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93話:プラントからの脱出 その2

「ふぅ、とりあえず。ここの警備兵は片づけることができたわ。助かったわねサトナカちゃん!」

「いえいえ、先輩のお役に立てて良かったと思います」

「うんうん、ちょっとは成長したかしらね。さてと、ねぇそこで私達を見物している子は誰かしら?」


 グリムに目線をそらし、何者かとルナ先輩が俺に問い掛けてくる。


「グリムさんといいます。ここの研究所でちょっと訳ありな感じでプッタネスカの研究に協力していた人です」

「訳ありの協力者? それは敵と思ってもいいのかしら?」

「あぁいえいえっ! 違うんですよ。このひとはプッタネスカに取引を持ちかけられて半ば……」


 ダメだ。俺だと説得力に欠けてしまっているようだ。現にルナ先輩の表情が段々と険しくなっていく。すると。


「もうよいお主。ここは私が彼女に説明することにしよう。自分の始末は自分でするものじゃ。お主に尻ぬぐいされるほどに老いてはおらん」

「グリムさん……」


 大丈夫かな……? まぁ……大体の原因は俺なんだが……心配だ。

 そんな2人は面と向き合って立ち。


「ルナと申す者だな。わしはグリム・カースドラゴンと申す、まぁしがない年長の学者じゃ」

「その学者がどうしてここにいるのかしら?」

「話せば長くなるのじゃがよいかの? 急ぎの用事があったのではないのか?」

「私が納得できるような説明ならいいわよ。それ以外だったら容赦しないわよ」

「ルナ先輩なにもそんな……」

「黙っててサトナカちゃん。私の中で敵味方の判別が出来ていない以上。あなたがどう思っていようが関係ないわ!」

「す……すみません……」


 ルナ先輩の今の低い声は怖かった。すごみがある……。俺はその場で黙ってみている事しか出来なくなってしまった。


「ふむ……。お主普段は温厚そうな態度をとる気はあるようじゃが。自分の考えが纏まっていないときには怒りを露わにするようじゃの」

「それが何かしら? 無駄話は避けて貰いたいわね」

「まぁ、そう焦るではない。手短に話す事にしよう」


 それからグリムはルナ先輩にありとあらゆる言葉を使って説明をしていった。


「要はこのプラント。つまりここはわしを軟禁するために設けられた1種の牢獄みたいな所なんじゃよ。背中で眠っているご主人様をプッタネスカが人質として利用しておった。致し方がなくわしの血を奴に提供するしか生きる他はなかったのじゃよ」

「でも貴方のやった行為は国を揺るがす脅威につながってしまったわ。その点についてはどう思っているのかしら?」

「その件については遺憾に思っておる。じゃがわしは反面間違っていなかったとも思っておる。まぁ待てそう早まるな」


 その言葉を受けてルナ先輩が咄嗟に腰元に隠していた拳銃を取り出す素振りをした。それに対して即座に反応したグリムの表情には焦りなど見えず、冷静さそのものを醸し出しながらルナ先輩に制止を求める言葉をかけてきた。


「反省しているわりには余計な言葉を使ってくるのね」

「そう誤解を招かれてもおかしくはないのは承知の上じゃ。じゃが。奴がこのわしを言葉巧みに騙して利用していたと聞けばどう思うかの?」

「騙していたですって?」

「うむ。奴はわしの血を使って世の中を大きく変えたい。病に苦しむ者達を快方する万病の薬品を作るのにはわしの血が必要不可欠じゃと申しておったのじゃとしたら? わしはカースドラゴンの末裔じゃ。世界に混沌を望む種族じゃ。使えるモノは利用して当然じゃと思ってはおるが。よもや人助けと思って良かれとやっていた善意が悪意に利用されていたとしたらどうじゃ?」

「つまり……あなた。騙されていた事に気がついて。プッタネスカが人質に気まぐれに触れないようにと。ご主人様を守る為にあえて研究に加担する振りをしていたと言いたいのかしら?」

「そうじゃの。ご主人様を守るのがわしの勤めじゃ。主従の契約を交したこのわしとご主人様の間には死してもなお続く契約があるからの」

「そう、なるほどね……。サトナカちゃん貴方はどう思っているのかしら?」

「正直。モンスターテイマーとして。ハンターとして。研究に加担したことは許せません。しかし彼女は利用する価値があります。彼女なりの考え方で言わせてもらうと。ここに現れたのは自分を利用してもらうために話がしたいといった所でしょうか。彼女。俺の力についてよく知っているようなんですよ。あと何だったかな。過去の聖邪の竜の大戦を生き延びてきたとか。とにかくこの人は賢者的なお方なんです」

「なるほどね……。サトナカちゃん的にこのグリムには価値があると言いたいわけね。とりあえずこの件に関してはアルシェさんに一任すべきね。私達でどうこうするレベルじゃない気がしてきたわ……」


 頭が重くなってきたと愚痴をこぼしながら、ルナ先輩は目を閉じて右手の指を使って押し当てる仕草をしている。そして。


「とりあえず。この人を警護している最中なのよね?」

「はい」


 おやっ、この感じ的に……。


「安全地帯まで重要参考人を連行するという体裁で連れて行こうかしら」

「あっ、ありがとうございます!」

「まったくスケールが大きすぎて大変だわ……」


 とりあえず。了承してもらえた感じかな?

次回の更新予定日は9月3日です。よろしくお願いします。

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