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竜人 アマサ


 肩までに揃えられた短めのプラチナブロンドの髪、紅玉のようなその赤き双眸には俺に対する殺気が孕まれている。


「コイツに決めた」


 直感だった。前の戦いでも言った通り、俺に殺気を向ける奴なんてそうそういなかった。

 もう一つ理由を上げるのならば、竜人という種族に興味が出た。


「コイツが良い」

「左様ですか!? ――おっと失礼、分かりました。手配しますので最初の部屋にてお待ちください」


 俺は頷き、部屋にへと戻る。

 すると、ものの数分で部屋に先程の竜人――アマサが入ってくる。


「ご購入ありがとうございます。竜人のアマサと申します。よろしくお願い致します御主人様」


  その華奢な体とは反対にその豊満な胸をぷるんと動かしながらも、綺麗なお辞儀をする。

 が、依然その瞳に孕んでいるのは殺気。


「ああ、俺は楓だ。よろしく頼むよ」


 互いの自己紹介が終わったところでダンマが入ってくる。


「ダンマ値段は?」

「奴隷紋込みで二千ゴルドですね」


 安いな。さすが犯罪奴隷だ。

  手持ちはクエストの報酬で貰ったものも合わせて四千ゴルド。余裕だな


「ほいよ」

「では、奴隷紋を烙印しますが制約は絶対服従でよろしいので?」

「ああ」


 別に絶対服従で無くてもいいが、さすがに犯罪者を野放しにするのも町民に何かあっても困る。

 ちなみに、先程から出てくるこの奴隷紋だが、前述した制約系統魔法だ。


 色ごとにその拘束の強さが階級(ランク)付けられており、順に黒、青、赤だ。

 黒が性奴隷用の制約、青が通常奴隷の制約、赤が犯罪奴隷の制約、つまり絶対服従だ。


  奴隷紋は、素肌に焼き付けるという訳じゃない、奴隷には金属製の首輪か手錠をつけなければならない。ある程度の自由を制限するためだ。

 奴隷紋はその首輪か手錠に烙印される。


 カラクリとするならば、制約に背けば首輪又は手錠に烙印された奴隷紋が発動、電流が流れ痛めつけるという仕組みとなっている。


「では、これが烙印された手錠でございます」


 今回俺が選んだのは手錠だ。首輪などを公然に晒すわけにもいかない。ならば、手錠の方が幾分かマシだろう。

 悪いが、俺にはそういう趣味はないのでな。あっいや、Mって訳でもない。どちらかと言えば攻める方が·····では無く。


 こんな思考になる自分に、自分で落ち込みながら、アマサを受け取る。


「では、お客様? 次は()()ことは避けてくださいね?」


 おっとバレていたようだ。

 覗くというのは、俺が入ってきた時にした事だな。


 魔法名を索敵系統中級魔法<心見(ピーク)>もいう。

 その名の通り心を見る魔法で、実に使い勝手がいいのだが


 この世界は弱体化していると思っていたが、まさか俺の些細な魔法行使に気づくなんて、このダンマは中々のものじゃないか?

