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372話:引き籠もり聖竜は驚嘆する。6

 それは異世界に来て久しく自分の事で話をする機会でもあった。


「俺ってさ。この世界の人間じゃないんだ。そういえばヴラドにこの話をしたことはあったかな?」

『うぅむ、初耳かもしれんの。我が住処だった居城からこの街に訪れてまでの間に。お主がいま話そうとしている事に関しては耳に入れた記憶がない』


 ヴラドが考えて思い出す仕草をとるの見て話を続ける。


「あぁ、なら言っておくべきか」

『すると、お主は不思議な存在の力によって。元の世界から世界の狭間に墜とされると共にこの世界にやってきたと』

「あぁ、俺はあの時には既に事故で死んでいたはずの人間だったんだ」


 語りたい事は山ほどあるが、聞いた事の無い話を伝えるのには気を遣う事しかできなくて……


「死んだ瞬間にかな。不思議な空間に投げ出されてさ。まるで深海に沈んでゆく船の気分だったんだよ」

『おそらくそれは神の産みだした虚無空間のことじゃろ。神は我ら聖竜にはその事を告げなかった事を察するに。よほど秘密にしておきたかった何かがあった』

「何にもない世界だったのは間違いないな。実際にその空間で俺と神は言葉を交わす事になって。それで神は言ってたんだ」


――さあ、願うのです。貴方の思い描く異世界を……!


『思い描く異世界か。我にもその言葉の真意は分からぬ。しかし、その言葉が何であれ。お主の思い描いた異世界というモノなのかは分からぬというか意味分からん。第一に、神は創造神であられるんだぞ。その概念を持つ神がお主に思い描く異世界を作れと言うのだから。殊更に頭が回らん事になっておるのじゃ……』

「…………」


 早口で自己完結して話してくるので戸惑ったが。ヴラド自身は少しでも神の言いたいことを理解しようと努力を重ねている。


――思い描く異世界ってなんだろう……。


 自分が好きに出来る夢のような世界を作る?

 チートスキルで無双する異世界にしたい?

 異世界に転生したら彼女ができて結婚しちゃった?


――あーっ、モンスターを仲間にして彼女と結婚して子供ができたから。今の自分が生きているわけなんだよな。じゃあ、創造する異世界って何を指している???? 


『お主はテイマーの力を持つ存在じゃ。この世界でそのような力を持って生きてきた人間など勇者しかおらぬ』

「アルシェが言っていた先代の勇者の人達がそうだったいう話か」

『うむ。アルシェはその勇者に仕えた最初の聖竜であり。魔王を打ち倒したメンバーのひとりじゃ』

「聞き覚えはある話だな。でも、王家はその話を広めなかった」

『自己の野心で真実を包み隠せる。人間の欲深さは憐れにも思える』

「何故に本当の事実を伝えなかったんだろうか」

『気に入らなかったが、最初のきっかけじゃったんだろう。アルシェも我には全てを話しておらぬ。よほどの隠しておきたい事実があったのじゃろ』


――差別なんて……許されてもいいものなのか……?


 脳裏によぎる言葉の疑問が間違いであって欲しかった。

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