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91話:混沌種の血を引き継ぐ竜人族の末裔グリム・カースドラゴン

「シンブとはなんだ? チート能力と似たようなものなのか?」

「ふむ。その口ぶりから察するに。お主は能力について把握しているように感じるの」

「大雑把にだけどな。全部隅々までしっているわけじゃない」

「ほう、お主の能力は三大神賦に数えられる至高の能力じゃぞ。そんな事まで知らぬとは。お主いままで何をして生きていたというのじゃ。わしら竜人よりも遙かに短命な人間だからこそ得られる力なのに。実に勿体ない生き方をしておるな」

「俺は……」


 えぇ? 普通に引きこもってゲーム三昧の毎日でしたけど何か? 笑いがこみ上げ来そうだ。


「そちの心から不快な笑いを感じたのぉ。まあ人の子じゃから至って普通か」


 なんかすみません自堕落な人間で!? 呆れた感じで肩を落とし、ため息をつくグリムを前にして苦笑いを浮かべてしまった。


「さてお主に単刀直入に申す。なぜこの扉を爆破させて入ってきたのじゃ。それにお主は部外者なのは分りきっておる。その黒服をこの施設では見たことないからの。何者じゃ?」


 質問を投げ掛けてくるグリムの表情に訝しいという感情が込められているのを感じ取った。どう返答すればいいんだ?


「非武装の学者がここに閉じこもって出てこないって言われてな。それで避難させるために入ったというべきか」

「それは建前じゃろ? 本命を述べよ。このわしに通じる理屈をな」


 んな難しい討論みたいな事できるわけないじゃないかと思いつつ。


「はっきし言うぜ。俺はいまからこの部屋にあるもの全てを破壊する。理由は簡単だ。俺は目の前でモンスターが薬物で苦しむ姿を目の当りにした。だから戦う決意をしたんだ」

「それはエゴじゃな」

「はっ?」

「お前は他人が築き上げたモノを平然と素知らぬ顔で破壊する目的を得る為に自分自身を騙しているようじゃといいたいのじゃよ」

「正論を突きつけて何になるんだよ? あんたは知らないのか。モンスター達がどのような目に遭っているか。一度でも見たのか」


 と問い掛けると当たり前だろといった感じの余裕の笑みを浮かべ返してきた。思わずその表情にムッとしてしまい声を荒げて。


「知っててやってたのかよ! あんたも竜の血を引く竜人なら分るとこはあるじゃないのかよ!?」


 と聞き返すと。彼女は顔を俯かせた後に上げて、


「わしはカースドラゴンの末裔じゃ。世界に混沌を望む種族じゃぞ。使えるモノは利用して当然だ。お主のように短絡的な考え方で言わせてもらえればバカじゃないのと答えさせてもらおうか」


 その容姿としゃべり方に似合わない発言をしたグリムを前にして、


「悪いが本当はお前を撃ちたくはなかったが。ここで始末させてもらう」


 銃を構えて彼女の眉間に狙いを定めた。絶対に外さない距離での必殺攻撃で仕留めるつもりだ。


「それがお主の望む神賦の才を持つ者のやるべき事というわけか。なぁ、お主はすこし勘違いをしているようじゃの」

「勘違い? それはお前が歪んだ考え方をしていることが勘違いじゃないのかよ」

「ふむ。そうか。そのように考えておったのか。もっと有意義な会話を望みたかったが。……モンスターテイマーの力を持つ者が再び現れたのはまさに奇跡と思って喜んでおったのじゃが。少し聞き分けのない少年がその力を宿してしまったようじゃの」

「あぁん?」

「短気は損気じゃぞ。若者――」

「えっ――うそっ」

「ほら、後ろにおるぞ」


 どういうことだ!? ついさっき目の前に銃口を向けられて喋っていたグリムがいたはずだったのに、話の途中であっというまに目に見えぬ速さで、俺は彼女に背後をとられてしまった。


「降伏するかえ?」

「……後ろを振り向いた瞬間。俺は殺されるのか?」


 どう考えてもライフルの長さでは取り回しの関係で間に合わない。さっきの瞬間移動みたいな動きをされてしまえば嫌でも理解できる。


「このわしに銃を向けないと約束するならば動くことをゆるそう」

「あくまで一歩でも動かないことを制約ってなわけかよ」

「そうじゃ」


 背中に何か太くて堅いひんやりしたモノが当てられている。銃だ……しかも口径の大きな水平二連式の散弾銃の銃口だ……。


「モンスターテイマーは本来単体での戦闘は不得意な性質をもっておる。お主は間違った使い方をしておるのじゃ」

「なんでそこまで親切にはなしてくれるんだよ」

「わしもかつて側に相棒がおったからの。ほら、あそこで眠っている者がわしのかつての相棒じゃ。いまはもう息をしておらん。人間の身勝手な悪意で凶弾に倒れて、いまはこうしてわしが大切に身を預かっておる」

「えぇ……」


 言葉で示される方向に目を移し、人の入った培養液の水槽をマジマジと見つめた。あれって標本じゃないのかよ。てか生きているのか?