 もちろん俺に適うことはないと思うが


「じゃあ俺からも、俺に見た目を変えるのは避ける方がいい。怪しむからな」

「気づかれておりましたか、魔法を行使してまで当店に入店された方に恨まれたりしたらと顔を隠していましたが」


 やはりプロだな。

 怪しい行動でも取っていたら実力行使するつもりだったか。


 するとプシュッとガスの抜けた音が聞こえて来たかと思えば

 肥満体だった男性は見る見る痩せていき、長身でスラッとしたした男性にへと変貌を遂げた。


「偽名をダンマ、本名をマダンと申します。以後よろしくお願い致します」


 まさか偽名まで使っていたとは、

 とりあえず、ダンマもといマダンに別れを告げ俺は、宿にへと戻った。


 さすがに汚れているアマサを見せると誤解を産みかねない、魔法で姿を消し、宿にへと戻る。


「おかえりなさいませぇ、あら、カエデさんでしたか」


 どこぞの猫耳少女と似たような口調の彼女は女将さんだ。

  俺を泊めてくれた人でなんと言っても人が良い。


「朝は伝え忘れたが俺を泊めてくれてありがとよ」

「うふふ、それはナナちゃんに聞きましたよ」


  ナナちゃんとは猫耳少女のことか? 多分そうなのだろう。


「そうか、それと今夜も泊めて貰いたい」

「分かりましたぁ、部屋は同じでいいでしょうか?」

「·····ああ」


 一瞬迷ったが、ここでアマサのことを考え、広めの部屋やもしくはもう一部屋借りれば透明化した意味がないだろう。

  前と同じ部屋を頼みつつ、風呂を借りる。


「それと風呂を頼む、二時間でいい」

「分かりましたぁ、では風呂場の鍵です。今は誰も入っていないので、サービスでもう一時間追加しときますね」


 それはありがたい。日本人に転生してしまった俺には風呂はどうやら欠かせない存在にへと変化してしまったらしい。

 昨日の今日で疲れた。たまには一風呂浴びてさっぱりしたいものだ。


「ではごゆっくりと」


 女将に別れを告げ、俺は風呂場にへと向かう。檜風呂にも似た木製の風呂場までは来たはいいのだが、ここで重大な事実を思い出す。


「あっ·····アマサいるやん」


 そして、チラッと後ろを見れば透明化を解いたアマサの姿が――


「仕方ねぇ、おいアマサ。風呂入るぞ」

「·····風呂ですか? 失礼ですが、私にそのようなことを許してのいいのでしょうか?」


  まぁ、確かに奴隷だが、別に俺はそこまでだからな。

 ·····などということを考えたが、どうやらアマサ的には別の意味っぽいな


 瞳だけで収まっていた殺気が身体中から放たれていたからだ。

その瞳はもはや殺戮者の目と言っても過言では無いぐらいの濃密な殺気がまるで今からでも殺すと言わんばかりの圧が俺にぶつけられる。


 だが、俺は元魔王だ。神殺しを成した魔王だぞ? こんな小娘·····いや、竜人だからババァか?


 ゴチン!


 強烈な痛みが頭を襲う。


「今、絶対失礼なことを考えたでしょう?」


 別の意味の殺気が放たれ、ゴゴゴゴッと幻聴まで聞こえてくる。

 別にババ――ゴツン!


 ぐらいで怒るなと考えようとしたら、先程よりも強い痛みが襲ってきた。


「また考えましたね?」


 エスパーなのか?


「いや、考えて――」

「考えましたね?」

「·····はい」


  元魔王にも勝てないものがいるのか。何気に初めて敗北を知った。

 本当に恐ろしいのは、神でも魔王でもましてや勇者でもない。アマサだったのかもしれないな


 これが年のゲフンゲフン。危ない、またこっちみてる。アマサが見てる。


 誤魔化しに咳をしながら、先程のアマサの言葉に返事をする。


「まあ、とりあえずお前がいくら俺を襲ってこようとも、俺が死ぬことはないからな。それに安心しろ。俺の仕事が終わればお前次第だが奴隷を解放してやってもいい」

「――ッ!」


 驚くアマサ。凄く目が見開かれている。そして、おずおずと俺に尋ねてくる。


「解放したならばまた私は人類に多大な被害をもたらしますよ?」


 脅しなのか、警告なのか分からないがとりあえず言えるのは


「そんなの知ったこっちゃねぇ」

「へ?」

「俺は殺されない、それだけで充分だ」


 人類に恨みがあるなら、勝手にやってろ。どうせ、俺は死なない。

 勝手が過ぎると思うが、俺は自分の事で手一杯なのだ。別に俺は命令する訳でもない、アマサがしたいなら勝手にしてろ。だが、俺の奴隷であるうちはそういうのは俺の命令以外ではやめて欲しいがな。


 すると、アマサは突然笑いだした。


「あはははッ! そうですか」


 目尻に浮かんだ涙を擦りながら、アマサは言葉を続ける。


「面白いですね。私の御主人様は·····分かりました。御主人様が何者かは存じませんが、その言葉は警告として受け取っておきます。どうやら魔力の量から私よりも桁違いに高そうなので」


 さすが竜人だ。その目は全てを見通す力があると魔王の時聞いてはいたが、魔力までもが見えるとは、

 では、話も一段落したし、早速風呂にでも入ろう·····か?


「カエデさ、ん?」


 その声にギギギっとぎこちない動きで首を後ろに向ければ――


「その方はどちら様でしょうか?」


 どうやらアマサの笑い声に不思議に思ったらしくナナが風呂場に来てしまった。

 いやぁ、あはは!


 とりあえず言えるのことはただ一つ――


「「ご、ごめんなさい」」


 アマサも危険を感じ取ったらしく、俺と共に全力で謝った。

 何よりも、ナナの笑っていない目が怖い。


 それからこっぴどく叱られた俺 (元魔王) だった。

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