388話:触手機械人間イゾルデとの戦い 5
2024/03/13の更新はお休みさせて頂きます。次回の更新は3月14日になります。
イゾルデとの戦いにおいて一番に注意すべきなのが――
『いない……だと……?』
「…………」
――相手が持つ機械仕掛けの探知能力に引っかからない事だ。
(一矢で場所を転々として狙撃をしたいが……)
狙われたと感じた瞬間に、イゾルデはこちらの居場所を特定して攻撃を仕掛けてくるだろう。
その為にも、今までの経験が自分の生死を左右しており、ハンターとして磨き上げてきた潜伏能力を相手に見せつけるチャンスだと思った。
(おまけにこの迷彩能力が高くて高性能な迷彩服のステルス効果もあってか。機械の力に頼り切っている相手には充分使えるな……)
しっかりと矢をつがえて引き絞り狙いを定める。一撃死を狙って頭部を射貫くようにして飛ばした。
『ぐっ――触手が……っ!?』
息を殺した矢の一撃は頭部からはずれたものの、イゾルデの得意としていた触手に命中した事によって、その絶対的な防御力をもつ動きを封じることに成功する。
(銃とは違った武器の良さが出ていていい。これはルドガーの言っていた事も頷けるな)
作戦に入る前の前日に。俺とルドガーで弓武器の事について話していた事がある。
『ご主人。いい。弓は銃とは違って良いところが沢山あるの』
「ふむ。でも弓は技術力がもろにアウトプットされて反映される飛び道具だぞ。それをどうして俺に勧めてくるんだ?」
『それはね。弓はご主人の得意とする戦い方にとても似合っているの』
「まぁ、俺は基本。狙撃手でハンターの仕事を熟しているからな……。銃声に関しては消音器を銃口につければ問題ないだろうし……まぁ、そのせいで若干威力が低下して。ワンキルする確率が落ちるのは仕方が無いと。そう割り切ってはいるしな」
『ルドガーが勧める弓はウーサ。ウーサは神様が十二獣の1人の英雄に与えた最強の弓なの。ルドガーのおばあばはその英雄様と一緒に戦った誇り高き獣なの。だから信じて。ウーサはご主人の役に立ちたいと御願いしているから』
(感じるよルドガー。自然な形に馴染んで弓をつがえては撃つまでの動作がとても楽しい……!)
まるで生まれてからずっと一緒にいるパートナーのような武器だ。
『くそ……! お前の本気の戦い……この戦い方が狩人としてお前の領域だったとは……!!』
まあ、寂しそうなので話しかけてやる。
「そうさ。これが俺の領域。ハンターという職業柄。モンスターとの戦闘では見敵必殺。完全潜伏による擬態。広大な大地における忍耐力と生存能力。そして何よりも――」
狩る側が狩られる側になる瞬間が訪れる。
「――1度たりとも狙った獲物は逃さないという執着心が産み出す狩猟の高みと、達成した事に対する悦びに加えて――」
『しま……った……』
神弓ウーサ第一の能力『風纏の封矢』が発動する。これにより、ウーサで撃たれた被弾者は自身が操る武具の制御を失い。一定時間の間だけ矢に込められた能力よって力の発動が封じられる。
つまり、イゾルデは1度目に触手の制御を封印されて、2度目に自身の機械仕掛けの身体の制御を失ってその場で跪く事になった。
「つまりお前が矢傷を1度でも受けた時から戦いの終わりが始まっていたんだよ」
『余りにも理不尽……なんという強烈な一撃だ……』
「その矢には被弾する度にに無効効果が重ね掛けがされていくデバフスキルがあってな。個体差によっては違いがでてくるが。どんなに強い奴でも。最大5本の矢傷を受けければその能力の影響を受けて心臓を動かすことが出来なくなり死ぬ事になる」
『俺が受けた矢傷は2本……だ……この状況ではもう俺には勝ち目はないだろう……』
「今すぐ楽にしてやるよ。ありがとう。楽しい戦いだった」
今から悲しい物語が始まろうとしている。
『あばよイザベラ。後の始末は任せたぞ……』
その言葉が言い遺す最後の言葉だと理解し、俺はイゾルデの頭部を狙って射貫いた。
「終わったな……」
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