6話:遭遇
しばらく森の中を歩いていると、なにかの気配を感じた。それと変な臭いも漂ってきている気がする……。
「イカ臭いなぁ……」
なるほどグレゴールワイバーンの体臭はこんな感じなのか。文献では湿地カエルの雄が放つフェロモンの匂いと同じらしい。それを逆手にとって雌のカエルを捕食することもあるのだとか。
「まずは外周の様子を探ろう……」
あたりを見てみるもグレゴールワイバーンの姿が見当たらない。だが臭いはするということは確かにいるのは間違いない。下手に目の前の広い場所には歩けそうにないな……。
「囮のアイテムがあればな……」
貧乏ハンターなのでそこはもう自力でやるしかないか。
「でも不意打ちされかねないし……どうしたものか……」
このまま前に進むしかないのか……? そう考えていると。
――ガサ。
「んっ、あれはフォレストディアーか。臭いが漂っているのに警戒心なさすぎだろ」
前方の茂みからフォレストディアーの雄が1頭姿を現した。辺りを見回している雄のフォレストディアーはここが安全だと思ったのだろう。地面に生えている雑草を食べ始めだした。そのままムシャムシャと夢中になっている。
「ん? あれ……」
ふと、フォレストディアーがいる場所から見て奥の方にある茂みが少し揺らめいていることに気づいた。そう思った次の瞬間。
『ギュツ――!?』
「えっ!? 消えた!?」
それは瞬く間の出来事だった。茂みの中でフォレストディアーの断末魔が聞こえる。その叫び声を耳にしてから本能が逃げろと訴えかけてきている。何かが本当にいるっ……!!
「やっ、やばいって……!」
もうこの場から立ち去りたくて仕方が無い……! でも、引き下がることも出来ない……。そう葛藤を続けていると。
――ドスン!
「あっ……」
既に食事が終わっていたようで……。
『ぎゅるるる……』
「ひっひぇっ……」
茂みからグレゴールワイバーンがその姿を現した。口元からフォレストディアーの片足がはみ出している。それに口周りが赤黒く染まっている……。
「もっ、もうおしまいだぁ……」
このモンスターと戦えっていうのかよ……。
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