386話:触手機械人間イゾルデとの戦い 3
2024/03/10 いくつかの加筆修正作業を行いました。表現描写に少し変更を加えております。
「さあ、2回戦の始まりだイゾルデ!」
相手の言葉を待たずに、イゾルデの得意とするキルラインには入りたくはないので、武装顕現の力で装備したライトマシンガンを腰に抱えて引き金を引き絞り発砲する。
『無駄な事を相変わらず繰り返してゆくとは。貴様。それでも戦士としての誇りは無いのか!』
音速で飛来する銃弾を機械仕掛けの槍で振り回して受け流し、イゾルデは自身の掲げる信条とは添わない俺の戦いに不満を抱いて吐き捨てるように問いかけてくるので。
「俺はこの戦いに何の信条を持てと? 俺達は銃と槍を用いて殺し合おうとしているだろ? そこに何の美徳があると言いたいんだ?」
絶え間なく弾幕を――槍で防戦を継続するイゾルデに浴びせて相手の動きを制御しつつ、質問を質問で返して相手の腹の中を探る。
『死。そこにあるからこそ。人間は常に強く美しく生きている事が許される。我ら戦士は。古来から代々の祖先によって受け継がれてきた血の鎖により縛られてゆき。その世代の中で起きた戦乱の世の中で戦いに明け暮れ。多くの血を誰彼と構わず浴びては一喜一憂する日々を過ごしてきた』
「くそっ、こいつ……饒舌になりだした途端に身体能力が向上して俊敏に……!?」
槍の振り回しでの防御態勢に加え、イゾルデがその才覚とサイボーグの身体機能を活かした不規則な回避行動を始めた事によって、こちらで振りまいていくライトマシンガンの弾幕が分散されて薄くなり。
「このままだとやられる……!!」
その隙を突くことで、刺突の一撃を与えようと俺に肉迫してきている。
『そんな貧弱なマシンガンで何が出来ると思ったのかが知りたい』
「おまえを倒すならコレで充分だと思って用意したんだよ!」
『いつまでその機関銃を撃ち続けているんだ。そろそろ銃身が加熱で耐えきれずに溶解するぞ』
一般的にライトマシンガンは無理な長時間の発砲を継続すると、銃身が早くに摩耗し弾詰まりを起こしやすくなったり――または銃弾の発砲で生じる高熱にあてられ続ける事でオレンジ色に変色して発熱し、最悪の場合は銃が溶解現象を引き起こして大破する。
もちろん武器を構えていた人間も重傷を背負うことになる。
なので一般的な使い方は散発的な間隔射撃による運用が望ましく。
『そうなればお前は後が無いぞ?』
普通の戦い方ならば気の狂った人間のする事だと思われても仕方が無い。
「それはどうかな?」
終わりの無い弾幕を――イゾルデの忠告を無視して浴びせていく。
「俺はこう見えてもモンスターを狩る事を得意とする人間だ。その過程で得てきた素材は何に使っていると思う?」
『知らぬが……まさか……』
イゾルデは俺が返す言葉に気づきを得たようで。
『そのマシンガンはモンスターの素材で出来た特別な武器だと……?』
「そう。その通りだ。これは狩猟用に開発していたが。お前みたいな常軌を逸した超人戦にも応用が利くと判って。今は試作段階で開発が止まっているが。今後に想定される。数多の超人戦に備えるための資料作りの一環としてこの場を利用させてもらっている」
この戦いで得た戦闘データを元にして、今後に備えた戦いを視野に添えている。
「この戦いは俺達にとって生きるか死ぬよりも。未来を見据えた大事な語り合いをしているんだ」
『自然の力で生み出された技術と。我らハウンドウルフが持つ先進技術。そのどちらかが優れているかを証明する為の戦い……面白い! ならば。貴様が誇れるその技術がどこまでこの身体に通用するのか。命を掛けてでも教えてみせろ!!』
イゾルデが槍の演武と共に弾幕をはじき返しつつ、そのように覇気を纏った答えを投げ返してくるので。
「いいさ。くれてやる。コレが俺なりの戦う者としての矜持だからな……!」
奴に負けないくらいの気迫で言い返した。
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