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89話:爆破任務 その3

「こちらプラットホーム前警備班。列車が到着」

『こちら管制。直ちに車内にある物資の運搬をおこなえ』

「了解した。直ぐに取りかかる。通信終了」


 列車がプラットホームと呼ばれる駅に到着する前に、俺達は事前に車体の上に張り付く形で身を隠していた。


「物資ですか……何を運ぶのでしょう?」

「中をあけてみないと何とも言えないわね。とりあえず。このままやり過ごす事にしましょう。もうすぐロッソちゃんの言っていた点検警備が始まるわ」


 点検警備とはなんだろうかと思い出しながら、ロッソ先輩が無事にステルスで制圧してくれることを願う。到着したと同時に、ニンジャランでロッソ先輩は既に警備の目をかいくぐって周辺に身を隠している。ハンターの俺でも居場所がつかめないとなると、相当なスキルの持ち主なのは間違いない。


「こっちは異常なし。そっちはどうだ?」

「うーん、なんか飲んだ後の酒瓶が転がっているんだが……。なんだろうな?」


 飲んだ後の酒瓶だって……? まさか……。


「バレてしまいましたか……?」

「はぁ……ロッソちゃん。自分の始末もできないのかしらね?」

「うぁ……」


 ロッソ先輩のミスに少しムッとした表情を浮かべているルナ先輩を見て、思わず気持ちがシュンとしてしまいそうだった。怖っ。


「なんで酒瓶かってな……。分らんな……」

「車内に居た連中が飲酒してたとか? 客室でサボってたって局長にしられたら面倒だな……」

「どうする……?」

「…………見なかったことにしておこうか。その酒瓶は警備室に持って行っておけ。それでつじつまがあうだろう」

「りょーかい」


 なんか相手の身勝手な理由で救われた気がするっ!? そう静かに心の中で突っ込みながら様子を伺っていると、点検中の警備員の2人のうち1人が現場から離れていった。手にある酒瓶を警備室という場所に持ち運ぶためだろう。


「それにしても随分と警戒意識の強い警備員ばかりですね。ラフな格好をした奴らがいない」


 さっきから様子を見てて思ったのがそれだ。全員、密造なりで作られたアサルトライフルに中装備の防具で身を固めて警備をしている。何を想定しているのかは不明だけど。最初から厳重に守っているというのがひしひしと伝わってきているな。


「狙撃でどうにかできそうな相手ばかりじゃなさそうですね……」

「だからこそのロッソちゃんよ。彼はバックアタックの得意な子だからね。まぁ、さっきみたいな碌でもないミスはするけれど」


 随分と根に持っていらっしゃるようだ。そして。


「あっ、ロッソ先輩だ。てかはやっ!」


 前方80メートルくらいだろう。暗闇からぬっと現れたロッソ先輩がそのままスタタッと、音も無く走って行き、門の前に立つ警備員をそのまま拳で制圧した。まさに電撃的な流れだった。更にそのまま先輩は俺達の近くにいた点検警備中の警備員の背後に立ち、そのままチョークスクリーパーを仕掛けて意識を奪った。


「またせたな2人とも。これであらかた制圧できたぞ」

「先輩。まだ1人ここに戻ってきていない奴がいます!」

「おっ、そうか。了解した。とりあえずここらにある敵の装備を全部奪っておけよ。その姿で内部に侵入するからな」

「わかりました!」


 サイズとかは兎も角。安全に侵入できるならいいだろう。俺は列車の上から飛び降りて、そのまま近くで倒れている警備員の身ぐるみを剥がして着替えた。ちょと臭うな……。


「見知らぬ男の身ぐるみを剥がして略奪だなんて……嫌いじゃないわ!」

「変な事をいわないでくださいよルナ先輩」


 着替えを終え、門の前で警備員の身ぐるみを剥がしている最中のルナ先輩の下に歩いて近付くなり、そんな言葉を聞かされる自分。とても嬉しそうにやっている先輩を見て、


「あぁ、俺はこんな大人にはならないぞ」


 と、率直に思うのだった。


「さて、おふざけはここまでにしておきましょうか。私達はここの警備員よ。やることは分るよね?」

「えと」


 何をするんだったけな? 確か物資運搬だったかな?


「列車にある荷物を持ってきてここに集めればいいでしょうかね?」

「そうね。その方が怪しまれないかもしれないわ」

「了解です」


 とりあえず手当たり次第に列車の中にあった木箱を全部元いた場所にかき集めてみた。すると。


「おう、お疲れ。すまんな新人。お前にまで手伝わせてしまうとは。いいぞそのまま門の警備に取りかかるんだ」


 ちょっと偉そうな感じの警備員が俺達の前にやってきた。新人って俺の事だろうか?


「あっ、はい」

「ん? 三等兵何を言っているんだ。新人はこっちだろ?」

「す、すみませんいきなりだったので」

「……まぁいいだろう。とりあえず物資は後の連中に任せることにしよう。ほら警備室に戻るぞ。暖かいスープが冷めちまうぜ」

「お、お供します!」


 どうやら俺は3等兵と呼ばれているらしい。で、新人がルナ先輩というわけか。……えっ、てことは……。


「頑張ってサトナカちゃん!」

「えぇ……」


 単身俺だけ潜入って事になるのですかっ!? てかロッソ先輩はっ!?


 隊長と思わしき警備員の隣を歩きながらさりげなくキョロキョロと辺りを見回すと。


「あっ……」


 ロッソ先輩が高みの見物で鉄骨の上にしゃがみ込み、俺にむかってサムズアップをしてニッコリと表情を浮かべていた。何がグットだよっ!!


 こうして俺は単身で目の前にそびえ立つ原子炉みたいな重厚感のあるプラントに潜入する事になってしまったのだった……。無理ゲーじゃね?

次回の更新予定日は8月30日です。よろしくお願いします。

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