385話:触手機械人間イゾルデとの戦い 2
「装甲車を撃破できるはずの重火器であんなのが倒せると思っていた自分がバカに思えるな……いや……相手の方が人外レベルの敵だから言えるだけか……」
事態は刻々と展開しており、今は武装顕現の力で出せる最大限の銃火器である貫徹榴弾型ロケットランチャーを使い、目の前の触手機械人間イゾルデとの戦いを演じている。
『ふぅんむっ! 無駄だと何度言わせれば理解出来るのか。我慢比べも飽き飽きだぞ』
「何とでも言っていろ。俺はお前を倒すまでこの攻撃を止めたりなんてしない!」
お返しの言葉の意味を込めると共に武装顕現で武器換装をおこない、白い亜空間から手で取り出した武器を構えて仕掛ける。
『何と下品なっ!! 男の戦いに水を差すような真似を今すぐに止めるんだ!!』
肩に担いで構える単発四連射が可能な多弾倉ロケットランチャーによる弾頭の嵐がイゾルデに時間差で命中していく。
「この手にかぎる。一発で駄目なら何発でもお見舞いしてやるぜ?」
――この四連ロケットランチャーでならば……本体を守る触手でも耐えきれない重い一撃になっているはずだ。
粉塵の嵐が徐々に幕を引くと。
『……成る程。我々の先進技術にも限界があるようだな』
「よし……っ!」
勝機が見えた。イゾルデの触手はそのダメージ許容量を越えたことで破損した。
「イゾルデ。お前がさっき話したオーパーツていうのは何だ?」
仕様の限界を目の当たりにし、壊れた触手を沈黙して眺めるイゾルデに対して、俺は奴が先に話していたフレーズに疑問を抱いて問いかける。
『……いいだろう。教えてやる』
「………」
破壊された触手を武装開放すると、身軽な立ち姿でイゾルデは説明を始める。
『この世界において人類は自然競走の中では弱者の立場に立たされている生き物だ。安全な塀より先にある外の世界では日々。目まぐるしく魑魅魍魎のモンスターが自然界の頂を目指して争い。時には共存を為し得て大地に根付いている』
話が長くなるようで、イゾルデはP90を地面に下ろすと共に胡座を掻いて地面に腰を下ろす。
俺もそれに合わせて武器を亜空間に放り投げて武装開放する。
『その中での人間という存在は何故に今日まで生き続けることが出来たと思う』
「それは……」
イゾルデが見てきた『世界』と自分の見てきた世界を照らし合わせて答えを模索する。
「……生きるために知恵を用いてモンスター達と共存。または立ち向かってきた……」
『それもひとつの答えだ』
まだ何か別の答えがあるようだ。
イゾルデは力の込めた拳を前に突き出して答える。
『人間が持つべきして神から与えられたスキルがある。それを我々の組織――ハウンドウルフは先進技術と呼んでいる。文字の通りに。人間が己の限界を引き出したいという欲望が力の源となり。何世紀も先にあるはずの科学技術をいともたやすく現代に落とし込む事ができるスキルだ』
話が小難しかったので要約するように言葉を返すと。
「……つまりその先進技術で……お前は機械仕掛けの触手を操る人間になれたと言いたいんだな?」
『ザッツライト!』
「いつからこの街はサイボーグが闊歩するようになったんだ……」
という軽口を挟みつつ。イゾルデの新たな姿に警戒感を持つようになる。
『お前の冥土の土産はこれくらいでいいだろう。先の触手形態とは違って。俺はこう見えて肉弾戦が得意な方だ。機械の力で繰り出す力技に。生身の体のお前が何処まで耐えられるのかが見ものだな』
その言葉の後にイゾルデは自分の目には見えなかった腰元の空間から1本の近代的な質感を持つ槍を取り出して両手に持ち出した。
「光学迷彩か?」
『ご明察。これも先進技術がもたらした恩恵のひとつだ』
「なら俺も自分なりの力で対応させてもらう」
――槍を操る相手に対して。自分の銃で何処まで戦うことができるだろうか。
やるしかない。
小さな制圧力では難しいと判断した自分は武装顕現の力で新しい武器を呼び出した。
「無限に亜空間から弾丸が供給される軽機関銃でお前を蜂の巣にしてやるよ」
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