392話:居住区画における対話
通路で遭遇した哨戒兵達の傍聴を終えて、俺は通信報告をしていた際に仲間割れをしていた兵士の後を追いかけていた。
「え?」
丁度良い感じに誰も来ない食料庫を行き先で見つけていたので、その尾行をしていた兵士をその室内へと誘う為に罠を仕掛けた。
「……なんで食料庫に電子音が聞こえるんだ?」
(右回りに旋回した後に歩き出す……大股で10歩の感覚で食料庫に向かって歩く音が聞こえてきている……)
そう耳を研ぎ澄ましつつ室内の暗闇に擬態して潜伏を続けつつ、相手が俺の仕掛けた罠に掛かるのを待つ。
「ふぅん、なんだよあの赤く光ってる電子機器は……てか、さっきの通信で蓄電池の残量が無駄に無くなっちまったから本部にも連絡できないじゃねぇかよ……ムカつくぜ……」
(敵の通信機器はどうやらあまり長持ちのしないバッテリーを用いて運用をしているらしいな……)
事細かな利用限度の回数については不明瞭ではあるが、こちらの潜入作戦にはそれなりのアドバンテージにはなるだろう。
「……拾って他の奴に連絡させて任せるか……」
ビーコンを拾おうとして兵士が室内に入ってくるのを物陰で見送る。
(麻酔の威力は最弱でいいだろう。)
すかさず麻酔矢をかけた弓を引き絞り、兵士がビーコンを拾い上げたタイミングで狙いを首の辺りに視点を定めてスナイプする。
「いっ!? な、なん……だぁ……?」
バタンと横ばいに倒れて睡魔に襲われることになり、兵士はその場で寝息を立てると共に眠りについた。
「よし、話をする準備でもしようかな。武器とか色んなモノ。あとは椅子で対面に座って話をするのもいいだろう」
そうも思えば行動に素早く移す。麻酔の効力が失せるのはせいぜい5分。それまでには終わらせておきたい。
「よし、完成」
俺は簡易的なテーブルと椅子に、食料庫にあったインスタントコーヒーを拝借して、食堂から見つからないようにお湯とマグカップをカッパらい卓上に置いて香りを引き立てながら2人分を注ぐ。
「……なんだこのにおいは、コーヒーか……?」
「目覚めたか。気分はどうだ?」
「……誰だっ!?」
「落ち着け。敵意はない――ただの……通りすがりの客人だ……」
「軍服の格好をしている客人がなんで居住区画にいるんだよっ!? どうみてもお前は兵士だろ!? おい誰か! ここに敵兵がいるぞ!」
「無駄だ。あんたのお仲間達は全員。別室のシアタールームで大人の映画鑑賞を愉しんでいる所だ。無線で通信するのは困るから、お前の腰に下げていた機械は預かっている」
「…………」
「どうだ? 俺と話す気にはなったか?」
まぁ、これだけ言えば分かることもあるはず。
「で、俺と何が話したいんだ?」
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