396話:機械兵器ーシャーマン
室内の調べを終えた後に、俺達はナノマシンが保管された保管庫を発見した。
その後に、事前に先ほど見つけていたPC端末から情報を抜き出すのに成功しており、印刷機からプリントアウトしておいた紙の資料を頼りにして『ナノマシン』の使い方を学んだ。
――しかし、どうしてこの異世界にPC端末が存在しているんだよ。
疑問は重なっていくが、この組織はもはや時代の最先端を行く集団である事には違いないし、いともたやすく何も無い知識からの発想で産み出した事も考えられる。
「俺以外にも異世界人が存在していて。そいつが先進技術の起点。つまり」
「何の話をしているのかは判らないが。そのイセカイ人っていう奴がさ。相当な頭の良い奴だと思うな」
「ああ。そう断言するしかないだろう……」
「曖昧に感じているのか」
「ああ。偶然にも閃いたかもしれないからだ」
とにかくナノマシンをお互いの身体にいれなければならない。
「まずこの――水銀のように。液体状に形成されているナノマシンが入ったガラス容器のカートリッジを専用の注射器にセットする」
「自分の身体に異物を注入するっていうの……あまり好きにはなれないな……」
リックの不満も理解できる。しかし、資料によると。この方法でなければナノマシンは使用が出来ないとわかっている。
「じゃあ先に自分が試しにやってみる。次はリック。お前が後で自分で用意した注射器を使ってくれ」
「仕方がないか……」
「お互い様だ。生きて目的を達成するのには痛みが必要となるじゃないか」
「選べない選択権っていうのは……思うところはあるが……」
互いの言い分を述べつつ、自分たちの身体に注射針を刺してナノマシンを投与し終えた。
「ん?」
投与から5分が経過した所で、身体に不思議な感覚が湧き上がるのを感じ得る。
「リック。すまないが無言で俺を意識して心の中で語りかけてみてくれないか」
「例の誰かを念じて話すやつか」
資料によると。ナノマシンは脳から末端神経までの間で体内に流れる電気信号を倍加した後に吸収伝達し、空間に存在する電磁場を介して投与者に限定した相互の通信行為が行える機能がある。
『それにしても。人間の電気信号の流れを阻害しない動きで。人とこう会話できるのは凄いよな』
いま脳に伝わって聞こえてきたのはリックの声だ。
『ああ。これのおかげで電子機器を用いた通信をしなくても。情報の共有ができるようになったのはデカいな』
つまり戦闘中に、最初から最後まで無線機を片手に立ち止まって通信をしなくてもいいようになる。
『さてこれからどうするんだサトナカ。このエリアを探索して何がしたい?』
『そうだな……』
漠然とした考えで溢れてはいるが。
『とりあえず全容を把握する為にも。さっき収集していた資料を頼りに行ってみたい場所があるんだ』
『具体的には?』
――無人機械兵器『シャーマン』計画について。
『この世界にあって欲しくは無い物を壊す事にしようか』
それは人の文明において、手には余る大量破壊兵器だと感じたからだ。
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