がいる。しかし、金がない。だから俺は盗んだ。金を飯を·····。
しかしそう都合よく行かないものだ。
「――俺は捕まったよ。もちろん暴力を振るわれた。だけど時が経てば飽きたのか俺は売られた」
売られた先はある魔法使いの家だった。
老人で独り身だった爺さんは俺を快く迎えてくれた。
楽しかった。爺さんに魔法を教えて貰って――でも
「――ある日、俺は才能があったみたいで新しい技法を生み出し続けた」
それを見た爺さんが魔法学園に入学させた。
だけど――
「――俺の技法は他人には無理なものだった。故に病院送りとなる生徒たちを見て教師や同級生、学園から悪魔と囁かれ始めた」
彼の言うことを聞けば死ぬ。彼の傍によれば孕ませられる。
ありもしない噂を流され、最初は悪魔だったあだ名が遂には魔王となった。
俺の才能を危険だと思った人間は俺に向かってこう言い放った。
「お前は魔王だと死ぬ運命にあると」
それから暗殺者や勇者に襲われる日々。
故に俺は力を磨いた。生きるために·····。
「それが俺の過去だな」
かなり端折ったが粗方は話した。
「そうか·····」
アルテガ遠い目をして突如俺に向き直る。
「俺な! 所帯もってんだ」
突然なんだ? と思えばアルテガは続ける。
「妻や子がいるっていいぞぉ! 俺でもこんな幸せなんだ。お前にだっていずれ守ってやりたい女の一人や二人できるさ」
「つまり何が言いたい?」
「つまり、お前の人生はこれからさってやつだ。こんな戦いをしても互いが傷つくだけだ。それなら互いのこれからの人生の為にもやめにしよう!」
なんとも呑気な奴だ。
しかし、それもいいかもしれない。
「俺も争いは飽きた·····」
「そうだろ? なんだぁ、気が合うじゃねぇか!」
それから数日語らった。たまに口を滑らせ語尾に「っす」をつけた時はビックリしたが、実に楽しかった。
この時になって思う。あの時あの視線に気づいていればと·····。
アルテガが帰ってから数日後、俺の耳にあるニュースが入ってきた。
魔法で世界の事情は全て知ることが出来る。そこである事実を知ったのだ。
「アルテガが追われるみになっているだと?」
しかし、その原因は直ぐに浮かんだ。
俺の事を殺していないからだ。だから、俺は向かった。
アルテガの元へと·····。
俺を殺せばこんな目に会わなかっただろうに、何故という疑問もアイツに投げかけたいが、あの男にこんな質問しても無駄だろう。
とりあえず俺は足を急がせた。
アルテガは追われるみだ。ならばその家族も追われている。となれば、足でまといを担いでいるのだ。
索敵を発動させ当たりを索敵すればアルテガは直ぐに見つかった。
「アルテガッ!」
「ッ! エヴァンか·····」
どうやら交戦中だったらしい。王都兵が俺を見て「やはり繋がりが·····」と呟いたあたり俺の予想は当たっていたようだ。
「エヴァン悪いが俺の家族を避難させてあげてくれないないか?」
「俺にそれを頼むのか? 殺すかもしれんぞ?」
しかしアルテガという男はそんな俺の脅しにも、肩をすくめるだけで返事する訳でもなく、王都兵に向かって駆けた。
――信用してんのか·····?
「あなた!」
「パパッ!」
悲壮に満ちた声で叫ぶアルテガの妻と子供。
俺はそんな彼女たちの手を掴み発動させる。
「<転移>」
「――そっからは家族を避難させたな」
「·····」
俺の話を黙って聞いているクレア。
ここは辺は血かな、と思いつつも俺は話をつづる。
「戻った時はアルテガは瀕死だった」
血反吐を吐きながら、それでも立つアルテガは俺なんかよりずっと強かった。
しかし多勢に無勢。
「その時人間側でアルテガと相対していたのがモブ――つまりウォル一族だったってわけさ」
「――ッ!」
驚くクレア。
「アルテガは名誉の死を遂げる。はずだったんだがな」
あの男。何を思ったのか俺にトドメを刺してくれって懇願してきやがった。
「理由は分からない。だが、トドメを刺したせいで俺は奪取に成功。それが転生だったのさ」
本当はもっとある。話したいこともしかし、これを話す訳には行かない。
約束というのは他人に話さないから秘密となり、それが確固たるものとなるのだ。
「だからアイツは堕ちた勇者なんかじゃない」
「·····そうっすか」
ん? 落ち込んでいるってよりかは嬉しそうな表情だな。
「どうした?」
「あっ、いや、そういう訳じゃないっす。ただ、アルテガ様がみんなの言う勇者じゃなくてそれが嬉しかったんすよ」
·····やはり、アルテガやクレアには適いそうもないな。
「でだ、本題はこっから·····お前は結婚するか? もししないなら俺は友の交ってことでお前を助けるが」
「そうっすね·····」
長考の末、クレアは決めたような表情で俺に言う。
「結婚はするっす」




