387話:触手機械人間イゾルデとの戦い 4
自分が使うライトマシンガンの素材にはドラゴン系の材質を使っており、長時間の連続射撃にも耐えられる。
内部機関の構造も元々にベースとしていた重火器を参考にしていた事もあり――
『かれこれお前がその銃器を使いだして5分が経過しているが……何故……壊れないのだ……?』
――長時間の使用にも堅牢に耐えられることが証明できて満足している。
「言っただろ? このマシンガンは壊れないように特別な材質を使っているんだと。それよりも。お前がぶん回してる槍もそろそろ壊れてもいいんじゃないのか?」
意趣返しに聞き返すと、イゾルデはニヤリと笑みを浮かべて答えを返してくる。
『ぬかせ小僧。これはお前が言ったように壊れない特別な材質を使った最強の機械槍だ』
といいつつ、銃弾の弾幕をいともたやすく切り開てゆき。再び間合いに持ち込もうとしてくるので――
「今のお前ならこれでも良いくらいだな!」
――すかさず亜空間から投擲武器を、イゾルデが見出しているであろう進行方向に向けて牽制の意味を込める共に投げつけた。
『ぐぅぉあっ!?』
「おっと。意外にも隙だらけじゃないか」
『……いいぞ……お前のその一撃はこの槍の一閃に添えて返してやるよ……!!』
受けた爆風と破片のダメージを受けた直後。イゾルデはマシンガンの弾幕を受けるのを回避するための行動に移ると。
『いま……この瞬間……俺は生を感じている……』
「何が感じるんだ? 俺達がしているのはただの殺し合いだ。そこに美徳なんて何もない」
『小僧もわかるさ。戦士は戦う事で様々な感情と共に生の喜びを感じることになるんだ……』
「戦士が戦場で感じる生の喜び……」
意図している言葉の意味にはピンとしたモノは来ないが。
「勝つ事に対する……渇望を感じているのか……?」
『それもあるさ。そうでなければ死が隣に待つだけの下らない人生に成り下がる』
イゾルデは過去の自分を語った。
『自分が生身の人間だった頃は傭兵として世界各地の戦争にかり出されては戦いにあくれたものさ。今の身体になっては……何も感じることの出来ない毎日ばかりだ……』
彼は若い頃に大きな戦傷を背負うことになり、戦士生命を絶つことを迫られた。
『自分の手元に当たり前のようにあった戦いに対する欲求を満たせなかった余りに……俺は自暴自棄になり……喧嘩で人を無駄に傷つけ……酒で疼く身体から目をそらすようにして逃げていた』
(俺もハンターをしていると危険な目に遭ったりはするから覚悟はしているつもりだ)
だが。イゾルデの場合は立ち直る事ができなかったようだ。
『そう思い込むようになって2年が過ぎた頃に……俺はボスと出会った』
「ボス……」
『あの方は俺に戦場という居場所を再び与えてくれた。この機械仕掛けの身体もそうだ。俺のこの生身でいる右腕から右手を除き。その他の身体機能は戦場で受けた傷が原因で後遺症を患うことになり。禄に満足な生活が送れずにいたんだ……』
どの世界でも同じなんだという事を聞かされても。相手にしている限りは同情は出来ても、この手にしている銃の引き金を指から離すことはしない。
『お前も興味はないか? 今ならチャンスだぞ? お前もサイボーグの力を手にしてみないか?』
異世界に来る前の自分なら興味をもって話を聞いていたが。今になっては――
「興味はないね。俺はサイボーグの力なんかに頼らなくても生きていられる」
――ただの子供だましにしか聞こえない甘言だった。
『そうか……よき戦友になりえる相手と戦っていると思ってたが……残念な……』
思い馳せて貰っても勝手だと思いながらも、攻撃の手は止めない。
「そろそろ決着をつけるぞイゾルデ!」
『……いいだろう! 俺はもう生きた人間ではない。死を恐れるあまりにそれを乗り越えて超越した人間だ。何も恐れることなどない! この身体で……俺はボスから譲り受けたモノを返さなければならない……!』
姿をさらけ出したイゾルデの手には槍とは別にP90が右手にあり――
『アンバランスな生き方も美しいものだ』
――破損させたはずの触手を再び再換装して俺の前に立ちはだかった。
(なら。俺もこの武器ではなくシンプルにいこうか……!)
「武装顕現。神弓ウーサ!!」
俺がもつ武装顕現で呼び出せる中で最強クラスTear『S』の武器を呼び出して手に取り構えた。
『貴様も本気を出してくれるのか。その心意気に感謝しよう。小僧。名は何という?』
「里中狩人だ」
『サトナカ……カリト……奇妙な名ではあるが。お前の事を愛する者が大事に思って名付けたのだろう。愛を感じるが……ここでは無用の長物にすぎん……』
その言葉を皮切りに俺達は最後の語り合いを始める事になった。
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