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97話:俺達の戦いは終わってない!!

 グリムの手渡してくれた増強剤のようなポーションの効果は絶大だった。俺の中に眠っているとグリムが言っていた潜在能力が一時的に目覚めて開花し、先ほどから続けているプッタネスカとの格闘戦は攻めの一方の展開へと進んでいた。


「がっはぁっ!?」


 カウンターカットから続けて繰り出すアッパーカットの後に、左足の回し蹴りによる重い一撃を、奴の怯んだ表情を浮かべている顔側面に直撃させるように放つ。蹴りを受けたプッタネスカは宙を待って横へずれながら地面に転倒した。


「まだだっ! まだやれる!」

「こいつしぶといな……!」


 負けの筈なのに認めない不屈プッタネスカの姿勢が妙に男らしさを感じさせられる。ならそれに応じてやるしかない!


 この殴り合いは俺のモンスターに対する思いが込められた戦いであるんだ。負けるわけにはいけねぇんだよっ!


「はぁ……はぁ……どうした来ないのか……?」

「ひとつ聞かせろ……。お前はモンスターの事をどう思っているんだ……」


 どうしても戦いの前に聞きたかった事だ。流れで聞きそびれてしまっていたので問い掛けるチャンスが今しかない。


「ふん……お前のその執着心に答えられるかは不明だが。ひと言で言わせてもらおう。私は生まれてからずっとモンスターの事がただの生きた道具としか見ていない。これからもずっとな。そして私の考えた研究にモンスター達は道具としての役目を十二分に果たしてくれた。その事については感謝しよ――がっはぁっ!?」

「……問答無用でブッコロシテヤル……!!!!」


 もう最後まで聞く必要などなかったんだ。奴は人間じゃない。人間じゃなければ殺しても言いと確信を得た。だから間合いを瞬時に詰めて殴ってやったんだ。今の俺は冷静には居られそうにはない……!!!!


「ぬぅあああああああああぁぁ…………ゴホッ」


 闘技場の土に奴の咳き込んで吐き出された多量の血しぶきが撒き散る。そのままゆっくりと奴の下に歩み寄り。


「もう降参しろ。大人しく罪を認めて死を受け入れるんだ」


 らしくない事は言いたくはなかった。だが相手が相手だ。これ以上こいつは生きてはいけないんだ……!


「ふふっ、死ねと。ふははははははっ!!」

「何が可笑しいんだ!! お前のやったことは沢山のモンスターと、そこで戦いの行く先を見守るグリムを傷つけたんだぞ!! それを笑うなんて頭可笑しいだろ!!!!」

「まだだ。まだ終わってはいない! みろコレを!!」

「それは……ポーション……」

「ふふっ見ろ! これはお前を死に。そして世界の人間を支配する力が込められた最強のポーションだ!!」


 天に掲げるそれを愉悦に見ながら勝利を高らかに宣言するプッタネスカ。そのポーションの効能は……。


「お主!! そいつを奪い取るんじゃぁ!! そいつは服用したモノをモンスターの姿に変える魔の道具じゃ!! はやく壊すかそいつを殺すんじゃ!!!!」

「ははははっ!!!! もう遅いぞババァ!! 貴様のおかげで俺はこの瞬間から最強の竜人として生まれ変わる!! みろコレが俺の研究で得た最高の成果だっ!!」


 そして世界を我が物に出来る支配の象徴であるとプッタネスカは話し、蓋を素早くあけて口に含もうとした瞬間。


「間に合えっ!!」


 俺は馬乗りになってポーションを持つ腕を掴もうとした。だが、


『グォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

「がっはぁっ!!!? うああああああああああ!?」


 遅かった。俺は奴のおぞましい変身と共に背後に吹き飛ばされてしまった。

 元いた場所に居たプッタネスカは最初、息苦しそうにもがきながら事切れた後に、ビクンと大きく身体を痙攣させて揺れ動かし、そのまま上半身を起こして天高く盛大に吠えながらその姿を異形の存在、新緑の竜人のような異形の姿へと変身を遂げてしまった。


「なんだよ……」

「大丈夫かお主! あれは不味いのぉ……。どうやら変身は完全ではなかったようじゃ」

「どういことだ?」

「あいつは生きる屍。プッタネスカではない別の生き物に変わったのじゃ」

「じゃあ、あそこで狂気に吠え続けて暴れてるのは……。あっ――!」


 吠えるのを止めたプッタネスカだった異形の存在は、近くにあるゴルドデュエルベアの亡骸に取り付いて乱暴な手つきで肉を喰らい始めだす。


「暴食の欲求を満たす為に貪っておるの……。あのままでは恐らく飢えを満たす事はできんな……」

「俺達も捕食対象になるのか?」

「察しが良くて助かるの。どうやら増強剤の効果がよく言っているようじゃ」

「なんか引っかかる言い方だなぁ……」

「それはともかくじゃ」

「ともかくっておいおい……」

「よいかお主。奴をこの闘技場から解き放ってはいかん。あれはこの世界にいてはならぬ理を外れたモンスターじゃ」

「ようは魔物と呼ぶべきか?」

「マモノか……なるほど。学名は後々にしよう。いまはマモノを討伐する事が先決じゃ。ここからはワシもお主を全力でサポートさせて貰うことにする」

「そういえばここに来るまで忘れてたんだけどさ」

「なんじゃ」

「グリムが大事にしていたご主人様の入ったカプセル?みたいなの。あれはどうしたんだよ」

「ご主人様は……。お主達の仲間に預けた」

「信用してくれたのか?」

「お主の顔に免じて頼んだだけのことじゃ。あやつらは暗部組織の者達じゃ。信用は最初からしておらん。しかしお主の場合は異なる」

「モンスターテイマーの力があるからか?」

「それもあるが。別の理由じゃ」

「なんだよ?」

「わしを心から心配してくれているようじゃから。放浪の旅に出ようとしたわしを引き留めて、モンスター達の楽園に誘ってくれたこと。つまりわしの居場所となるかもしれん所に導こうとした純粋なお主の性格に惚れたからじゃ」

「なるほど。だったらそれに答えられる形で俺も戦わせて貰う」


 ここからは銃を使って全力で魔物討伐に挑もう。俺はボルトアクションライフルを背中から取出し、槓桿を引いて戦闘態勢に入った。


「モンスターを嫌いながら力のためにモンスターを利用する? はっ、馬鹿げた話だ」


 そう話しかけても返事が返ってこない。目の前の餌に夢中になっているようだ。正直グロいとしか言いようがない状態まで遺体が損壊しつつある。


「その結果がこうならお前の野望はここで終わりにしてやる!!」

「うむ。同意じゃ。ご主人様を愚弄した大罪はここで清算させてもらうことにしよう」


 俺達の闘志に気づいた魔物が。


『グガアアアアアアアアアアアアア!!!!』


 と、地を轟かせる雄叫びを上げて戦いに応じてきたのだった。

次回の更新予定日は9月7日です。よろしくお願いします。

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