「死んでおる。そう思った時もあったの。ただわしにとっては大事なご主人様じゃ。主人を側に置きたいという欲望はわしが望むところ。そしてここはわしと相棒が暮らす大切な居場所じゃった。だがもうここはその場所ではなくなってしまった」

「…………」


 俺、なにか間違った事をしてしまったのか……? 


「じゃあ、なんでここを選んだんだよ。ここはお前を利用する為に用意された場所じゃないのか」

「そうじゃの。あのプッタネスカという男は狡猾じゃからな。今まで出会ってきたスーパーヴィランの中でも少々面倒な男じゃからの。このわしの力が無ければ今頃はどうなっていたか」

「話がみえねぇけど。あんたの能力はなんだよ」


 そんな話をされたら気になるじゃないか。


「混沌種の血を媒介にモンスター立ちを狂暴化させる能力じゃ」

「それってつまり」

「そうじゃ。お主が出会ったモンスター達はわしの血を入れられて狂ってしまったもの立ちばかりじゃ。混沌種の血は選ぶ。適合しない者は拒絶の道を歩ませる」

「逆は?」

「わしの様な竜人に成り代わる。ただし悪意を持つ者が適合すればカースドラゴンの恩恵を受けることにはなるがの」

「プッタネスカは何がしたいんだ。教えてくれ」

「混沌種の血を使って自身の身体に合う増強剤を開発することが奴の望みじゃ。徒労に明け暮れていたわしとご主人様は奴と出会い。話をし、そして合意に至ったのじゃ」

「あんたはそれで良かったのかよ」

「混沌種の血を引き継ぐ竜人族の末裔として使命を果たさなければならぬ身じゃ。自分を犠牲にしてでも利用できるモノは利用して生きていく。それがわしら一族に与えられし宿命なのだからな。これも全て先の大戦で敗北した我らが追わずにいられなかった永遠の足かせなのじゃ」

「大戦ってなんだよ」

「お主に言っても信じてもらえぬじゃろ。なんせ約240年前に起きた聖邪の竜達による戦いだからの」


 光と闇の戦いってやつか。これ以上は根掘り葉掘り深掘りは出来そうにないな。


「でっ、あんたこれからどうするつもりだ」

「そうじゃの……。また放浪の旅にでも赴くとするか」


 後ろに突き立てられていた銃が離れるのを感じる。そしてグリムが俺の司会に入るようにご主人様の入った培養液の水槽に歩いて行くと。


「んっしょ。ふぅ……」


 その体格にあわない身動きで水槽を持ち上げ、そのままどこからと無く取り出した背嚢を使って背負い上げてしまった。重そう……。


「ひとつ忠告しておこう」

「なんだ?」

「モンスターテイマーは短命の寿命を背負う。ご主人様も運命に逆らえず凶弾によって殺されてしまった。くれぐれも気をつけるのじゃぞ」


 そう言って俺の前から立ち去ろうとした。


「なっ、なぁ!」

「ん?」

「もしいくあてがなかったらさ。ボルカノシティーにあるモンスター牧場を訪れてみると良い! そこに俺がテイムしているモンスター達が暮らしているんだ。まだボロボロだけどいつかは俺の稼いだ金で楽園を作ろうと思っているんだ。俺は歓迎する。いつでもいい。待ってるからな!!」

「…………ふむ」


 神妙な面持ちで考え事をし始めるグリム。

 言えた。つい出来心と言うべきか同情心というべきかな。いつの間にか俺の心の中にはそんな感情が芽生えていた。


「頭の片隅にでも入れておこうかの。では」

「おい待ってくれ。そんな早く分かれる必要はないだろ。俺も一緒についていくよ」

「なるほど。モンスターテイマーの力をしばらくの間このわしに貸してくれるというのか? それは取引か? 提案か? それともわしを求めておるのか?」

「ただの善意だっ!?」

「ふむそう声を荒げるではない。よいぞ。わしの隣について歩くが良い」

「そとは戦闘状態だ。詳しくは分らないけど。俺の上司が戦っているんだ。できればそれに加勢して撤退したいと思ってる」

「ふむそれは心強い提案じゃ。少々荷物があるからの。護衛が増えるのはありがたい事じゃ」

「ならいくぞ」


 こうしてなんだか不思議な感じにはなるが。俺とグリムはしばらくの間パーティーを組むこととなった。

次回の更新予定日は9月1日です。

公募用の作品を書いた後だったので、ちょっといつもより気合いを入れて書いてみました。(普段からその状態で頼むと言われそうな気もしますが……汗)

ちょっと賢者ちっくな竜人と出会いを果たしたカリト君。今後彼女が彼のチート能力にどう影響を及ぼしていくか楽しみですね。読んでくださっている皆様の期待にこたえられるような内容になれるよう頑張りまーす! なお、この作品を書いている作者もこの作品のファンです。ただそれが言いたいだけのお話です!

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