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399話:対峙 機械兵器――シャーマン 4

「へーい、おねーさーん。私と楽しく遊ばない?」

『先は良くも私の心を弄んでくれたな……!』

「あなたの心が弱いからだよー。まっ、私の権能に逆らうなんて。あなたみたいな一般人には無理で。旦那様を除いては確実にあたしのお人形さんになってくれる。だから旦那様の事が好きになっちゃったのよねー」

『どうしてその下りでのろけ話に着地するのよ!?』


 戦車の拡声器から聞こえてくる悔し涙の声を聞き流しつつ、着々と作業に取りかかる。構造については先ほどのデータベースでアクセスした時に把握はしており、AIで稼働させる箇所をマニュアルに変えつつ、元はといえ人が乗れる戦車として基礎的な設計が出来ていたようなので、その流れに合わせてカスタマイズ調整をおこなえば良いわけだ。


「よし、リリィ! こっちの準備は完了したぞ! 急いで安全な場所に退避するんだ!」


 少し間を開けてナノマシンを介した通信を送ると。


『待ってて。今すぐそっちにいくから。あぁんもう! ネチネチと機銃掃射で狙ってこないでちょうだいよ!』


 外ではグレネードランチャーが射出する榴弾の爆音と、戦車の機銃の連発する発破音が協奏し合っている。


「援護は必要か?」

『心配しないで。これくらいなら幾らとでも修羅場をくぐり抜けてきたんだから』


 外の様子はまだ内部モニターの起動準備が完了していないので把握はできない。闇雲に全身でもしてみるとなれば、地上にいる彼女を巻き込んだ大惨事が発生するわけであり。


『よいっしょっと。ダーリン。急いで開けてちょうだい!』

「おう」


 着座している右腕付近にある砲塔開閉スイッチを操作入力すると――


「ふぅ、疲れたよもう……」

「ご苦労さん」


 汗まみれの姿で内部に降り立つと、リリィは俺の背中に抱きついてきた。


「汗が凄いぞ……」

「いいじゃん。私の濡れた姿も魅力的でしょ?」


 それは、まあそれで良いと思う。


「どうだろうな」

「ふふ、君って本当に心の読めない人だからさ。こうして言葉を交わしてやり取りが出来るのって。世界中でどこを探しても1人だけ。カリト君。君の心は触れがたくて。そして私が今までに出会ってリーディングしてきた人の中で自分の心をかき乱しくれるような存在なの」


 愛する言葉を耳元で囁かれながら、彼女の色欲の力による精神干渉を、チート能力が自動的に無害化の処理をしていく。


「この戦いが終わったらなにしようか」

「身も心も燃え尽きていくような大人の遊びがしたいなー」

「二人目が欲しいか?」

「ふふ、少しだけ考えているかも」

「じゃあ、時間に余裕を持てるように頑張るぞ」

「サポートは任せて頂戴」

「できるのか?」


 砲塔内部は複雑な機械類で配置されおり、彼女が触るのには不十分なモノばかりである。


「射撃くらいなら誰でも出来るでしょ?」

「成る程。それだったらこれを――」


 俺の簡易的な説明の流れと共にリリィが砲手兼機銃手を担当する事になった。自分は操縦手と車長に徹する事ができる。


(AIとマニュアルで動かせるようになっている理由はこういう事を想定していたのか……少し勿体ないか……)


 考えても仕事でしたままであり、後でゆっくりと趣味の感覚で機械いじりを楽しむ事にした。そして――


『決着をつけさせてもらうぞ』

『…………』


 辺りに広がる荒廃とした格納庫内で2機の戦車が面と向き合って対峙している。


『イザベラ』

『何?』

『あたしの名前はイザベラだ。貴様の名前は?』


(名乗りを上げて何がしたいんだ?)


 疑問に思いながらも、俺とリリィはそれぞれの名前を告げる。


『その2人の名前。確かにあたしの胸に刻ませてもらったわ。ここからはお互いに機械を操る者同士での戦いよ。いい、どちらかの機体が爆散するまで。この戦いは終わらない。文字通りのデスマッチよ』

『気取らないでさっさと戦いましょうよ』

『……いいだろう。その余裕がどこまで続くか試してあげるわ……こい……!!』


 戦いが始まる。


「行くぞリリィ!」

「ええ、いつでもオッケーよ!」


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