96話:この私にひれ伏せ人間よ
「あれは!」
闘技場のリングに辿り着くと、ゴルドデュエルベアの側に1人の半裸でスーツ姿の男が腕組みをしながらこちらを向いて立っていた。
「なるほどわしらをご丁寧に待っていたようじゃの」
「誰だよあいつ?」
「紛れもなくプッタネスカ本人じゃ」
「なんだってっ!?」
情報だと姿をくらましたって聞いたはずだったのにっ!? 何故だっ!?
『黒服とよく知っているそこの女ァアア!! 直ぐにここにこい!!』
若々しさを感じながらも威厳のある中年の声。
「……いくか?」
「どのみちあいつがおる所に行くしかないじゃろ」
だよな……。俺は嫌な予感を感じながらもあいつの下へと歩いて行く。
「貴様か。俺様のシマを荒らしに荒らし回ったクソ野郎は」
「…………」
「返事をしない所をみると正解のようだな。俺はプッタネスカ。この都市の三大ポリス組織の1つ。アマノジャクを統括する男だ」
「お前が……モンスター達を苦しめてきた元凶なのか……!」
「ふん、その様子だと相当な執着心を感じさせられる」
態度を変えずに見下げてくるプッタネスカ。精悍な顔つきから来る表情に臆する事無く俺は睨み続けた。
「失礼。すこし身だしなみがずれてしまったようだ」
そういって金髪の髪型を軽く整え出した。舐めてるのか?
「黙って見ておれお主。あいつは油断するところを誘っているのじゃよ」
「ただの身だしなみのセットだったらどうする?」
「そうであってもわしらには関係の無い話じゃプッタネスカ」
「ふん。笑わせてくれるなグリムよ。またお前の大事なご主人様を危険な目に遭わせてやろうか?」
「それ以上ご主人様をバカにするような事はわしが許さんぞぉっ!!」
「おーこわっ」
突然のグリムの怒りにビクッと聞きながら2人のやりとりに耳を傾き続ける。プッタネスカはおこらせた事に対して悪びれる様子もなく、肩をすくめて髪型のセットをオールバックにして整えるのを止めた。
「さて、どうしてくれようかお前達を。あぁ、素直に言わせてもらう。お前らのせいで社会の均衡が崩れちまったよ。とても頭の痛む事だ。我らが築き上げた秩序を乱してくれたのだからな」
「自業自得だ」
「ふん。威勢のいいガキだ。そういうガキをこの手で直々にいたぶるのが私の趣味でな」
「やる気か?」
「そうさ。やろうぜ男同士拳での決着を」
そう言った後にプッタネスカが両手を拳に変えて構えをとる。
「下がってろグリム」
「お主拳で戦えるのか?」
「んなもん無理だ」
「じゃあ何故戦おうとするのか……」
「そりゃあなぁ……」
だってなぁ……。
「こんな熱い展開に水を差すような事はしたくはないだろ? 相手が拳でっていうなら俺は銃を捨ててやる」
「ほう、逃げることはしないのか坊主」
「俺は里中 狩人だ。今からお前と勝負する相手の名。しっかり覚えておけよ」
「カリト。ふむ、いいなだ。私はプッタネスカ・ライオット。お前より年上だが負ける気はせん」
「やつは裏格闘技大会で優勝を何度も重ねてきたツワモノじゃ。拳での戦いは無敗。じゃが、銃とベッドの上では負ける男じゃがの」
「やかましいババァ!? 余計な口を挟むんじゃねぇよ!?」
あれぇ……? もしかしてグリムとプッタネスカってなにかあったのか?
「ふぅ……気を取り直して勝負をしよう。お前にはハンデ無し。好きに格闘技を使って戦え。私もそれに合わせて全力で挑ませて貰うぞ」
「…………」
「お主。戦う前にコレを飲むんじゃ」
「これは……?」
ふとグリムが去り際に緑の液体の入ったポーションを手渡してきた。
「何も言わずにいっきに飲み干せ」
「ああ……」
時間が無いし手っ取り早く決断して飲んでみると。
「えっ? これってモンエナじゃねっ?」
「わしが開発した増強剤じゃ」
「ほう」
味がそれとなく似てたので思わずだったが。効能はどうだろう。
「簡単に言うと。それはお主に眠るモンスターテイマーの能力を一時的に覚醒させる作用があるのじゃよ。効果は10分が限度じゃ」
「十二分に助かるぜ! ありがとうなグリム!」
「うむ。礼は勝利を得てからにするのじゃよ」
「おっ、なんか良い感じに身体から力が湧いてきたぞ……!」
「以外と効果が早いの。お主の体質なんじゃろうな」
とやりとりを続けていたら。
「おいマダか? 早くするんだ」
「ああ、準備は整った。こいプッタネスカ!」
タイムリミットは10分。時間制限の掛かったバトルが今始まろうとしていた。
次回の更新予定日は9月6日です。よろしくお願いします。




